Tonight 今夜の気分
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2005年01月25日(火) 日本経済が悪くなった原因 その三



「 勤勉は幸運の母である 」

           ベンジャミン・フランクリン ( 科学者、政治家、文筆家 )

Diligence is the mother of good luck.

                           BENJAMIN FRANKLIN



誰にとっても、働いて対価を稼ぐことだけが、人生のすべてではない。

だがそれは、重要な生活の手段であり、個人の貴重な体験でもある。


ときどき、「 ある日突然、大金を手にしたらどうする? 」 という冗談めいた質問を、楽しそうに投げかける人がいる。

ここでいう 「 大金 」 とは、だいたい 3億円 ぐらいを指すことが多い。

それは、宝くじの1等賞金の金額でもあり、我々世代には 「 3億円事件 」 を連想させる数値でもあって、いわゆる 「 大金 」 を想起させる金額だ。

何に使うかは人それぞれだろうが、大別すると二種類の人がいる。

その二種類とは、それを契機に 「 今の仕事を辞める 」 というグループと、「 続ける 」 というグループである。


その人の事情にもよるが、たいていの場合、手元に 3億円 の現金があるならば、死ぬまでの間、働かなくても人並みの生活を続けられるだろう。

だから 「 働かない 」 という人の論理は、たしかに間違っていない。

あるいは、「 所得を気にせず、本当にしたかった仕事に打ち込む 」 という人の意見も、当然のことながら尊重されるものである。

また、「 現在の仕事を辞める理由には結びつかない 」 と考え、貯蓄に余裕ができたぐらいの意識で、極端に生活習慣を変えない方法も考えられる。

他人に迷惑をかけないかぎり、どのような生き方を選ぼうが自由だ。


私を含む大部分の人にとって、好きなことをやって遊んでいる時間のほうが、責任を負いながら働いているよりも楽しいものである。

特に若いうちは、「 お金さえあれば、あくせく働かなくてもいいのに 」 なんて思ったり、労働を 「 報酬の対価 」 以外の見方で捉える機会が少ない。

しかしながら今にして振り返れば、自分が仕事を通じて得たものは、けして 「 お金 」 だけではなかったということに、気がつくこともある。

個人の人格形成や、知識、技術の多くは、仕事に携わった経験から磨かれたものも多く、良くも悪くも 「 いまの自分 」 に影響していることは明らかだ。

もし、自分が大金持ちで、まったく働かずに現在の年齢に至ったとすれば、自分自身に誇れるものがあるのかと問われたとき、答えに窮してしまう。


そう考えると、「 人生は楽しむためにあるが、仕事もまた生活の一部 」 だと捉えてよいのではないかという気がする。

人と仕事の関係は、それが 「 楽しい 」 場合も、「 苦痛 」 であっても、一生懸命に取り組めば、必ず 「 なにか 」 を返してくれるものである。

お金が目的だと割り切って働いたとしても、その事実は変わらない。

特に日本人は 「 勤勉な民族性 」 を備えた人種という評価が強く、もちろん個人差はあるけれども、勤労意欲の平均水準が高いと認められてきた。

敗戦による貧困や、過去の経済危機を乗り切ってきた背景には、そのような仕事に対する積極的な関わりや、高い勤労意識が大いに関係している。


日本の経済が悪くなった原因に、「 勤労意欲の低下 」 が挙げられる。

学卒後、未就労の若者達は100万人を超え、基礎的生活条件を親に委ねつつ、自分は小遣い稼ぎ程度に、たまにアルバイトをするような人も多い。

時代は 「 就職難 」 で、働き甲斐を感じられるような職場、魅力のある職種に就きにくいことから、いまいち就職に対して積極性がない。

えり好みをしない場合でも、有効求人倍率が低かったりするので、全体像を鑑みれば、正社員の雇用自体が少なく、全求職者を受け入れられない。

片や、正社員以外の雇用 ( アルバイト、パート ) や、派遣社員、契約社員などの雇用は数多くあり、常に 「 人手不足 」 だったりもする。


特に、この 「 派遣社員 」 という制度は、日本経済に悪影響を与えている。

派遣社員を利用する際、企業は 「 派遣会社 」 に手数料を支払うために、時間給に換算すると、正社員よりも高い賃金を払わされることが多い。

しかしながら、「 必要なときだけ利用できる 」 ことや、各人の福利厚生などの雇用負担が軽減されるので、長期的に判断するとロスが少ない。

そのため、業界によっては正社員数を必要最小限まで削り落とし、労働力の大半を派遣社員によって賄っている企業もある。

実際、それを 「 省力化 」 とか、「 ローコストオペレーション 」 などと呼んで励行し、実績を挙げた例も多く、最近では広く浸透している。


この派遣社員という制度は、たしかに一企業にとっては有効な戦術である場合も認められるが、全体的には思わぬ 「 害悪 」 をもたらしている。

最大の問題は、「 正社員の雇用 」 が激減したことにある。

正社員でも派遣社員でも、働くことに変わりはないのだが、いつ契約が終わるかもしれないという立場と、長く働く正社員では、スタンスに差がある。

かつての旧態然とした 「 忠誠心 」 などは必要ないにしても、時間を切り売りする労働体系と、全体的な成果を分かち合うという姿勢は明確に異なる。

けっして、派遣社員の人のモチベーションが低いわけではないが、正社員と同じような期待をかけたり、責任を負ってもらうには限度というものがある。


企業が 「 助っ人 」 を多用して、正社員の採用枠を減らしたことが、現在の就職難に拍車をかけたことは事実で、失業問題の 「 癌 」 になっている。

働く側も、責任や義務感ばかり押し付けられ、待遇の良くない正社員への難関を目指すより、割りの良い派遣や、パート、アルバイトを気軽に選ぶ。

最近の若者には 「 フリーター 」 が多く、職を転々とすると嘆く人も多いが、全体の雇用傾向が招いた、いわば 「 必然的な結果 」 なのである。

もともと、企業のコスト削減を目的として始まった方策だが、全体に及ぼす害悪が大きく、この風潮にはどこかで 「 終止符 」 を打たねばならない。

たとえば、再建支援の必要な企業だけに限定するなどして、現在のような 「 猫も杓子も 」 という対応に歯止めをかけることが望ましいだろう。







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