Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2004年08月06日(金) アウェーの話


サッカー・アジア杯での、中国チーム応援団の姿勢が問題視されている。

応援に熱が入るのは結構だが、ちょっとマナーが悪いようだ。


日本戦になると、競技にはまるで関係のない 「 歴史的背景 」 まで持ち出し、アジア人民への謝罪要求など、意味不明な野次が飛び交う。

日本をとりまく周辺諸国には、戦後、敗戦の痛手から早々と立ち直り、経済優位国となった日本への 「 やっかみ 」 が大きい。

靖国神社の参拝問題にしても、自衛隊の派兵問題にしても、尖閣諸島などの問題にしても、なにかと 「 因縁をつけられる 」 のである。

これに対し、「 莫大なODAを投下してやってるのに 」 などと高飛車に威圧するようでは品性に欠けるし、いまさら謝罪するのも理屈に合わない。

ならば、どのような態度で臨めばよいのだろうか。


正解は、「 気にせず、無視する 」 といったところだろう。

ヘラヘラ笑いながら、「 すんませんなぁ 」 とでも答えておけばよい。

ジェラシーとは、勝ち目のない弱者が強者に対する 「 不公平感から起きる、やり場のないストレス 」 を発散するための、ささやかな権利でもある。

マナーには反するかもしれないが、せめて 「 言わせてやれ 」 というぐらいの気持ちがなければ、弱者のほうは可哀想である。

いちいち眉をとがらせ、国際問題だとか、やれ抗議だ、などと息巻いてみても、誰一人として何の得もせず、ただ疲れるだけの話ではないだろうか。


こういうのは、いまに始まった話ではないし、中国だけの問題でもない。

甲子園球場で、阪神ファンが巨人選手に野次を飛ばす姿の中にも、首都に対する地方のジェラシー的憤懣が、随所に垣間見られる。

歌舞伎演目の忠臣蔵が永く庶民に愛されてきた理由も、「 武士道 」とか、「 忠誠心 」 ではなく、「 お上に一矢をむくいる 」 爽快さにあったのだ。

人間の感情は複雑で、立場や力量の弱い者を応援し、確率的にみると低い方の 「 逆転勝ち 」 に期待する 「 判官びいき 」 という心情も潜在する。

考えてみれば、常に正しいほうや、強いほうが順当に勝つだけでは、何の醍醐味もなく、つまらない話でもある。


それに、熱狂的な阪神ファンで 「 東京モンは大嫌い 」 と言っているような人でも、実際には、口で言うほど毛嫌いしていないケースが大半である。

知人にも、「 たとえ金を積まれても、東京には行かん 」 などと豪語しているくせに、連休で 「 東京ディズニーシー 」 へ家族と出かけたりする人がいる。

きっと、アジア杯で 「 日本は侵略の歴史を直視し、アジア人民に謝罪せよ 」 なんてプラカードを掲げていた人たちも、同じようなものであろう。

商店街のくじ引きか何かで、「 4泊5日の日本旅行 」 でも引き当てたなら、喜び勇んでカメラ片手に日本へやってくるはずだ。

そして、「 役に立つトラベル日本語 」 などの本で最初に覚えるのは、「 侵略 」 とか 「 謝罪 」 ではなく、「 ありがとうございました 」 である。


ようするに、人の口から出た言葉というのは、その語気が荒ければ荒いほど、「 額面どおりに本気で受け取ってはいけない 」 ということである。

そこには、その場の雰囲気による 「 勢い 」 もあれば、演出的効果を狙った 「 パフォーマンス 」 というものも存在する。

そんなものに一喜一憂し、本気で取り合ったところで、何の意味もない。

靖国神社に参拝せず、謝罪しまくったところで、優等生がますます、その 「 優等度 」 を高くするだけのことで、劣等生からみれば面白くはない。

そういう意味では、彼らに 「 ケチをつけさせる余地 」 を与えていることが、案外と両国の関係を極端には悪くしない方策となっている面もある。


もちろん、日本人で、日本政府に悪口雑言を叩く人たちも同じである。

心のどこかで 「 日本人で良かったよな、北朝鮮だったら最悪だぜ 」 と理解しながら、「 小泉憎し 」、「 日本憎し 」 といった発言を繰り返す。

地球レベルでみれば恵まれた環境にあるのだが、同僚に出世を追い越されたとか、ちょっとした不幸や、不公平感から、愚痴ばっかりになる。

挙句の果ては、「 日本人は馬鹿だ 」 とか 「 日本人で恥ずかしい 」 などと、「 天にツバ吐く 」 ことで、ますます自分を矮小化させていくのである。

国を問わず、こういう人はどこにでもいるのだが、良識のある人にとっては 「 アウェーの話 」 だと思って、相手にしないのが一番であろう。






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