2008年10月22日(水) |
パチンコ店 に ATM を置くという発想 |
「 貧乏には、魅力があるに違いない。
でなければ、こんなに多くの貧乏人がいるわけがない 」
ドン・ヘロルド ( アメリカの作家 )
Poverty must have many satisfactions, else there would not be so many poor people.
Don Herold
世界中、どこでも 「 金融屋 」 は、一番卑しい職業とされてきた。
ユダヤ人に銀行家が多いのも、キリスト教徒に金融が禁止された所為だ。
一昔前の日本人は、借金を “ 恥 ” と捉える意識が強く、できるだけ借金をしなくて済むように、身の丈に合った生活を心がけていた。
だが、借金を 「 ローン 」 とか 「 キャッシング 」 と言い換えたり、サラ金を 「 消費者金融 」 などと言い換え、最近は “ 恥 ” の感覚が薄れている。
また、借金をするという “ 後ろめたさ ” を取り除くために、人が応対せず、機械がお金を貸す 「 無人契約機 」 も設置されるようになった。
どこの駅前にも、サラ金の看板が目立つ場所にあって、テレビを点けると、一日中 「 サラ金のCM 」 が、ごく自然に流されている。
日本を 「 美しい国へ 」 導こうとした総理もいたが、借金に対する羞恥心の欠如した、これほど “ 下品な国 ” は、世界に類を見ないだろう。
最近の不況について、経済評論家、金融関係者の大半は、アメリカによる 「 サブプライムローン 」 の焦げ付きを、最大の理由に挙げている。
所得の少ない人や、担保を持たず信用度の低い人に対して、安易にお金を貸すことの弊害を、この事例から、世界中が学んだといって過言ではない。
様々な事情があって、一般の銀行で借りられない人が利用するサラ金は、日本版の 「 サブプライムローン 」 と同じで、水面下に多重債務者がいる。
この10年間で、国内の自己破産者が 「 4倍 」 まで膨れ上がった背景と、サラ金の普及は、密接な因果関係があるとみて間違いないだろう。
近頃は、サラ金のCMで 「 本当にお金が必要ですか 」 などと戯言を並べているが、自己破産の拡大に加担していると、彼らは認識しているはずだ。
サラ金業者の資金源 ( 金主 ) が大手銀行であることは、以前から周知の事実だったが、少なくとも一昔前は、その 「 関係 」 を隠す風潮があった。
しかし近年は、公然と大手銀行がサラ金業者を傘下に置き、銀行自体も、高金利で儲かることから、個人融資事業を積極的に拡大している。
彼らの狙う 「 最大の ターゲット 」 は、生かさず殺さず、ずっと高い金利を払い続けてくれる “ ある程度、余裕のある貧乏人 ” という層である。
そして、この層に人気があり、無駄な浪費を根こそぎ吸収しているのが、「 パチンコ 」 という博打産業であることを、誰もが気付いている。
昼間から仕事もせず、パチンコに興じる堕落した層に、せっせと金融屋が資金を融通し、高利を貪る構造が、今の日本を 「 ダメ 」 にしているのだ。
金融決済サービスの運営会社 「 トラストネットワークス 」 は、パチンコ店内への銀行 ATM ( 現金自動預払機 ) 設置、試験導入をスタートさせた。
利用者の反応は概ね好意的で、「 店内ですぐに引き出せるので便利だ 」、「 利用上限もあり、過剰に引き出すこともない 」 との声が挙がっている。
その一方、「 自分の財布だけで遊ぶレジャーレベルから、危険性が高まるギャンブル性を帯びてくる 」 という、依存症に詳しい専門家の意見もある。
パチンコ業界の一部には、「 多重債務防止への機運が高まる中で、ATM 設置は業界のイメージを損なう 」 とみる、批判的な意見もあるらしい。
銀行業界などを監督する金融庁は、「 ATM の設置場所を定めた基準はないので、行政が介入するのは難しい 」 と、消極的に容認している。
パチンコ店、利用者、金融業者、監督省庁、有識者、視点や利害によって、各々の異なる意見が語られるけれど、はたして、どうあるべきか。
合法か、非合法かという尺度だけで、こういった問題を判断してよいのか、それで 「 社会倫理 」 は守られるのか、なんとも不安である。
世の中の秩序を守る方策として、欧米のキリスト教社会が 「 罪の文化 」 を採用してきたのに対し、古来、日本では 「 恥の文化 」 が主流だった。
物事を、有罪か無罪かといった善悪の判断ではなく、礼儀やら、道徳的な嫌悪感からみて、恥じることの有無に、その価値を委ねてきたのである。
サラ金や、パチンコが、諸悪の根源とは言わないけれど、誇りや羞恥心を取り戻し、マトモな事業に回帰しなければ、この国に未来はなさそうだ。
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