Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2004年08月31日(火) 一生懸命に羅列する人々


昨日、「 裏 巨人 」 を書いたのには 「 裏 」 がある。

秘密はホームページに隠されているので、興味のある方は探してください。


マイケル・ムーアという監督の作品 『 華氏911 』 が話題になっているが、案外と、実際に観た人の感想は芳しくないようだ。

この映画はドキュメンタリーの様相を呈しており、たしかに、そこで使われている映像は、すべて 「 本物 」 で、脚本も演出も芝居もない。

劇場に足を運んだ人の大半は、フィクションを排除した 「 真実の映像 」 を観れることに期待し、上映を心待ちにしていた。

本編が始まり、「 ある意味においては 」 その通りに映像が展開する。

ところが、観終わった感想は 「 どうもイマイチ 」 なのである。


マイケル・ムーア氏が 「 アンチ・ブッシュ 」 であることは万人の知るところであり、この作品にかぎらず、著作やインタビューの随所に現れている。

たしかに虚飾のない 「 真実の映像 」 ではある。

しかし、特定の人物に対し悪意のある者が、都合のよい部分だけをつなぎ合わせると、そこには 「 対象への歪んだ印象 」 が生じるのも事実なのだ。

ドキュメンタリーといえども、相手の良いところはすべて隠して、悪い印象を与える部分だけを編集すれば、真実の姿など伝わるはずがない。

観る者が観れば 「 まったくの子供だまし 」 であり、本来のドキュメンタリー作品が持つ 「 真実の迫力 」 などは感じられないという意見が多い。


一般的に、「 数字は嘘をつかない 」 とよく言われる。

ビジネスの世界においては、具体的な数字を織り込んだ報告書類が評価を受け、抽象的な 「 頑張ります 」 みたいな書類は破り捨てられる。

しかし、数字を並べればそれでよいというものでもない。

数字の中にも、自分にとって都合の良いデータから抽出したもの、全体的な傾向とは異なる数字というものが、潜んでいるケースは多い。

もちろん、すべて 「 観る者が観ればわかる 」 トリックにすぎない。


大事なのは、「 物事の本質がどうなっているのか 」 という部分にあり、数字や映像は、それを裏付ける資料の 「 一部 」 にすぎないということだ。

当然、具体的な数字や事例をまったく示さないというのも抽象的すぎて問題はあるが、「 断片的な数字に頼る意見 」 は誤った結論を導く。

マイケル・ムーア氏の映画のように 「 最初に悪者を決め付ける 」 のではなく、最大の問題点を見極め、それから原因を追求していくべきだろう。

幸いなことに世の中の大部分の人は、画策された映像や、偏狭的な思考に基づく偏った数字の 「 羅列 」 によって、思考を動かされることがない。

そんな 「 木を見て、森見ず 」 のような論理が、罷り通ることはないのだ。


最近、「 格付け機関による、日本の銀行への評価 」 が上がったことを根拠として、多くの国民が抱える銀行への批判を否定する意見がある。

そこへ達するまでの経緯として、不良債権が減ってきた事実や、銀行サイドの 「 努力 」 というものに対しては、具体的に数字で解説がなされている。

しかしながら、「 それがどうした? 」 と思う人が大半だろう。

不良債権が減少したのは、銀行の努力というよりも 「 政府の指導 」 に基づいた結果であり、「 やって当たり前 」 の事柄というのは周知の事実だ。

それよりも、「 どうして不良債権が、そんなに多かったの? 」 ということのほうが大問題で、稚拙な経営能力、洞察力の甘さに関心が向くばかりだ。


格付けが上がったことについても、銀行そのものへの評価より、日本経済の実態が 「 最悪の状態よりは上向いてきた 」 ことに要因がある。

また、現時点で日本の銀行に、誰も 「 努力 」 など求めてはいない。

すでに彼らは 「 期待はずれ 」 だったわけで、今後は政府の指導による 「 不良債権の縮小 」 と、「 銀行員のリストラ 」 を行うだけの存在である。

いくら彼らの側に立って、銀行の価値や、銀行員のエリート性を主張したところで、「 政府が公金を投入した 」 という事実は覆らない。

東京三菱など比較的堅調に事業を続けているところは別として、自分勝手な経営のツケを税金で払わされた怒りを、国民が忘れるはずはないのだ。


もちろん、日本の銀行を擁護する意見を展開するのも自由である。

ただし、いくら庇ったところで 「 過去の罪悪 」 が消えるわけではない。

現時点で多少上向きになったとはいえ、日本経済を悪化させた元凶であり、公的資金によってなんとか潰れずにいる状態で、立派な口は叩けまい。

過去において、国民のお金を勝ち目のないギャンブルに注ぎ込み、地価を高騰させたり、また下落させた 「 放蕩息子 」 に甘いのは身内だけだ。

国民はみんな、口には出さなくても、怒っているのである。


それでもなお、体験のないマスコミの 「 お下がり 」 のような情報を引っ張り出してきたり、無意味な数字を羅列するのは、愚の骨頂であろう。

あるいは、彼らのエリート意識による 「 あくまでも自分中心で、愚民どもはどうなってもいい 」 という感覚が、そうさせているのかもしれない。

実際のところ、銀行員で 「 うつ病 」 や、精神障害、人格障害に陥っている人間が、私の周囲にもウジャウジャいる。

社会からは疎まれ、組織内ではリストラや左遷の嵐に遭い、自分たちは優秀だというエリート意識が保てなくなったことが、最大の原因のようだ。

こんな風に書くと、「 じゃあ、数字で示してください 」 と反論するのだろうが、そんなことをしても意味がないし、しないのは 「 武士の情け 」 である。






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