2004年08月11日(水) |
歳をとるのは、人間だけではない |
人間が歳をとるように、建物も次第に年齢を重ねていく。
老朽化し、あちこちに 「 ガタ 」 がくるのも、やむを得ない話である。
福井県の 「 関西電力 美浜発電所 」 は、昭和45年に1号機が完成以来、34年間に渡って、原子力発電のパイオニアとしての使命を果たしてきた。
過去、国内の原発においては、5年前に 「 JCO 」 という茨城県の核燃料加工会社が、東海事業所で臨界事故を起こしたことがある。
当時、二人の作業員が死亡したが、それは定められたマニュアルに従わず、ずさんな作業による結果で、原発の安全性を否定するものではない。
9日、美浜発電所で起きた事故は、初の 「 原発運転中の死亡事故 」 であり、4人が死亡、2人が重体という惨事に至ってしまった。
今回は、「 配管の破損 」 という設備上のトラブルが事故の原因となっており、補修点検などメンテナンスの不備が、今後は問題視されるだろう。
破損個所の位置からみて、放射能漏れなどの恐れはないが、「 原発 」 という建物の特殊性から考えると、付近の住民には脅威が高まるだろう。
この暑さを、エアコン無しでしのぐのは辛いけれども、こういう事故が起きると、やはり原発に対する 「 怖さ 」 を、改めて思い知らされる。
おりしも、長崎に原爆が投下されたのと同じ 「 8月9日 」 に起きた事故だけに、不吉な印象と不安を感じた方も多いのではないだろうか。
建物や、それに付随する設備というものは、必ず老朽化していくものだ。
当初、「 かぎりなく安全 」 という前提の基に設置されていたとしても、補修を怠ることによって、「 安全神話 」 は覆されることを忘れてはならない。
こういった危険は、街中に溢れる大半の建物、施設にも潜んでいる。
誰もが、その安全度に注視する原発でさえ、今回のようなことがあるのだから、一般の建築物については、さらに危険なところが多いはずである。
多くの人が集まる商業施設、ホテル、遊園地などで、火災や地震が発生した場合などの 「 設備、建物への信頼性 」 には、普段から警戒が必要だ。
特に、景気が悪くなってくると、建物の経営者が、設備の補修、営繕などに対する経費を削減する可能性もあり、ますます不安が膨らむ。
防災面での設備を取り揃えていても、「 いざという時に機能しない 」 場合は、意味がないどころか、それに依存している分だけ危険が大きい。
たとえばホテルなどに宿泊する際は、非常階段などを確認すべきだ。
それも、「 災害時の退路がどこにあるか 」 という確認ではなく、「 ホテルの備品が積まれてあったりしないか 」 という面を、チェックしたほうがよい。
利用する側が、それぞれの施設による 「 危機管理に関する意識の高さ 」 を、そういうところで見極めて評価し、心構えをしておくことが望ましい。
廊下や共用部分の電球が切れたままになって放置されていたり、故障個所が直されていない場合、補修、営繕の費用を惜しんでいる可能性がある。
利用する価格や、外観の美麗さだけに囚われず、こういった安全性、危機管理意識というものを、きちんと見抜く姿勢が必要ではないだろうか。
京阪神の古い建物では特に、「 阪神大震災 」 の影響を受けている危惧もあるので、非常扉が傾いでないか、確認したほうが無難である。
施設の警備員が緊張感を持って働いているか、経験は豊富なのか、といったことも、災害時の初動速度、以後の誘導に重要な影響をもたらす。
せっかく遊びに来たのに、緊張してばかりではツマラナイが、たとえ心の片隅にでも、「 非常時の心構え 」 を持つことが、生死の境を分ける。
この季節、特にあちこちへ出掛けられ、さまざまな施設を利用する機会も多いと思うが、少し、そういう意識も持たれておくことを勧める。
ちなみに、「 消防署による定期点検 」 以外の日は、非常階段も使えないような施設、建物というのは、想像以上に多いというのが世間の現実である。
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