私の好きな映画の一つに、『 フォレスト・ガンプ ( 1994米 ) 』 がある。
トム・ハンクス主演作は当たりはずれが大きく、これは 「 当たり 」 のほう。
この映画の主人公 フォレスト・ガンプ は、知能指数こそ人より劣るものの、ずば抜けた足の速さを持ち、スポーツの世界で才能を開花させる。
そして、それ以上に優れている点は、類稀なる 「 誠実さ 」 である。
最初は彼のことをバカにしていた者や、疎んじていた者たちも、いつしか彼の人間的な魅力に惹かれ、しだいに彼を慕うようになっていく。
そして、彼本人は多くを望まなかったにも関わらず、富と栄光を得て、他人が羨むほどの大成功を遂げていくのだ。
しかしながら、彼が求め続けた 「 ささやかな願い 」 であった初恋の女性が早死にするなど、本当に望んだ幸せは、あまり長くは続かなかった。
劇場公開時の宣伝文句は、「 人生は箱の中のチョコレートと同じで、開けてみなければ中身はわからない 」 というものだった。
実際、彼の母親がそう呟く台詞が、劇中にも登場する。
しかし私がこの映画から受けた教訓は、「 頭が悪いことと、バカなことをしでかすのとは違う 」 というポイントである。
映画では、ガンプの素直で奔放な生き方と並行し、ケネディ暗殺、ベトナム戦争、ウオーターゲート事件など、21世紀アメリカの歴史が描かれる。
そのすべてが、ガンプよりよほど 「 優秀 」 とされる人々が引き起こした 「 馬鹿げた行為 」 であり、ガンプの生涯とは対照的に浮かび上がる。
現実の世界では、何も考えずにぼおっとしているだけでは、なかなか成功することは難しいばかりか、人並みに生きることにも苦労するだろう。
それでも、自分の信条や、他人との約束事に対して誠実で、自分の人生を有意義に過ごそうとする者は、たとえ知能が劣っていても愛されるだろう。
逆に、少しぐらい頭が良くっても、つねに社会や他人に対する悪態ばかりをつき、自分の人生を惨めにしか感じていない者は、まるで尊敬されない。
ガンプのように、恋した女性、友達、肉親などを 「 人生の宝物 」 と感じて、誠意をもって、ひたむきに生きる姿勢こそ、人に感銘を与えるものだ。
それを 「 きれいごと 」 だとしか考えない人々には理解できないだろうが、自分の生まれた土地や、周囲の人間を大切にしてこそ、幸せは成立する。
|