Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2008年10月12日(日) 三浦 和義 : 自殺 「 三つの仮説 」



「 多くの人は、運のせいで罰を免れたが、恐怖を免れた者はいない 」

       ルキウス・アンナエウス・セネカ ( 古代ローマの政治家、詩人 )

Fortune frees many men from punishment, but no man from fear.

                          Lucius Annaeus Seneca



頭が良く、正常な精神の持ち主は、概ね、「 犯罪 」 に手を染めない。

なぜなら、それが “ 割に合わない行為 ” だと知っているからだ。


1981年8月、日本人女性が何者かに頭部を殴られて負傷し、3ヵ月後には頭部を銃撃され重体となり、翌年に死亡するという事件が ロス で起きた。

警視庁は、被害者の夫であった 三浦 和義 を逮捕し、殴打事件では平成10年に実刑が確定したが、銃撃事件では、最高裁で無罪が確定した。

ロス 市警は、事件から27年後の今年2月、三浦 を旅行先の サイパン で、日本には無い 「 共謀罪 」 の容疑により逮捕、訴追手続きを進めていた。

ところが、サイパン から ロス へ移送した直後 ( 今月10日午後9時45分 )、三浦 は、ロス 市警本部の拘置施設で首をつって自殺した。

自殺する数時間前には、食事の要望 ( アレルギーに関して ) を伝えたり、弁護士への電話許可を求めており、まったく、予兆は見当たらなかった。


移送中の 三浦 が被っていた帽子に、スラング で 「 あばよ 」 という意味の メッセージ が書かれていたとも伝えられたが、意図的かどうかは疑わしい。

彼が無罪を主張していたことや、過去の言動、直前の様子などからみて、行く末を悲観して自殺に至ったというのは、どうも腑に落ちないのである。

死んでしまった以上、真相は闇の中ということになるのだろうが、自殺した原因について、三点ほど 「 仮説 」 を推理してみた。

一つ目は、ロス に着いてから、「 決定的な証拠を突きつけられた 」 ため、これ以上は係争できないと観念したことで、自殺に踏み切ったという説。

ただ、それならば、ロス 市警が早々と発表するはずで、秘匿しておく理由は無いのだから、時間が経てば経つほど、この説は信憑性を失う。


二つ目に、本気で死ぬつもりはなく、「 狂言 」 として自殺を図ったのだが、誤って死んでしまったという説で、これは、可能性が高いと思われる。

自殺の方法は各種あるけれど、特急列車の前に飛び込むとか、高い建物から飛び降りるのに比べて、首吊り自殺というのは、未遂に終わりやすい。

あらかじめ、首を吊る紐を切れ易くしたり、なんらかの細工を施しておけば、もがいている間に誰かが気付き、助けに来ることが期待できる。

本当に死ぬ気はないが、周囲の関心をひくために 「 死ぬぞ 」 と脅すには最適の方法で、実際、自殺未遂者の多くが 「 偽装首吊り 」 をしている。

陪審員の同情を買うためか、目的は不明だが、派手な パフォーマンス を好む 三浦 の性格からみても、この 「 狂言 」 だったという可能性は高い。


三つ目は、少し オカルト な想像ではあるが、自分が殺人を犯した場所へと行ったことで、被害者の 「 霊 」 や、「 悪夢 」 にうなされたという説だ。

連続婦女暴行殺人鬼として知られる 大久保 清 など、過去の凶悪殺人犯の多くが、「 被害者が夢に出てきて恐ろしい 」 という理由で自首している。

いまから思えば、サイパン に居た 三浦 が、ロス への移送を強く拒否していたのも、あるいは、そのような恐怖心が根底にあったのかもしれない。

冒頭に挙げた名言が示した通り、司法の追及からは運よく逃げられても、自分自身の恐怖心から逃れることは不可能で、自殺の動機にもなり得る。

私自身は、非科学的な 「 霊 」 の存在を信じないが、犯罪者の心理として、そのような妄想に悩まされることは、想像に難くない。


被害者が気の毒なのは当然だが、殺人を犯すと、司法の追及から逃れるだけでなく、その後の一生を、相応の 「 恐怖 」 と共に歩まねばならない。

捕まって、裁判で極刑を言い渡されなくても、三浦 のように、自らの生涯を自らの手で閉じたり、長生きしたところで、穏やかな幸福は訪れない。

逆説的に言うと、自殺を図るような 「 人命を粗末に扱う輩 」 だから、他者の生命を安易に奪ってしまったのかもしれないが、なんとも愚かである。

自分の妻を殺害し、三浦 が詐取した保険金は 「 1億ちょい 」 だが、そんなもの、事件後の27年間をマトモに働けば、十分に稼げたはずの金額だ。

結局、三浦 は妻だけでなく、その 「 夫 」 も殺害したわけだが、犯罪は割に合わないという教訓を、最後に示してこの世を去った。






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