2005年02月06日(日) |
企業の 「 再生 」 と、個人の 「 救済 」 |
「 人間に必要なのは困ることだ。
絶体絶命に追い込まれたときに出る力が、本当の力です 」
本田 宗一郎 ( 実業家 )
What people need are problems. The power that emerges when faced with a problem, where you would lose everything, is your true power.
SOUICHIRO HONDA
漢字で 「 本田 」 と書くより、「 HONDA 」 の方が ピン とくる。
世界の 「 HONDA 」 を創業した人物らしい、質実剛健たる一言だ。
要するに、「 調子の良いときは、誰でもゴキゲンに活動できる 」 ものだが、「 調子の悪いときに、どれだけ頑張れるか 」 で、底力の差が出る。
一流と呼ばれる学校を出て、大手の企業でエリートコースに進みながらも、ちょっとした失敗や挫折で、ヘナヘナと崩れる人もいる。
あるいは、「 悪いことはすべて他人のせい 」 にし、自分の落ち度に気づかなかったり、物事を 「 他責 」 にばかりして、まったく進歩しない人もいる。
昔に比べ、社会はそういう人たちに対して寛容、あるいは過保護になっていて、憂えたり、「 本人の為にならぬ 」 と書いたなら、誰からか抗議される。
彼らには 「 平常時の能力 」 はあっても、「 底力 」 というものがなく、危機的状況での 「 救世主になる底力 」 も、「 そうなろうとする意志 」 もない。
2月末期で 「 ダイエー 」 は、約 4,100億円の債務超過になる。
金融機関から 4,050億円の債権放棄を受け、スポンサー企業と再生機構が 1,000億円の増資をするので、財務状況は来年2月期で回復する。
いまのところ、赤字が続いているのは再生計画の範疇なので仕方ないが、問題は、ここにきて 「 小売事業の不振 」 が予測を上回っていることだ。
ご承知のように、「 再生は可能 」 と判断されたから再生機構を活用しているわけで、それが 「 焼け石に水 」 ということでは、まるで意味がない。
いくら追加支援をしても、言葉は悪いが 「 盗人に追い銭 」 といった結果に終わる心配が、ここにきて急浮上しているような状況である。
ダイエーの関係者によると、店舗では、「 改革にやる気のある従業員 」 と、「 リストラを恐れてやる気をなくした従業員 」 の二極化が起きているという。
私が再生の指揮者なら、「 勇気なき者は去れ 」 という指令を下すに違いないが、それは 「 現代的でない 」 のかもしれない。
不安のある従業員には専任のカウンセラーによって 「 心のケア 」 を施し、にっこりと微笑みかけ、けして 「 頑張れ 」 と言ってはならない。
十分に休養を与え、誰も 「 嫌味 」 を言ったり、顔に出すこともしない。
それでも回復しない場合は、徹底的に悩みを聞いてやり、たとえ 「 アホか 」 と思うような意見でも、とりあえずは 「 なるほどね 」 と相槌をうつ。
実を言うと、いま勉強中の 「 カウンセラー 」 のテキストにも、そんな手法が随所に記載されていて、これは 「 学術的に正しい理論 」 だそうである。
その度に、テキストの頁を 「 引きちぎりそうになる 」 衝動に襲われる私には、「 カウンセラーとしての適正が無いのではないか 」 と不安を感じる。
ところが、適性検査の結果は 「 ◎ 」 で、実際、いま担当している 「 カウンセリー ( カウンセリングを受ける人 ) 」 の評判も良いのだという。
それで、先輩のカウンセラー ( 大ベテランの人 ) やら、各方面の専門家に意見を伺うと、皆、「 思いは似たようなもの 」 なのだという。
誰しも、「 それが正しい 」 とは思っていないが、相手の目線に合わすにはやむを得なかったり、そんな相手には 「 そうするしかない 」 ようである。
言われてみれば私も、自分のカウンセリーに対して 「 言葉を選んで 」 話しているし、非常識な相手にも 「 表情に出さない 」 ようにしている。
それが 「 プロ 」 というもので、このようなプライベートな日記で 「 辛らつ 」 な意見を述べても、仕事となれば 「 自分を抑える 」 習性なのだろう。
ただしそれは、「 抑えている 」 だけなので、自分の本音というのは別のところにあり、やっぱり 「 勇気なき者は去れ 」 に帰結するはずだ。
このように、カウンセラーも悩み多き職業で、将来的には 「 カウンセラーの悩みを解決するカウンセラー 」 という職種が繁盛するかもしれない。
まして、私のように 「 企業の悩みを解決するコンサルタント 」 と、「 個人の悩みを解決するカウンセラー 」 という二つの顔を持つと、複雑極まりない。
いづれにせよダイエーの場合は、あまり 「 悠長 」 な策は適切でない。
すべての人が救済されることは理想だけれど、何の 「 犠牲 」 も、「 痛み 」 もなく、どん底に落ちた企業を再生することは不可能に近い。
特に、「 良いときだけ 」 を体験してきた人たちの中には、現在の置かれている状況を 「 絶望的に悲観することしかできない人 」 も多いようだ。
厳しいようだが、「 悪貨は良貨を駆逐する ( 質の悪い人間がはびこって、優れた人間が姿を消す ) 」 という言葉もある。
最前線で、「 やる気のある人 」、「 やる気をなくした人 」 が混在する状況は、全体のモチベーションに悪影響を及ぼすとみて間違いない。
できるなら、ダイエーという企業も、働く従業員も、すべてを救済したい。
そのためには、「 皆が平等に不幸になる 」 ことが正しいとは思わない。
現状は、勇気をもって再生に取り組む人たちで固め、再生が叶った際には、彼らにそれなりの処遇を与えるなり、再出発の機会を与えて欲しい。
また、「 やる気を取り戻せない人たち 」 は、すでに 「 その場所で働くことに絶望している 」 のだから、方向転換を促したほうが望ましい。
人それぞれ、「 同じ場所でハッピーになる必要はない 」 のだし、絶望だけ抱えて働くほど虚しいことはないので、早急に措置を講じるべきかと思う。
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