2004年01月12日(月) |
日本で暮らすことの収支 |
「 したがって、貧しさというのは比較の問題だった。 尺度は自在だから、
自分より金持ちの尺度で測れば、いつも貧しかったのである 」
: マーガレット・ドラブル ( イギリスの作家 )
Poverty, therefore, was comparative. One measured it by a sliding scale. One was always poor, in terms of those who were richer.
: MARGARET DRABBLE
徐々に景気は回復しつつあるというが、さほど内需は伸びていないようだ。
年金や保険制度の将来が不透明で、消費者の不安は払拭されていない。
靖国参拝やらイラクへの派兵に関心が集まっても、それは一時的な話題であって、国民生活にとって最も重要なポイントは、やはり経済政策である。
これだけの超低金利にあっても、産業が活発化しないというのは未曾有の事態であり、なにか別の切り口を準備しなければ、改善の気配もない。
マクロ経済的な視点で語れば、株価が一定水準に持ち直したことや、一部産業の貿易収支からみて 「 回復基調 」 ともいえるが、実際はどうだろう。
政府として、すべてを救済する義務もないし、過去のような 「 護送船団 」 ではなく、実力主義、個人生産主義への転換に異論もない。
ただ現状の方策は、資金力のない若年層が経営の場面で実力を発揮する舞台が整っておらず、これを 「 実力主義 」 と評価するには問題が多い。
数年前からだと思うが、「 勝ち組、負け組 」 という言葉が一般化してきた。
私はこの言葉が嫌いで、あまり使うことはないのだが、しきりに使いたがる人もいるので、最近のビジネス用語として認めざるをえないようだ。
なぜ、この言葉が嫌いかというと、それは 「 結果論 」 を語るときに用いる人が圧倒的に多いことと、現象面での評価に留まる人が多いせいだろう。
数ヶ月前に人事面接を行った際、私が志望動機を尋ねたところ、「 貴社は勝ち組だと思うので・・・ 」 などという、意味不明な回答をする者がいた。
彼が言うには、人生には勝ち組と負け組があって、自分が勝ち組になりたかったら、勝ち組の組織に入らなければならないのだそうである。
その場で熱く議論を交わすほど、さして期待に値するほどの人物とも思えなかったので、「 はぁ、そうですか 」 と適当に答え、不採用の扱いにした。
たしかに世の中には勝者と敗者があったり、成功する者、失敗する者がいるのは事実だが、それは 「 他人が決めることではない 」 ようにも思う。
たとえば、出世して大金を手に入れても、大病を患って苦しみ続ける人もいるだろうし、家庭の不和に悩んだりしている人もいるだろう。
逆に、わずかな収入しかないようでも、心身が健康で、家族仲良く、毎日を明るく楽しく過ごしている人もいるはずだ。
ビジネスや所得に限定しても、勝ち組と呼ばれる企業に属する人がすべて勝ち組とは限らないし、逆の組織にも、勝者が存在する可能性はある。
陽は沈み、陽はまた昇る。
私の生きた数十年の間にも、かつては優良企業と呼ばれた会社が破綻し、日本の花形産業と思われた業界が、衰退の憂き目に遭ったりしている。
景気の良い企業に属したからといって将来が安泰ではなく、誰も我が身の未来を保証してくれるものではない。
偏差値の高い学校に入学したり、有望な企業に配属されることは、長い旅の初めの一区間を、徒歩で進むか、タクシーに乗るかぐらいの差である。
人生の目的をハッキリと見定め、結果論としての勝ち負けを語らず、日々、明日の戦いに勝つことを考え続けないと、どこにいても成功はしない。
幸せはお金では買えないし、それが最も重要なものではない。
ただ、やっぱりお金がないと苦労するし、お金が最も重要ではないと理解していながら、お金のために、生き方を変える必要も生じてくるものだ。
そのためにも、お金を上手に稼ぎ、上手に使う訓練を、若い頃から身につけることが望ましいと思う。
今日は新成人を祝う日にあたるが、私は若い人や、友人の子供などには、普段から外国語の収得を口酸っぱく説いている。
それは、就職に有利とかいう些細な観点ではなく、海外でも暮らせるという広い選択肢を武装する意味もあり、さらに今後は重要な点となるだろう。
老後というものを考えたとき、いくらの資産があれば安心だろうか。
私は、自分が60歳になったときに、2億円の資産があれば、比較的にお金の心配をせず、余生をおくれるのではないかと試算している。
実際には、そこまでの金額を貯めることは困難を伴うが、それは 「 日本に住み続ける 」 という前提での試算であり、国によっては状況が異なる。
こんなにお金がかかる国で、どんどん税金や保険料を徴収されたのでは、いくらも資産が増やせないうちに老後を迎えなければならない。
それを思うと、終生、日本に住み続けることの難しさ、不安というものを感じるので、今後は海外移住を視野に入れる人も増えるような気がする。
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