2005年01月24日(月) |
日本経済が悪くなった原因 その二 |
「 専門家とは、非常に狭い分野で、あらゆる間違いを犯した人のことだ 」
ニールス・ボーア ( デンマークの物理学者 )
An expert is a man who has made all the mistakes which can be made, is a very narrow field.
NIELS BOHR
失業率は、不況の深刻さを計るうえでの、一種のバロメーターでもある。
経済を上向きにさせるには、安定した雇用の創出が不可欠ともいえよう。
現在、さまざまな分野において、民間の資金とノウハウを活用して、公共の事業を民間企業に委託する動きが活発化してきている。
失業対策としては、たとえば、自治体が民間の人材会社に失業者を預け、カウンセリングや、就職に関する技術的な指導を受けさせている。
人材会社のカウンセラーは、失業者の 「 精神面のサポート 」 をするため、相談相手になってやったり、悩み事を聞いてあげる存在となる。
同時に、履歴書や職務経歴書の正しい書き方を教え、面接での話法など、技術的な指導をすることで、彼らの就職を効果的に支援する。
また、カウンセラー以外の職員は、その失業者に見合った具体的な就職先を探し出し、企業の採用官に交渉して、面接を受ける機会を与えてもらう。
この方法は、「 アウトプレースメント 」 といって、企業がリストラを行う際に、離職者が再就職先を見つけ出す 「 手助け 」 を支援する措置である。
解雇を行う企業は、相場として、だいたい一人当たり 「 80 〜 100万円 」 ぐらいの費用を人材会社に支払って契約していることが多い。
この費用は、名目上 「 離職者が再就職に困らないように 」 という主旨であるが、実際には 「 人事担当者の心理負担を和らげる 」 目的も含まれる。
解雇される人も辛いが、一度に何十人、何百人を解雇する人事担当者も、精神的には極度のストレスを強いられる立場にある。
人材会社と 「 アウトプレースメント 」 の契約を結ぶことで、解雇通告をするときにも、少しは離職者に安心感を与え、動揺を軽減する作用につながる。
この制度を、いま 「 自治体 」 によって活用する動きが出始めている。
ハローワークで求職活動中の長期失業者に対し、自治体が希望者を募り、民間の人材会社に 「 アウトプレースメント 」 のサービスを提供させる。
この場合での費用は、厚生労働省の許可を得て 「 自治体 」 が負担をする仕組みになっているのだが、彼らはなぜ、そこまでやろうとするのか。
それは、失業者が就労することによって生じる 「 納税 」 と、長く失業状態が続くことによって発生する 「 保護 」 を天秤にかければわかる。
一時的に費用を負担しても、働いて納税してもらえば税収が上がり、逆に、未就労者に生活保護などを支払うことは、財政の圧迫につながっていく。
郵政の民営化について、さほど重要な意義を感じない人も多いだろう。
たしかに、それ自体が 「 経済の救世主 」 となる期待には欠けるが、他の省庁や、公共事業への 「 官民一体 」 という発想に好影響を与えている。
前述の新制度なども、長期失業者の雇用を促進する 「 効果的な措置 」 といえるが、従来にない 「 柔軟で、斬新なアイディア 」 ではないだろうか。
いわゆる 「 お役所仕事 」 の垣根を取り払い、民間の資産や、ノウハウを活用するという思考は、小泉内閣の大いなる功績として評価できる。
ただそれが、国民の大部分が求める 「 即効性のある経済対策 」 だとして認められるかどうかは別問題で、これだけでは不十分なのも事実である。
公共性が伴う事業を民間企業に委ね、国や自治体はそれを監視する。
過去においても、たとえば高速道路や橋をつくるときには当然のように行われてきたが、その範疇は意外と狭く、対象となる分野が限られていた。
公共サービスの種類によっては、公的機関と民間企業が仕事を奪い合ったり、競合して悪しき価格競争に陥るケースなども、随所にみられている。
これらの 「 ロス 」 を無くして、「 官 」 と 「 民 」 が併せ持つ 「 日本全体の資産とノウハウ 」 を最大限に活用することには、大きな意義がある。
片方では省力化を行い、余剰となった資産や人員を動員して、新たな事業展開を推進すれば、それは雇用の創出にも結びつき、増収にもつながる。
日本経済を悪くした原因として、過去にこのような発想が乏しく、「 官 」 が 「 民 」 の邪魔をしたり、連携する機会が少なかった点も挙げられる。
狭い日本列島の中で、官と民が入り乱れての 「 重複する事業合戦 」 などやっているのは、まったく無駄な話であり、それはすべて 「 ロス 」 である。
業種によっては、民間だけでも 「 オーバーストア ( 店舗が多すぎて、需要を供給が大きく上回ってしまっている ) 」 なのに、馬鹿げた話ではないか。
国や自治体が予算と人員を割いていながらも、民間のパワーに比べると、期待される成果をあげていない事業などは、まだまだ無数にある。
現在、「 PFI = Private Finance Initiative プライベート・ファイナンス・イニシアティブ 」 の推進など、新たな官民のパートナーシップが見直されている。
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