「 若者よ、私の成功の秘訣は、若くして自分は神ではないと悟ったことだ 」
オリバー・ウェンデル・ホームズ ( アメリカの医者、作家 )
Young man, the secret of my success is that at an early age I discovered I was not God.
OLIVER WENDELL HOLMES
何事にも 「 自信たっぷり 」 で、悠然と構えている人がいる。
かと思えば、何事にも 「 弱気 」 で、常に オドオド している人もいる。
一般論として、「 自信を持つこと 」 は良しとされるが、「 過信 」 にまで及ぶと周囲に疎んじられ、あまり好ましい印象を持たれ難い。
では、「 自信 」 と 「 過信 」 では、どこが違うのか。
一つには、「 相応の謙虚さ 」 の有無という点にあるだろう。
物事を人並み以上にやり遂げる熱意やら、その根拠となる資質を、過去の学習や鍛錬、実績などから、自分と他人に示せれば、それは自信となる。
ただし、そこに 「 驕り高ぶり 」 が感じられたり、「 未知の不安 」 というものに対する畏れが無ければ、「 謙虚さが足りない 」 と周囲は判断しやすい。
ライブドアとフジテレビの騒動は、どうやら長期戦になりそうな気配で、現在のところ決着はついていない。
世論も二分しており、堀江氏の挑戦を 「 快挙 」 とみる人もいれば、単なる 「 思い上がり 」 と評価する人もいるようだ。
いわゆる 「 小 」 が 「 大 」 に挑むためには奇策も必要なのだが、崇高な目的を掲げているわりには、少し 「 やり方 」 がどうかと思う部分もある。
企業買収には 「 闇 」 の側面もあり、けして 「 奇麗事 」 にこだわる必要もないが、「 乗っ取り屋 」 と同じ手口で業界の革命など起こせるのだろうか。
彼の弁によると、「 業界に新風を巻き起こしたい 」 とのことだが、そのための手段が 「 使い古された老獪な手口 」 というのでは、どうも共感し難い。
関係者や従業員、あるいは多くの視聴者にとって重要なことは、この騒動で 「 どちらが勝つか 」 という点での興味ではない。
もし堀江氏が勝利した場合に、「 今後、どのように変わるか 」 ということのほうが大事で、それが公益に寄与するものかどうかこそ、肝心なところだ。
その理解を広く浸透させ、支持を集めるためには、主旨を説得する必要があるし、リーダーの人柄や個性についても、相応の評価が求められる。
水面下で秘密裏に進行していたならともかく、これだけ世間の関心を集めてしまったのだから、その部分を 「 おざなり 」 にすることはできない。
そういう観点でみると、どうも堀江氏には 「 誠実さを他人に示そう 」 という意識が希薄な印象もあって、巨大メディアの首領としての信頼感に欠ける。
もちろん、民間企業のトップの座は、国会議員のように選挙で決めるわけではなく、資力、経済力で勝ちとるものである。
だから、国民の 「 人気取り 」 に奔走する必要も無い。
彼自身が語るところによる 「 お金で買えないモノはない 」 という哲学で突き進んでも、すべてが間違いというわけではない。
ただし、「 高級な犬をペットに飼ったところで、尻尾をふるとはかぎらない 」 のも事実で、人心を掌握する技術というのは、別のところにもある。
優秀な経営者になりたければ、同時に 「 尊敬に値する人物 」 を目指すことも大事で、単にマネー・ファンドに長けているだけでは限界がある。
大多数の尊敬を集め、一目置かれる存在になるためには、当たり前のことが当たり前にできる 「 優秀な常識人 」 であることが、必須条件となる。
特殊な技能や裁量は、むしろ オマケ 的な 「 付加価値 」 に過ぎない。
優秀な常識人として認められる要素の中には 「 謙虚さ 」 も含まれており、消極的に構える必要はないが、「 不可知の畏れ 」 に備える姿勢も要る。
堀江氏の弱点は、そのあたりにあるのではなかろうか。
それに、「 お金で買えないものはない 」 というが、たとえば 「 お金に興味のない人の関心 」 などは買えないわけで、ちょっと矛盾した話である。
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