「 子供は大人のいうことを聞くのが得意じゃない。
だけど、真似をするのは、抜群にうまい 」
ジェームズ・ボールドウィン ( アメリカの作家 )
Children have never been very good at listening to their elders, but they have never failed to imitate them.
James Baldwin
歌を唄うのも、ギターを弾くのも、最初は誰かの模倣から始まる。
人は普通、オリジナルを創る前に、コピーから学んでいくものだ。
何も特別なことは教えなくても、真面目な両親に育てられるだけで、それは十分、立派な教育になる。
学生時代の恩師、会社に入ってからは先輩や上司、あるいは経営者など、自分に影響を与え、人格形成に加わったすべての人が同様である。
もちろん、友達もそうだし、恋人や、配偶者、いつも側に居る 「 お手本 」 が良いか悪いかで、模倣のレベルも格段に違ってくる。
今の自分は、偶然そこに居るわけではなく、長い年月の中で誰かに影響を受けて、模倣から始まり形を変えてきた 「 必然の結果 」 なのだ。
個人の努力もさることながら、とりわけ子供の頃や若いうちは、手本となる身近な人物の優劣によって、自分が 「 何者 」 なのか決まりやすい。
前回も書いたのだが、三菱東京UFJ銀行の不祥事は、事情を知るほど、組織としての問題が大きく、一個人の犯罪とは認めにくいものだ。
同行では、20代の若手社員に採用業務を手伝わせていたが、彼らには、入行志望者の名前、連絡先、出身大学、志望動機の閲覧が可能だった。
いわゆる 「 個人情報 」 を取り扱える立場に置かれていたわけだが、その使用に際し、慎重な姿勢が必要であることを教えていたとは考え難い。
それに、被疑者が 「 大学のOBであると嘘をついた 」 という事実も明らかになっているところから、志望者との接触方法も正しく指導していない。
銀行側は 「 正しく教えたが、被疑者が守らなかった 」 と弁明するかもしれないが、実行されていない以上、「 正しく教えた 」 とは言えない。
本日、住友信託銀行が13年ぶりに法人税を納付すると発表されたけれど、他の大手行は未曾有の利益を挙げながら、追随する様子がない。
組織そのものが 「 苦境に立てば国民に支援してもらって、後で儲かっても税金なんか払わなくてよい 」 という方針を、明確に打ち出しているのだ。
世間の風圧など気にせず、常識的な倫理観より 「 他人に迷惑を掛けても、自分さえ得をすればよい 」 という姿勢が、全行員の 「 お手本 」 なのだ。
こんな 「 お手本 」 をすぐ側に眺めながら、若干24歳の被疑者は、女性の個人情報と、採用担当者という肩書きを手渡されたのである。
己の 「 モラルの低さ 」 に気付きもせず、部下は正しい行いをするだろうと期待していたのならば、ますます 「 救いようのない状態 」 のようだ。
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