2005年02月13日(日) |
「 負 」 の イメージ |
「 ビジネスにおける最悪のミスは、事業がうまくいかない時ではなく、
うまくいっている時に起こる 」
トーマス・J・ワトソン・シニア ( アメリカの実業家 )
The worst mistakes in business are made in good times, not in bad times.
THOMAS.J.WATSON.SR
彼の名はあまり有名でないが、かの 「 IBM の創立者 」 である。
さすがに、「 含蓄のあるお言葉 」 を遺しておられた。
ライブドアによる 「 フジTV 買収工作 」 は、どうやら失敗のようである。
最初に 「 その野望 」 を知ったときには、なかなか妙案を企てたものだなと感心もしたが、そう簡単に物事が運ぶものではない。
それに、株の世界では 「 とりたてて珍しい戦術でもない 」 わけで、それに対抗する手立ても、大抵は用意されている。
私自身も、「 M&A を得意とする企業 」 に居た経験を持つが、このような小手先の仕手戦を 「 M&A 」 と思っているなら、少し程度が低いだろう。
この件に関しては、手法の是非よりも 「 堀江社長が メディア を手に入れたい目的と、それにかける情熱の大きさ 」 の方に、むしろ私は興味がある。
過去の報道を通じて、堀江氏の人間像を見聞きした中では、とても共感の持てる部分や、経営者として評価できる点と、そうではないところもある。
最大の 「 評価ポイント 」 は、若くして起業し、成功に導いた点である。
また、昨年の 「 プロ野球機構への新規参入計画 」 に象徴される、斬新なアイディアと行動力、決断力については、賞賛に値するだろう。
ただし、結果として彼は楽天との競争に 「 負けた 」 ことも事実であり、仮にそれが 「 宣伝効果として成功 」 であっても、勝敗が覆るものではない。
彼ら自身、「 知名度が上がった敗者 」 であることを、忘れるべきではない。
どんな口実があろうと、勝負に 「 二連敗 」 することは避けたほうがいい。
それは、その企業に 「 負 」 のイメージを定着させる危険を孕み、積極的ではあるが、いささか 「 軽率 」 な印象を与える要素となる。
よほど確実な 「 勝てる根拠 」 が無いかぎり、大きな敗北を喫した直後に、大衆の見守る中で一騎打ちに挑むことは、どう考えてもリスクが大きい。
優秀な経営者というものは同時に、卓越した戦略家でなければならず、戦うタイミングや、その目的、あるいは 「 戦後処理 」 についても責任を負う。
ただ単に、「 敵の陣地を奪ったから勝ち 」 という次元ではなくて、その目的や必然性、公共の利益についても、大衆の賛同を得られる準備が必要だ。
挑戦する姿勢は尊重するけれども、経営は 「 継営 」 でもあり、堅実かつ、継続性をもって、事業を安定させる使命を帯びている。
その為には、けして 「 長いものに巻かれろ 」 とは言わないが、「 身の程 」 を知ることや、たえず 「 勝算 」 に気を配ることが不可欠となる。
特に、「 小 が 大 に勝つ戦略 」 というものは難しく、些細なミスやほころびから、致命的な 「 落とし穴 」 に陥る危険も潜んでいる。
巨大企業に挑戦状を叩きつける気迫は大いに結構だし、堀江氏にはその力量と、将来へのかぎりない可能性が、たしかに感じられる。
だからこそ、「 天狗 」 になってはいけないし、周到な準備と、緻密な計算、十分すぎるほどの 「 慎重さ 」 を、重んじてもらいたいと個人的に思う。
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