「 それは一人の人間にとっては小さな一歩であるが、人類にとっては
偉大なる跳躍である 」
: ニール・アームストロング ( 宇宙飛行士 )
That's one small step for a man, one giant leap for mankind.
: NEIL ARMSTORONG
アメリカは、スペース・シャトルに代わる新たな宇宙開発構想に着手する。
現在のシャトルは、4〜5年の内に退役となる見通しだ。
新しいシステムは、「 乗員探査ビークル 」 ( CEV ) と呼ばれ、宇宙飛行士や機材を宇宙ステーションに運んだり、月面着陸ができるようにする。
将来的には、火星へ向けての有人飛行に利用される予定で、アポロ計画の21世紀版として、宇宙開発の未来を担うプロジェクトになりそうだ。
アポロからスペース・シャトルへと続く道のりで、アメリカの宇宙開発は多くの人的被害を生み出しており、現在の技術に至る犠牲を払ってきた。
特にスペース・シャトルでは、二度の惨事が衆人の見守る中で起きたことも記憶に新しく、それぞれに衝撃的な出来事であった。
その経験を活かし、人類の未来にとって明るい平和的な宇宙開発を、安全面にも留意しながら行ってほしいと願うものである。
冷戦時代に競い合った米ソの宇宙開発は、必ずしも 「 人類全体の未来 」 を意識したものではなく、それぞれの国家による思惑が大きかった。
先に人工衛星の打ち上げに成功したのはソ連で、生物衛星、有人衛星など、特に衛星に関するプロジェクトでは、常にソ連が先んじて成功した。
人工衛星と 「 ICBM ( 大陸間弾道弾 ) 」 を併用することにより、核弾頭を直接、相手国に打ち込むことができる。
その脅威は当然、アメリカを震え上がらせ、対抗する開発も過熱した。
月面を制覇したことは軍事目的と異なるだろうが、どちらの開発が進んでいるのか、世界へ向けてのパフォーマンスとしては、かなりの成果があった。
冒頭に挙げたアームストロング船長の言葉は、歴史に残る名言である。
ただし、当時の様子から考えると、それは 「 人類にとって 」 というよりも、「 アメリカにとって 」 偉大な一歩であったのかもしれない。
もしも、アメリカが多額の費用を投じてアポロ計画を推進していなかったら、東西の勢力バランスや、その後の世界は違っていた可能性もある。
昨年の10月、中国が有人ロケットの打ち上げに成功したが、宇宙開発には軍事的な効用も考えられるので、そこに脅威がないとも言い切れない。
日本は、技術面で各国の宇宙開発に多大な貢献をしたが、国内での開発に投じる予算が圧倒的に低いこともあり、国家事業としては遅れている。
冷戦が終わり、アメリカは仮想敵国の影に怯えることなく、むしろ、ロシアと協調するスタイルで、以前よりも効率的な宇宙開発に取り組める。
今後は、お互いの技術や資産を分かち合い、文字どおり 「 人類にとって 」 意義のある開発や研究を、連携して行える土壌ができつつあるのだ。
数々の団体が行った調査では、地球の資源というものには限りがあって、いづれは消費し尽くしてしまうだろうという報告がなされている。
宇宙をくまなく探索したからといって、我々の子孫に役立つ資源や、生活に適した土地が見つかるとは限らないが、それも一つの投資といえるだろう。
それに、我々が子供の頃、月面着陸をわくわくしながら眺めたように、宇宙開発というものには 「 未来への夢 」 があり、ロマンに満ち溢れている。
先ほども述べたが、日本の宇宙開発への投資は僅かで、国家予算に占める割合からみても、先進国として十分な責任を果たしているとはいえない。
宇宙開発には、科学、文化、通信、軍事、資源調査など広範な目的があると思われるが、日本の場合は 「 経済的収支 」 に拘りすぎているようだ。
単に経済的視点から判断すると、高い経済的効果を挙げているけれども、直近のビジネスだけで評価を下すのは、将来的に問題があると思う。
あらゆる資源を輸入に頼る 「 脆弱な国家 」 であればこそ、国際協力なども含め、もっと積極的に開発を進めるべき分野のような気がする。
財政難であることも十分に理解できるが、子供たちに夢と目標を与え、学術研究の向上や、高質なスキルの養成など、プラス面も多いはずである。
ちなみに、アポロ11号が月面着陸に成功した瞬間、両親を含め日本中は大騒ぎしてテレビに釘付けだったが、私はさほど関心を示さなかった。
白黒テレビに映る月面の画像はお世辞にも 「 鮮明 」 とは言えなかったし、説明がなければ何の映像かさえも判別し難かったのである。
それに、男子小学生の集中力は、何時間も持続できるものではない。
興味を持ったのは、帰還後、鮮明な写真やスライドが見れ、母船や着陸船のプラモデルが発売された頃で、じっくり観たのは再放送の記憶である。
それでも、「 子供の頃にあったビッグイベント 」 として、東京オリンピック、月面着陸、大阪万博の三つは、強く印象に焼きついて離れない。
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