Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2005年01月11日(火) 寄生から自立へ



「 何をやるにも絶対に必要なもの。

  それは、何をやるのか選んで、それを愛し、夢中で取り組むこと 」

                        ナディア・ブーランジェ ( 作曲家 )

The essential of everything you do...must be choice,love,passion.

                             NADIA BOULANGER



各地で成人式が行われ、今年も数多くの 「 新社会人 」 が誕生した。

実際は19歳も20歳も見た目に変わらないが、気分の問題だろう。


最近、よく 「 パラサイト・シングル 」 という言葉を耳にする。

英語で 「 パラサイト [ parasite ] 」 は 「 寄生 」 という意味を持ち、ここでの 「 シングル [ single ] 」 は 「 独身者 」 のことを指す。

つまりは 「 親と同居している独身者 」 という意味で、学卒後も親と同居を続け、住居費、食費などの基礎的生活条件を依存している若者達のこと。

それぞれに事情もあるようだが、世間的にあまり良い印象ではない。

現在、学卒後34歳までの 「 パラサイト・シングル 」 は全国に 1,000万人以上居るといわれ、その数はさらに増加する傾向にある。


もちろん、親と同居をしていても、生活費の大部分を負担していたり、逆に親の介護をしたり、面倒を看るような立場にある人は、これに属さない。

また、身体的な障害などの理由で一緒に暮らしている人も、該当しない。

あくまでも、「 自立し、別居する意思のない若者 」 が対象となっている。

世間の評価はともかく、たとえば 「 子供と一緒に暮らしていたい 」 という親にとっては 「 親孝行な話 」 かもしれないし、一概に悪い事とはいえない。

意味も無く別居するよりは、はるかに 「 経済的 」 だし、お金も貯めやすい。


良いとか悪いとかの問題ではなくて、これは 「 流行 」 なのだろう。

我々の世代や、少し上の世代の人々の中には、なんとなく、学校を出たら 「 親という呪縛 」 から逃れたいとか、そういう人も多かったように思う。

それほど厳しく育てられたわけでもないが、独立して自由きままに暮らしてみたいとか、一人暮らしへの憧れ、好奇心みたいなものが強かった。

いまは、親子間の 「 世代的な断絶 」 みたいなものが薄くて、けっこう同居していても苦にならないというか、居心地が悪くもないのだろうか。

ただ、いくつになっても親からみれば 「 子供 」 であることに変わりはなく、自分を 「 子供扱い 」 する人間がそばにいる影響は、あるかもしれない。


私の場合は、東京の大学に入った時点で、一人暮らしを始めた。

以来、ずっと ( 一時的に人数が増えたことはあったが ) 一人暮らしだ。

それが当たり前のように暮らしてきたので、大人になっても親と暮らすことが、どのようなものなのか、感覚的に理解しにくい。

先に 「 流行 」 と述べたが、個人の 「 性分 」 みたいなものもあって、人によっては一人が楽だったり、家族といるのが楽だったりするのだろう。

ただ、大抵の場合、親は先に死ぬので、いつかは一人になる。


自分で 「 一人で暮らす 」 と決めていても、状況の変わることはある。

愛する人ができ、かたときも離れずに一緒にいたいとか、遅ればせながらも二人の子供をつくりたいとか思えば、結婚する可能性もあるだろう。

それと同じように、いまは親と暮らすことに満足していても、なにかの拍子に独立を決意することだって、考えられると思う。

おそらく、「 パラサイト 」 と呼ばれる人々の多くは、そのタイミングを逸してしまったか、あるいは 「 機会 」 を待っているのではないか。

それならそれでよいのだが、ただ家に引きこもっていても 「 機会 」 は訪れないものなので、働くなり、恋をするなどして、能動的に動いたほうがよい。


仕事でも、趣味でも、恋愛でも、それを愛し、夢中になって取り組めるものが見つかったときに、それが人生の大きな 「 転機 」 となることが多い。

なぜならば、それこそが自分の人生で自分を 「 主役 」 に置く瞬間となる。

それで、生活の中心が 「 内 」 から 「 外 」 へ向くとは限らないが、他人の人生に寄生する生活が、主体的なものに激変する可能性は高いはずだ。

また、自分でお金を稼ぎ、収入も支出もコントロールする立場にありたいと望むことが、「 寄生 」 から 「 自立 」 への転換をもたらすことにもなる。

ちょっとぐらい時間がかかっても、遠回りをしてもかまわないから、新社会人の皆さんが、本当に 「 夢中になれるもの 」 を見つけられることを祈る。







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