Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2007年03月13日(火) 30年振りのバイク



「 私は年をとることが楽しみです。

  ルックスがより重視されなくなって、自分が何者であるかが重要な

  ことになりますから 」

                          スーザン・サランドン ( 女優 )

I look forward to being older, when what you look like becomes less and less an issue and what you are is the point.

                               Susan Sarandon



オスカー女優の名言だけあって、なかなか意味深なお言葉である。

年をとってこそ 「 中身で勝負 」 といったところだろうか。


人間には 「 ないものねだり 」 な部分や、「 仲間はずれを怖れる 」 部分があって、「 自分だけが損をしている 」 ことに不安を感じやすいものだ。

年齢もその一端であり、周囲の年長者たちから子供扱いされると悔しくて 「 早く大人になりたい 」 と願い、一人前に認められたい気持ちが強くなる。

その後、実際に年をとると、今度は若い連中との “ 距離 ” を感じるようになり、なんとも寂しい疎外感に切なくなってしまう。

他人を意識せずとも、自分自身の肉体的な衰えからは逃れられず、以前は難なくこなせた動作が上手くできなかったり、時間が掛かって焦り始める。

颯爽と車から飛び降りたら捻挫したり、通勤時に一段飛ばしで駅の階段を駆け上がったら心筋梗塞に陥ったりして、年をとるとそういう悲しさがある。


30歳ぐらいまでは、時々 「 タイムマシンがあったら 」 という妄想や憧れに浸るときがあって、いろいろと後悔することが多かったように思う。

まずまずの人生であっても、けして完璧ではないのだから、あの日あの時、あの場所で 「 ああしてたら、こうしてれば 」 と悔やんでも不思議はない。

この 「 たら、れば 」 が多い人を、以前は 「 後悔の多い人 」 と思っていたが、最近、それは違うような気がしている。

そういう人は、どこか 「 気持ちの若い人 」 であって、年をとった自分自身と諦めて付き合うことに抵抗を感じておられるのかもしれない。

なんでもクヨクヨと後悔するのは不健康だが、悟りきって “ 老い ” をすべて受けいれるより、少しは後悔や、やり直したい気持ちがあっていいだろう。


上海から少し離れた郊外の工場で、手入れが行き届いた古い型の日本製中型バイクを発見し、珍しいのでしばらく眺めていた。

ちょうど休憩時間だった持ち主の若い男性が現れ、私が連れて来た通訳と談笑しながら 「 乗っていいよ 」 と身振り手振りで勧めてくれた。

バイクに乗るのは30年振りなので、無様に転んで怪我したり、車体を壊したりするのが心配だし、なにより 「 年寄りの冷水 」 と笑われそうである。

それでも、実際の年齢よりも若く見られたのか、日本人が珍しかったのか、相手はしきりに勧めてくれるので、おそるおそる跨ってみることにした。

セルを回すと懐かしい振動と排気音が轟き、だだっ広くて何もない敷地の中なら、なんとか走らせられそうな気がしたので、少し借りてみたのである。


先週の上海は雨模様で、路面は少し濡れていたけれど、当日は雨も止んでいたので少しづつスロットルを回してみた。

アイドリングを高く設定されていたのでエンストはしなかったが、最初の一周はなんともぎこちなく、爽快感には程遠いヨタヨタ走りである。

二周目からは少し勘が戻り、いつの間にか集まったギャラリーや、持ち主、工場長らの歓声を浴び、なんだかテンションが上がってきた。

こうなると、ここは “ 日本代表 ” として (?) なにかパフォーマンスを見せなければという使命感に陥るもので、年甲斐もなく蛇行したりしてみせた。

本当は、最後に前輪を浮かせてウイリーしたかったのだが、若い頃でさえ下手くそだったのに成功する公算は少なかったから、自重しておいた。


言葉は通じないが、バイクを返すと笑顔で握手を求められ、親子ほど離れた自分の年齢を告げると、さらに嬉しそうな笑顔で強く握手してくれた。

下手くそでも、年寄りがバイクに乗ったり、お尻が下がっても REPLAY のジーンズを履いていたりすると、年寄りだからこそ “ ウケる ” ときがある。

それは、無理に 「 物わかりのよいオジサン 」 を演じるのではなく、同じように楽しもうとしている者同士であることが前提条件なのだろう。

大人になるのもよいけれど、「 おだてられて調子に乗るバカさ加減 」 を少しは残しておいたほうが、老化予防には役立つかもしれない。

冒頭の名言に反論するわけではないが、「 自分が何者か 」 なんて決め付けず、背伸びしないで生きていくのも、それはそれで悪くないと思う。






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