2004年12月27日(月) |
プレゼンテーションの極意 |
「 不可解なわけのわからない専門用語で、職業がわかる 」
キングマン・ブリュースター ( 元駐英アメリカ大使 )
Incomprehensible jargon is the hallmark of a profession.
KINGMAN BREWSTER
言葉の文化というものには、ファッションと同じく流行がある。
時代と共に生まれ、隆盛し、陳腐化したり、なかには消滅したりする。
江戸時代にまで タイムスリップ しなくても、ある日突然、100年前ぐらいの日本に弾き飛ばされたとしたら、日常会話にも不自由するだろう。
だいたいの意味は理解できたとしても、常用的に使っている英語、外来語の類や、新造語などの 「 現代ことば 」 が通じない場面は多いはずだ。
あるいは20年前、いや、わずか5年前でも、多少の違和感があるだろう。
最近、ケーブルテレビに加入したことから、昔のテレビ番組などが観られるようになったが、そのあたりの 「 台詞回し 」 には笑ってしまうものがある。
当時 「 トレンディドラマ 」 と呼ばれていたものほど、古臭く、視聴する側のほうが、おもわず照れてしまうような会話が多い。
私的な日記や、手紙の類はともかく、後に残すようなビジネス文書の場合、なるべく 「 普遍的な言葉 」 を用いるほうが、賢明というものだろう。
何年か先に、かつて自分の書いた文書を、部下や後輩に発掘され、失笑を買ってしまったのでは、威厳も面目も丸つぶれである。
また、それが業界独自の 「 専門用語 」 だったりする場合には、注釈などを入れておかないと、それが未来で 「 死語 」 になると理解されなくなる。
実際に、何年も前に使われていた表現が死語となり風化したことで、書いた本人すら、前後の文章を読まなければ思い出せないなんて事例もある。
日常的に使い慣れていない言葉は、会話に 「 知的な印象 」 を与えたり、それなりの インパクト を持つが、欠点もあることを忘れてはならない。
最悪なのは、言っている本人が 「 意味もよくわからずに 」 使う場合だ。
言葉の使い方を微妙に間違っていたり、使い所が適切でないため、本当の意味を知っている者から、誤解を受けたり、失笑を買うことが多い。
同じメンバーで、会議や、プレゼンテーションなどを続けていると、発言者の特徴がわかってくるのだが、どこの会社にも 「 そういう人 」 が居る。
つまり 「 誰にでもわかる言葉で、丁寧に内容を伝える 」 という作業よりも、難解な用語を交えて話を複雑にし、発言そのものに価値を与えようとする。
素人相手なら騙せても、その道の 「 プロ 」 を相手にすればまったくの茶番で、カッコいいと思っているのは自分だけなのだが、当事者は気づかない。
たとえば、「 問題点を、戦略的に解決します 」 などという人がいる。
そういう人に私は、先ず、「 問題点 」 やら 「 戦略的 」 という言葉の定義を尋ねてみることにしている。
大抵、簡潔明快に答えられる御仁は少なく、「 それならば 」 難しい言葉など使わずに、もっと具体的に、わかりやすく要点を発表するように求める。
ちなみに、何が正解というわけでもないと思うが、私が思う 「 問題点という言葉の定義 」 とは、「 本来あるべき姿と、現状との差 」 である。
また 「 戦略的という言葉の定義 」 については、「 5W1H ( 誰が、いつ、どこで、何を、どのように、どうするのか ) 」 ということにあると思っている。
専門用語や、難解な言葉を発言する際には、まず、自分自身が熟知していることが大事で、しかも、会場に居る全員が、理解している必要がある。
もちろん、凡庸な言葉では重要度や、緊急性が伝わらないこともある。
大切なことは、言葉の優劣ではなく、真意が 「 届く発言 」 であるかどうかという部分にあり、そこを誤解してはならないのだ。
私自身、プレゼンをする機会が多く、また他人のプレゼンも無数に見てきたが、「 巧いプレゼン 」、「 勝つプレゼン 」 をする人は、そこが違う。
事前に列席者の顔ぶれをみて、それぞれの理解度と、要求水準を見極めたうえで、それぞれの胸に 「 届く発言 」 をすることが、プレゼンの極意だ。
( 本日のおさらい )
「 プレゼンは、相手に “ 届く言葉 ” を投げる作業 」
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