| 2007年03月14日(水) |
863万人分の個人情報 |
「 “ 秘密だ ” っていうことを、皆に言い忘れないようにね 」
英語のジョーク
Don't forget to tell everybody it's a secret.
English joke
怪しげな笑みを浮かべながら、「 ここだけの話だけどさ 」 と近づいてくる。
こんな友人には、ナイショの話を打ち明けないほうが無難だろう。
秘密にしたい事柄が知れ渡ってしまうか、地下でひっそりと守られるかは、周囲に居る友人の口の堅さによるとはかぎらない。
むしろ、その情報の価値によるところが大きく、つまらない話、誰にとっても関心のない話は、耳を貸す人も少ないので秘密が守られやすい。
逆に、面白い話を仕入れたときは、誰かに話したくなるもので、耳を傾ける人も多いし、今度はまた次の誰かに話したりして、たちまち広まっていく。
よくも悪くも、ご自分の噂話が広まるということは、少なからず貴方に対して周囲が関心を持っている証拠で、その情報にはいくらかの価値がある。
世の中には、「 他人が自分をどのように評価しているのか不安 」 と悩まれている方も多いが、誰からも関心を持たれないよりは幸せかもしれない。
ことさら秘密という程の情報ではなくても、どんな場所に、どんな人が住み、どんな生活をしているのか、それを知りたい人は大勢いる。
それらは主に、なんらかのビジネスに役立てたいという理由によるもので、たとえば企業が告知をする際、効率的に対象者を絞る手段に活用される。
具体例を挙げると、子供のいない家にランドセルや家庭教師のカタログを配っても無意味なので、どの家に子供がいるのか知っていれば得をする。
情報を基にして、DM、カタログの発行部数を抑えられるし、無駄な電話を掛けなくて済むし、より少ない経費と労力で、効果的に告知できるのだ。
あるいは、以前に利用した顧客の個人情報を保管し、新製品が出たときに案内したりすると、見ず知らずの新規客よりも成約に結びつきやすい。
いわゆる “ ブラックマーケット ” の中で、様々な個人情報を非合法に収集して販売する 「 名簿屋 」 という闇の商売がある。
一般企業が、長年に亘る顧客との信頼関係の中で得た個人情報を、彼らは 「 よからぬ手段 」 によって手に入れ、転売して利益を稼いでいる。
当然、マトモな企業が彼らに情報を売る可能性は低く、大抵は関係者から盗む、というか正確にいうと 「 盗ませる 」 のが常套手段のようだ。
社員の誰かを誘惑したり、賄賂を渡したり、あるいは弱みを握って脅したりして、機密文書である顧客の個人情報を、持ち出させるのである。
最近では、はじめから情報を入手する目的でスタッフを派遣社員として潜入させ、巧妙に大量の企業情報、個人情報を得ている名簿屋もあるという。
印刷大手の 「 大日本印刷 」 が、前代未聞である 863万人 という大量の個人情報を流出させる不祥事を起こし、巷は大騒ぎになっている。
同社は、NTT,トヨタ、イオンなどの大企業、ジャックス、レイクなどの信販、金融企業のDMを印刷しており、膨大な個人情報を保管していた。
犯人は業務委託先の男性で既に逮捕されているが、重要な情報を簡単に持ち出せたことなどに対し、管理体制への批判と責任追及は免れない。
どなたも経験があると思うが、見知らぬ企業から名指しでDMが届いたり、なかには年齢、職業なども知られており、薄気味悪いものもある。
それらには、こういった個人情報の流出が大いに関係しているわけだが、それ以上に悪用される怖れも十分に考えられるので罪は重い。
個人情報が流出した事件が起きるたびに、思い出す話がある。
幼い娘を病気でなくした夫婦の家に、毎年、時期がくると老舗人形店から 「 雛人形 」 のカタログが届き、開けてみると手紙が入っている。
そこには 「 ○○ちゃんも、○歳になられましたね 」 と、節句を祝う言葉が丁寧に綴られ、雛人形の購入を勧める文章が続いている。
死亡した情報までは流れず、非常識な結果になっているのだが、話を聞いた私が激昂したところ、ご夫婦は逆に 「 毎年、楽しみにしている 」 という。
娘が生きていたことを覚えてくれているようで、毎年、年齢まで加算されてくることも嬉しいという理由だそうだが、なんとも切ない話である。
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