夏休みなので各地の映画館は、大作、話題作が公開され、賑わっている。
空いた時間を利用して、1本観ることにした。
どの映画を観るかという選択については、予告編などの事前情報によって、あらかじめ見当をつけておくことが多い。
お得な前売り券に加え、最近は 「 格安チケット 」 を販売する店舗などもあるので、観たい作品を事前に決めておいたほうが、なにかと都合もよい。
しかし、ときには 「 その日の気分 」 で、予定していなかった作品を、なぜか衝動的に観たくなることもある。
幼い頃、テレビで放映されていた、イギリスの人形劇 「 サンダーバード 」 が、実写版として再映画化され、現在、劇場で公開されている。
懐かしいテーマ曲に郷愁が甦り、誘われるままに館内へ入ると、家族連れや若いカップルに混じり、私と同じ世代の男性客も、かなり目についた。
サンダーバードは、一国の救助組織では対応できないような大惨事から、人々を救出するために設立された 「 国際救助隊 」 の活躍を描く物語だ。
この救助隊は、公的な機関ではなくて、「 ジェフ・トレーシー 」 というアメリカの大富豪と、その家族によって構成されている。
活動の拠点となる基地は、南太平洋上に浮かぶ孤島 「 トレーシー島 」 で、普段は、リゾートのような景観にカモフラージュされている。
出動の際には、ボタンひとつで木々が倒れ、プールの底が開き、ロケットの発射台や、その他のメカが現れ、姿を一変させるのだ。
颯爽と乗り込み、人命救助のため現地へ向かうのは、ジェフの5人の子供たちで、毎回、彼らの勇気ある活動が、人々の窮地を救うのである。
この番組が 「 われら世代 」 に大人気を博した要因は、登場人物の活躍や、物語の展開ではなく、「 近未来的な乗り物 」 と 「 秘密基地 」 にある。
プラモデルは爆発的に売れ、皆がそれで遊んだといっても過言ではない。
きっと、サンダーバードにかぎらず、当時の男の子たちは 「 秘密基地 」 が大好きで、家の中では 「 プラモデルの秘密基地 」 に興じたのだろう。
外では、高度経済成長の建築ラッシュが盛んで、あちこちに空き地と、土管や廃材があったので、そこを基地に見立てて遊んだものである。
それは、狭い住宅事情に暮らす子供たちにとっての 「 夢と憧れ 」 を象徴しており、このドラマが日本で大ヒットした 「 真相 」 だったのかもしれない。
映画版は、「 悪者に秘密基地を占拠される 」 という危機を、一家が協力して乗り切るという物語が主軸になっており、なかなか面白かった。
空想していた秘密基地の内部や、一家の内実なども詳細に描かれており、特に我々世代の男性にとっては、楽しめる内容ではないだろうか。
一家に協力する女性諜報員 「 ぺネロープ 」 役の女優さんが美人で、妙に艶っぽいというのも、「 お父さん向けのサービス 」 であろう。
これを観ると、童心にかえって 「 秘密基地 」 で遊びたくなる。
でも、この歳で屋外に 「 秘密基地 」 などこしらえると、なにか良からぬ企てでも起こしているのではないかと、近所に悪評が広まりそうである。
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