Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2008年10月16日(木) 北巣本保育園 で演じられた 「 大人の学芸会 」



「 何が見えるかは、その人間がどこに位置しているかによる 」

             ジェームズ・R・シュレジンガー ( アメリカの政治家 )

What one sees dedepends upon where one sits.

                            James R. Schlesinger



同じ物でも、角度を変えて眺めれば、違った形に見えることがある。

たとえ見え方は違っても、それぞれが、真実であることに間違いはない。


大阪府は16日、第2京阪道路の用地として、門真市の北巣本保育園の畑771.17平方メートルに行政代執行をかけ、強制収用した。

第2京阪道路は、京都市伏見区と門真市を結ぶ28.3キロの自動車専用道路で、国道1号線の渋滞を緩和させる役割が期待されている。

大阪在住で、運転歴の長い方はご存知だろうが、国道1号線の渋滞緩和は積年の懸案事項で、第2京阪道路の敷設を、心待ちにする人も多い。

ただ、公共事業の大半がそうであるように、事業用地の近くに住む人々は、工事に伴う騒音や、大型車両、重機などの行き来に、相応の迷惑を被る。

公の利益と、個人の利害が対立することは珍しくなく、今回、執行の対象となった北巣本保育園の理事からも、執行停止の申し立てが出されていた。


大阪府の 橋下 徹 知事 によると、「 2週間遅らせることで、通行料で6億〜7億円の損が出る 」 らしく、司法判断を待たずに、執行した模様だ。

地元住民とは、「 4月から任意交渉を誠実に続け、慎重な対応をしてきた 」 とのことで、工期からみて、これ以上は待てない理由も説明している。

今回、行政代執行をかけた保育園の畑には、月末の 「 芋掘り交流会 」 に向け、園児たちが育ててきた サツマイモ や 落花生 が植わっていた。

畑には早朝から、保育園理事ら約30人の地域住民や、園児の保護者らが集まり、「 収穫までのあと2週間をなぜ待てないのですか 」 と抗議した。

うつ伏せで畑に横たわり、「 子どもの思いがどれだけ詰まっていると思っているのですか 」 と叫ぶ保育士を、府の職員が排除する場面もあった。


保育園児が一生懸命に育てた畑へ、公益の御旗を掲げた官権が侵入し、農作物を乱暴に引き抜いては、次々と事務的に整地していく。

傍らには、泣きじゃくる園児たち、その保護者、保育士、睨みつける近隣の住民、噂を聞きつけた報道陣、まさに 「 悲劇 」 の役者が勢ぞろいである。

どちらの肩を持つ気もないが、あまりにも 「 出来すぎ 」 という印象が強く、演出過剰の芝居を観た後のような、“ しらけた気分 ” に襲われる。

大阪府側に対しては 「 2週間ぐらい待ってやれば 」 と思うし、関係者には 「 子供を盾に使うなよ 」 と思うし、どちらも “ 大人気ない ” 気がする。

どちらの言い分も、正当で、けして間違ってはいないが、もう少し、お互いに 「 穏便な解決方法 」 を協力して求める姿勢が、欠けているのではないか。


大阪では、橋下 知事 と “ クソ教育委員会 ” が対立する 「 学力テスト の公開、非公開問題 」 も白熱化しているが、この先、どうなるのだろう。

誰もが 「 子供のため 」 と口にするが、実際は、互いの “ 大人の事情 ” を通すために、子供を ダシ に使っている場面も多いのではないか。

道路の敷設が予定されている土地に、わざわざ サツマイモ を植えさせて、悲痛な体験をさせるのも、教育といえば、教育なのかもしれない。

大衆の利害など、官権の前では通用しないという体験をさせるのも、将来、子供が生きていくうえで、教育といえば、教育になるのかもしれない。

だが、個人的には、「 立派な大人には、争い事があっても、知恵を出し合い解決できる “ 素敵な能力 ” がある 」 と教えるほうが、望ましいように思う。






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