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2004年06月18日(金) プロ野球の球団を保有すること


当然、お金があるからといって、何をやっても許されるわけではない。

また、「 お金の無い人が、やってはいけないこと 」 もある。


たとえば 「 プロ野球の球団を保有すること 」 も、その一つだろう。

最近は、潤沢な資金力に モノ を言わせて、有力選手を強引にかき集める巨人軍の姿勢に批判も多いが、「 投資 の ツケ 」 はきちんと払っている。

プロ球団の経営をスポーツ振興事業と考えるか、単なる娯楽産業としてのビジネスとして捉えるかによって評価も異なるが、慈善事業ではない。

選手の補強も、設備の改修も、広報活動もすべて、オーナーの負担が許す範囲で、資金が枯渇しないように考慮され、継続されるべきものである。

それが途中で頓挫してしまうような球団は、いづれ滅びる宿命にあるのだ。


あまりプロ野球に詳しくないという人でも、プロ野球のチームを保有するためには、莫大な資金の準備が必要であることぐらい、簡単に想像がつく。

主な収入は、試合の入場料、テレビ・ラジオなどへの放映権料、球団や選手のロゴ入りグッズの販売、或いはロイヤリティ料などが考えられる。

それに対し支出として、選手やスタッフに支払う年棒、本拠球場の維持費、諸経費などを差し引くと、収支均衡か、大半の球団は赤字である。

出資している親会社が、広告宣伝や、ほかの事業への波及効果手段として考え、損失を補填しているというケースが通例となっているのだ。

球界を代表する人気球団である巨人軍も、創設以来70年という長き歴史において、最初の25年は赤字経営だったそうである。


もともと日本でプロ野球が発足したとき、読売新聞社が巨人軍を創設した経緯も、「 新聞の拡販 」 が目的だった。

その後、戦争で一時中断した時期を経て、プロ野球人気は急加速する。

敗戦による混乱の中、民衆の娯楽に対する渇望が強かったことと、野球が占領軍であるアメリカの 「 国技 」 だったことが大きな要因であろう。

新たに民主主義国家を形成しようとする占領政策上も、歌舞伎や相撲など、日本の伝統文化が廃れ、野球が発展するほうが好ましかったのだ。

高度経済成長の中、大企業はこぞってプロ野球への参加に意欲的で、チームの数も戦前に比べ倍増し、現在の 「 セ・パ 2リーグ時代 」 に発展した。


プロ野球の場合、本拠地を置く地元球団を応援する人が多く、熱烈なファンというものは、贔屓球団を長く支持する傾向が強い。

おそらく、一人あたりの 「 政党の支持率 」 よりも強固で、普遍的な側面を備えているといっても過言ではないだろう。

だから、しょっちゅう親会社が変わったり、球団名が変わったりすることは、ファンの立場からみて好ましくないし、それは人気面にも影を落とす。

多くのファンに親しまれ、愛されるチームを目指すなら、長く安定して継続する意気込みのある企業が、球団経営をすることが望ましい。

そのためにも、「 親会社が赤字 」 だったり、経営方針がころころ変わるような組織体では、たえず球団の存続にも不安がつきまとうのである。


それに、赤字企業が球団を持つなんて、「 生意気 」 ではないか。

自分の会社が冠についた球団を持ち、思い通りに選手を動かすなんてことは、野球好きの人間にとっては 「 たまらなく羨ましい話 」 である。

アメリカでは昔から、「 鉄道会社を経営すること、球団を保有すること 」 が、二大ステータスとして位置付けられている。

それは単なるビジネスの域を越え、富と成功の象徴であり、「 特別な人間 」 にしか認められない、とても誇り高き事業でもある。

今回は、近鉄とオリックスが経営不振の面で 「 合併論 」 を持ち出してきたが、負債が社会問題化しているダイエーも、資格面で適格とは言い難い。


実際問題として、この 「 合併論議 」 には先が見えない。

今のところ、パリーグを5球団にして続けるという意見と、いっそのこと戦前のように1リーグ制にするという意見で、調整を計っているという。

5球団で続ける場合は、組み合わせ上、試合のできないチームができる。

1リーグになれば、現在の 「 オールスター戦 」 や 「 日本シリーズ 」 ができなくなるので、それもまた問題がある。

また、「 客の入る巨人戦 」 に頼っているセリーグの不人気球団も、1リーグ制になれば巨人との対戦カードが減るので、経営上は不都合となる。


こんな具合で、一度引き受けた球団の経営を放棄したり、やり方を変えようとすると、プロ野球機構全体に影響が波及するのである。

今まで応援してくれたファンに対しても、期待を裏切る結果となる。

だから、「 お金があるから 」 という理由だけでプロ球団を保有させることには弊害があるし、「 お金がない 」 のは、もっと困るのである。

きちんと責任を負える財力と、将来に向けて安定した経営基盤、プロ野球に対する情熱を備えた企業でないと、球団経営の有資格者とはいえない。

経済情勢の変化も鑑み、ここらで近鉄、オリックス以外のチームも含めて、そのあたりの評価と姿勢について、見直す時期がきているように思う。


この機会に、内心では 「 そろそろ球団経営を辞めたい 」 と思っている企業を確認し、外部からも、その資質を問う作業を行うべきかもしれない。

そのうえで、入札制によって新たな経営者を選び直し、資金力を中心とした資格面で問題がなければ、経営権を委譲する措置をとってはどうか。

そうすることによって、現在の12チーム制 ( セ、パ、それぞれ6チーム ) というシステムを継続できる可能性もあるし、最善策ではないだろうか。

いづれにしても、チーム数が減るということは 「 将来のプロ野球選手 」 を目指す子供たちの夢を遮る話で、球界の未来にも悪影響が大きい。

どういう結論に達するのかわからないが、なんとも 「 嫌な話題 」 である。


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