2005年01月17日(月) |
「 カンフー・ハッスル 」 は面白い |
「 駄作を撮る場合でも、一番マシな駄作でありたいね 」
リチャード・バートン ( 俳優 )
If you're going to make rubbish, be the best rubbish in it.
RICHARD BURTON
長い間、心に残る映画ではなくても、純粋に 「 面白い映画 」 がある。
現在、その製作者として、香港の 「 チャウ・シンチー 」 が注目されている。
彼は、2001年に 「 少林サッカー 」 という映画を撮り、香港を皮切りにアジア全土で大ヒットを記録し、一躍、映画製作者としての知名度を上げた。
日本でも興行的に成功したので、ご覧になった方も多いだろう。
いわゆる 「 ナンセンス・コメディ 」 と呼ばれる代物で、リアリティを追求してみたり、作品のテーマを探るような映画ではない。
ただ単純に、頭を空にして笑うことが、十分に楽しむための秘訣だ。
すべての映画がこんな調子でも困るが、たまにはお腹を抱えて、無邪気に笑えるような作品があっても良い。
現在、劇場では彼の最新作 「 カンフー・ハッスル ( 2004 香港 ) 」 が公開されており、以前から楽しみにしていたので、私も足を運んでみた。
鑑賞後の感想としては、「 前作よりも面白い 」 と評価できるように思う。
ただ、コメディというのは、個人的なセンスというか、好みというか、いわゆる 「 笑いのツボ 」 みたいなものが異なるので、万人向けの保証はできない。
もし、面白くないと言う人がいれば、たぶんそれは 「 クダラナイ 」 からという理由だと思うが、その 「 クダラナイ 」 ところが作品の持ち味でもある。
そういう映画にトライしてみたい方は、ぜひ、ご覧いただきたいと思う。
ちなみに、外国映画を劇場で観る場合、たまに 「 字幕版 」 と、日本語の 「 吹き替え版 」 を選べる作品がある。
他の作品では、無条件で 「 字幕版 」 を選ぶのだが、この作品にかぎっては 「 吹き替え版 」 の方をお勧めする。
前作 「 少林サッカー 」 のDVDを持っているのだが、なぜか広東語の映画というのは、あまり馴染めない感じがするのだ。
うまく説明できないが、広東語で観ると 「 カンフー映画 」 という印象が強くなりすぎて、作品の持つ世界観に入り込みにくいのである。
劇場側もそれを心得ているらしく、「 吹き替え版 」 で上映しているところの方が多いようだ ( 少なくとも、関西地区の映画館は吹き替え版が多い )。
内容は、「 豚小屋 」 と呼ばれる貧民窟に住む人々と、「 斧頭会 」 と名乗る暴力団の抗争を描いた物語が主軸になっている。
主人公の 「 チャウ・シンチー 」 は、元々正義感の強い人間だったが、真面目に生きてもロクなことがないので、悪の手下になることを望んでいる。
それで、「 斧頭会 」 の手先として 「 豚小屋 」 を攻撃しに行くのだが、そこには、かつて 「 カンフーの達人 」 と呼ばれた住人達が隠れ住んでいた。
歯が立たないと知った 「 斧頭会 」 は、対抗する力を持つ達人を探してきて、白熱した闘いが繰り広げられていく。
あわや、「 豚小屋 」 は全滅かと思われたときに、主人公が良心に目覚め、悪に闘いを挑むという、単純明快な 「 ヒーロー活劇 」 である。
この 「 チャウ・シンチー 」 という人は、「 エンターティンメント 」 というものをよく理解しており、映画の楽しさ、醍醐味を、随所にちりばめている。
コメディを主軸に、アクション、恋愛、はてはミュージカルのような要素まで、贅沢なほどに取り入れ、観客を楽しませることに力を惜しまない。
本人は 「 ブルース・リー 」 の大ファンだったそうで、2作品ともに共通しているのは、「 カンフー 」 を愛する姿勢である。
今回の作品では、かつて 「 ブルース・リー 」 や 「 ジャッキー・チェン 」 らが出演した作品で、俳優やスタントマンを演じた人が多く参加している。
28年ぶりに映画出演をした俳優さんもいて、今は亡き 「 ブルース・リー 」 に捧げるオマージュのような部分も、あるのではないかと思う。
一緒に映画を観た女性と、「 チャウ・シンチー 」 は “ 男前なのかどうか ” という話になって、彼女の口から面白い解説を聞いた。
映画を観ればわかるが、2作品とも主人公の男女以外は、かなり 「 個性的な顔 」 をした俳優さん、女優さんばかりが出演している。
もっとわかりやすい言葉で表現すると、全員が 「 ブサイク 」 なのである。
こんなに 「 ブサイク 」 な俳優さん、女優さんばかりが出ている映画というのは、他に類がないといっても過言ではないだろう。
つまり、「 周りに “ ブサイク ” を配して、全体の質を下げることで、主人公の男女のキャラが立つようにしている 」 という、珍しい作品なのである。
男前かどうかはともかく、人を楽しませる才能については秀でている。
早くも次回作に対する期待と、DVDが発売される日を心待ちにしているような気分であり、少なくとも私は 「 ツボにはまった 」 ようである。
こういう映画は 「 名作 」 と位置付けられることなく、「 B級 」 として分類される宿命を負っているが、堅苦しい制約がない分、単純に面白い。
日々のストレスを忘れ、無条件に笑うことができる作品だといえる。
嫌なこと、辛いことがあった人は、「 気分転換 」 のためにもお勧めする。
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