「 愛に触れると、誰でも詩人になる 」
プラトン ( 哲学者 )
At the touch of love, everyone becomes a poet.
PLATO
それが本当なら、私は 「 愛 」 に触れたことがないのだろう。
私の手からは、「 詩 」 などひねり出したことが一度も無い。
奈良県は11日、結婚に夢を持ってもらうことで少子化対策につなげようと公募していた 「 プロポーズの言葉100選 」 の審査結果を発表した。
参加者の中には、たとえばタレントの 「 松本人志さん 」 など、未婚の人もいて、この公募のために考えた 「 愛の言葉 」 も含まれている。
しかしながら、未使用の 「 造られた 」 愛の言葉よりも、実際に生身の夫婦が交わした言葉のほうが、生々しいけれど迫力を感じたりもする。
たとえば、「 しあわせ部門 」 で大賞に輝いた 「 時計は時を知らせてくれるが、あんたは時を忘れさせてくれる 」 なんてのは、しみじみと秀逸である。
この文では 「 あんた 」 という表現がさりげなく、それが 「 あなた 」 であるならば、ちょっと 「 キザっぽい、ウソ臭い感じ 」 がするように思う。
あるいは、「 ドラマチック部門 」 にて大賞をとった 「 ぼ、僕とお付き合いを前提に結婚してください!! 」 というのも、実に素晴らしい。
二作品とも、数十年前に実際に使われた言葉だという。
後者の言葉を告げられた女性は、「 ここは突っ込むべきか 」 と首を傾げながらも大笑いしてしまい、そのまま交際して結婚に至ったという。
それを 「 プロポーズの言葉 」 とは判断し難い面もあるのだけど、この際、そんな細かな判定はどうでもよい。
いかに、相手の胸に届いて、響き、揺り動かすかという点が重要である。
これらは、緻密に計算してひねり出した 「 口説き文句 」 とは違う。
相手を想い、自然に口をついて出た 「 愛の言葉 」 というのは、だからこそ感動を与え、力強く、真実ゆえの迫力を醸し出している。
私が日記の冒頭に 「 著名人の名言集 」 を引用している背景には、過去の人間がそれぞれ実際に口にした 「 生きた言葉 」 だからという理由がある。
彼らに比べれば、いかに自分が毎日の暮らしの中で、上っ面を取り繕うための薄っぺらい言葉をさもしく発しているのか、後悔することしきりだ。
単に言葉を選ぶだけではなく、その言葉に生活の息吹やら行動の集積が感じられるような、そんな自分でありたいし、そんな言葉を遺したいと思う。
ちなみに、この企画を提案した 「 奈良県の職員 」 は立派である。
目標に対する効果のほどはともかく、なかなか粋で、面白い試みだ。
これで急速に 「 少子化 」 が解決するとも、歯止めが掛かるとも思えないが、少なくとも 「 奈良県のイメージアップ、PR 」 には功績が大きい。
お金をかけないで、世の中をちょっと明るくしたり、楽しませたりすることができるということの、試金石としても評価できるだろう。
ひょっとすると、どこかの 「 代理店 」 が広報の手助けをしたのかもしれないが、それでも、それを採用した県側の勇気に、エールを贈りたい。
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