Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2004年02月26日(木) お得を感じない問題


ふとした瞬間に、年齢を感じることがある。

それは、けして体力の衰えにかぎったことではない。


人間は急に老けるわけではなくて、無意識のうちに、日々ゆっくりと成長 ( あるいは衰退 ) をしていくものだ。

久しぶりに会った友人とか親戚の変貌には気付きやすく、その話を肴にして酒を酌み交わしたり、別の知人に報告したりもしやすい。

意外とギリギリまで気付かないのが 「 自分自身の変化 」 であって、毎朝、鏡に向かっているからこそか、ちょっと前との比較を忘れている。

外見はともかく、内面的な変化ともなればさらに気付き難く、ある日突然、「 オッサンじゃん 」 と驚いてしまうことも珍しくない。

仕方のない話ではあるけれど、それはなんとも淋しいものである。


自分の年齢を相手が 「 何歳ぐらいだと思っているか 」 ということについては、多分、女性の場合は世代を超越して、若く思われたいものだろう。

男性の場合は少し事情があって、必要以上に 「 年寄り扱い 」 されるのも嫌だが、あまり 「 若造扱い 」 されるのも不愉快なときがある。

特に若い頃は、なんとなく、相手に 「 ナメられているのではないか 」 などと勘ぐったり、それを避けるために虚勢を張ったりもしたものだ。

しかし、年齢を重ねて、「 どこからどう見たって、20代には見えぬ 」 ようになってくると、男性も概ね無条件に、若く見られたほうが嬉しくなってくる。

40歳を過ぎると、「 若造 」 とか 「 青二才 」 なんて呼ばれることはないけれど、もし呼ばれたら、きっと喜んでしまうのではないだろうか。


人間はたいてい、成長したいという願望を持っているが、老いたいと願っているような変わり者は少ないはずである。

ある程度の年齢になると、「 あの人は子供っぽいね 」 と揶揄されるよりも、「 あの人は大人だねぇ 」 と評価されるほうが、なんだか立派な気がする。

しかしながら、ルックスや感性、行動力などの面においては、いつまでも若々しいイメージを他人に与え続けたいと思うことも事実だ。

つまりは、しっかりした良識ある大人なんだけど、老け込まずに若々しく生きているなどという、かなり無理のある 「 絶妙のバランス 」 を求めている。

それは 「 大人の理想像 」 であり、永遠の憧れともいえるだろう。


本音の部分で自分は、自分自身をどう評価しているだろう。

他人と接する折には 「 いやいや、もう中年ですから 」 と笑っているが、心の中では 「 俺は実年齢よりも、ずっと若いんだ 」 といった自惚れがある。

まさか 「 爽やかな好青年 」 などと思わないが、「 オッサンの割には、若い世代とも自然に交流できる 」 ぐらいのポジションを維持したいところだ。

昔に比べると、駅の階段を駆け上がれなくなったり、すぐに腰が痛くなることも事実だけれど、若い子でも、そういう人はいるはずだ。

だから、「 目立って若い子と差がある 」 などとは自覚しておらず、逆に言い換えれば、「 若い子とは明確に異なる 」 点に気付く時、老いを感じる。


先週は強風が続き、スカートの裾を押さえて歩く女性の姿も多かった。

ちょうど、私の前を歩いていた女性が短めのフレアースカートで、風が強く吹く度に、裾が翻りそうで、ちょっとハラハラしてしまったことがある。

このとき、私は 「 ハッ 」 と、老いに対する危機感を感じてしまった。

若い頃なら、それは 「 ハラハラ 」 ではなく、「 ドキドキ 」 だったり、あるいは 「 ワクワク 」 だったのではないだろうか。

実にクダラナイ尺度かもしれないが、これは 「 若い頃との明確な違い 」 に通じる点であり、老いたる兆候といえるかもしれない。


強風に煽られ、女性のスカートがめくれ、下着が見えるような 「 不測の事態 」 について、若い健康な男性の大半は 「 幸運 」 と捉えるはずだ。

事実、私自身も以前は 「 得をした気分 」 になった覚えがあるのだが、なぜだか最近は、そういった感覚が無いのである。

もちろん、「 損をした気分 」 にもならないが、その瞬間の気分を言葉にするなら、以前は 「 ラッキー♪ 」 だったのが、現在は 「 ありゃりゃ 」 である。

たぶんこれは、性欲の衰えといったほどの問題ではなくて、「 見えないはずのもの 」 との遭遇に期待する意識の変化だろうと推察する。

性的興奮が萎えたというよりも、「 下着が見える程度の刺激 」 には慣れて鈍感になり、価値を見出せなくなってしまったというほうが相応しいだろう。


たぶん、「 パンツが見えてラッキー♪ 」 と思う人がスケベで、そうではない人が真面目という論理にはならないし、精力の違いにもつながらない。

女性の下着を観て異様に興奮するのもどうかと思うが、「 下着なんて見飽きたから、さっさと脱いじゃえ 」 という男性も考えものであろう。

思えば我々の若い頃は、アダルトビデオも無ければ、ヘアヌードも無くて、異性に対する情報量に関しては、圧倒的に不足した時代であった。

同年輩の男性なら共感されると思うが、国語辞典の 「 陰 」 で始まる語句を見つけては、密かに興奮した記憶さえある。

そんな 「 若造 」 が、パンツとの遭遇を喜べなくなることは大異変であって、老いの兆候としては 「 かつてないほどの大問題 」 なのかもしれない。


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