Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2004年08月30日(月) 裏 巨人


最近は、もっぱら 「 格闘技ブーム 」 である。

ちょっと目を離すと、続々と新しいヒーローが現れては消えていく。


この 「 格闘技ブーム 」 というのは、我々が子供の頃に体験した 「 プロレスブーム 」 とは、少し趣が違うような気がする。

昔のプロレスというのは、展開にシナリオめいた部分があって、毎回、一つのドラマを観ているかのような試合が多かった。

血まみれで惨敗したはずのレスラーが、次の試合では元気に、無傷とも思える姿で登場したり、時間切れ寸前で人気レスラーが逆転勝ちを収める。

なんとも 「 インチキ臭い 」 が、真偽の程は定かでなく、ぱっくり割れた傷口でも一週間で完治する 「 奇跡の治癒力 」 を備えていたのかもしれない。

それを 「 八百長 」 と呼ぶ者もいたが、そこにカモフラージュは乏しく、大胆かつあからさまで陰湿なイメージが無く、「 不正 」 という感じではなかった。


K1 など、いまの格闘技ブームでは、そういった 「 脚本 」 の存在を感じさせない 「 本気の真剣勝負 」 という印象が強い。

普通に考えれば、それは格闘技として 「 当たり前のこと 」 であって、演出のない真剣勝負だからこそ、スポーツとしての醍醐味もあるのだろう。

あまり 「 そっち系の話 」 に詳しくないのだが、プロレスの世界も、ある時期に 「 真剣勝負派 」 の団体が登場し、昔とは違ってきたらしい。

しかしながら、どちらかというと 「 芝居を観る 」 ような感覚で格闘技を楽しんでいた層もあり、そういう人は旧態のプロレスを好むようだ。

いわゆる旧態のプロレスでは、必ず 「 悪役レスラー 」 という存在があり、滅多に勝てないのだけれど、多くのファンに愛されていたのである。


プロ野球に話を移すが、先般より懸案事項となっていた 「 近鉄、オリックスの合併問題 」 は、なかなか最終結論が出ないで混迷している。

それは両球団の問題から、「 1リーグ制への転換 」 なのか、「 2リーグ制の存続 」 かという議論にまで発展し、プロ野球界全体の課題となった。

しかも、最新の記事によると、「 巨人がパリーグに移籍する 」 という噂まで出ているらしく、ますます先行きが読めない状態に陥っている。

これは、お客の入る巨人戦で収益を確保しているセリーグの各球団にとって、いわば死活問題となる可能性もあり、実現すれば大騒ぎになるだろう。

巨人にしてみれば、どっちでもいいような話かもしれないが、あおりを食う側にとっては、まさに天地がひっくり返るような問題である。


巨人が 「 球界の盟主 」 を名乗るのなら、パリーグの危機を救う代償としてセリーグを見捨てるというのは、あまり誉められた方策とはいえない。

ここは一つ、セリーグ、パリーグ双方にとって、どちらのグループも救われる手立てを講じてもらうしかあるまい。

たとえば、「 セリーグにも、パリーグにも “ 巨人 ” があるよ 」 という方法は考えられないだろうか。

球団名はどちらも、「 読売巨人軍 = ジャイアンツ 」 である。

ただし、まったく同じでは区別がつかないので、少し工夫を加える。


セリーグの “ 巨人 ” は今まで通りの “ 巨人 ” で、ユニフォームも、球場も、応援歌も、マスコットも、すべて従来通りとする。

で、大衆はこのチームを 「 表 巨人 」 という愛称で呼ぶのだ。

パリーグの方の “ 巨人 ” は、ユニフォームのベースカラーを 「 黒 」 として、球場は別に設け、応援歌、マスコットも別途につくる。

特徴は、「 表 巨人 」 がフェアで紳士的な球団姿勢を貫くのに対して、反則ギリギリのラフプレイや、口汚い野次を売り物とする。

つまり、これが 「 裏 巨人 」 の誕生である。


当然、「 表 巨人 」 の4番バッターは 「 高橋由伸 」 で、「 裏 巨人 」 の4番は 「 清原和博 」 である。

他に、球界全体から 「 ガラの悪い選手 」、「 素行の悪い選手 」、「 顔の怖い選手 」 などを集め、大リーグからも適役を招聘する。

応援歌は 「 ヘビメタ調 」 で、マスコットは 「 ジャビット小僧 ( 目つきの悪いジャビットが、口から血を垂らしている ) 」 にする。

毎試合、審判に暴言を吐き、テレビカメラに中指を立て、ラッキーセブンになると必ず、名物の 「 乱闘騒ぎ 」 を起こすのだ。

オールスターは、正義のヒーローである 「 表 巨人 の選手たち 」 が、悪役の 「 裏 巨人 の選手たち 」 と対決するとあって、当然、人気爆発である。


そんなこと 「 子供に悪影響を与えるので、世間が許すものか 」 とお怒りの声も聞こえてきそうだが、その点は大丈夫である。

なぜなら、「 裏 巨人 は、絶対に優勝しない 」 仕組みだからである。

万が一、優勝しそうな気配が現れたりすれば、審判の裁量で 「 反則負け 」 を宣したら片がつくし、なんとでも調整はできる。

お茶の間はそれを観て、「 ね、正義は勝って悪は滅びるでしょ 」 と、お子様を正しい道に導いてやれるので、むしろ情操教育には効果的だ。

きっと 「 裏 巨人 」 の各選手は、悪役好きのファンから絶大な支持を受け、立ち向かうパリーグの各選手は、一躍子供たちのヒーローとなれるだろう。


問題点としては、「 裏 巨人 」 の選手の子供が学校でいじめられたり、監督の家の塀に落書きされたりすることも考えられるが、些細な規模だろう。

もっと懸念すべき事柄は、「 すぐに飽きられてしまう 」 ことのほうだ。

きっと最初のうちは、物珍しさも手伝ってブームになるだろうけど、選手は悪役修行に明け暮れてプレーが上達しないし、クズ集団に陥っていく。

荒唐無稽でナンセンスな話だが、それでも、「 プロ野球を面白くする 」 という意味では、ちょっとした刺激になるのではないか。

どうせ 「 表 巨人 」 は、金にモノを言わせて獲得した選手が余ってるようだし、話題の 「 ライブドア 」 に 「 裏 」 を任せてみるという手もある。






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