Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2004年01月13日(火) 騒動好きな連中


「 この世には、成功が近づいたときと同じく、災難や破滅が近づいても

 毅然として歓喜に酔える人がいる 」

                 : ウインストン・チャーチル ( イギリスの首相 )

There are men in the world who derive as stern an exaltation from the proximity of disaster and ruin, as others from success.

                           : WINSTON CHURCHIL



この言葉には二つの解釈があるようで、どちらが正解ともいえない。

一つは 「 ポジティブな意味 」 で、もう一つは 「 狂気 」 を指す。


たとえば交通事故に遭って骨折したとき、それは周囲から見れば災難なのだが、平然と 「 死ななくて幸運だった 」 と笑っている人がいる。

まわりの心配をよそに、「 こんなことでもなければ、のんびりできないしね 」 などと、以前から興味を持っていた本を読み、落ち込む素振りもない。

怪我や、その他の損害について、もちろん痛みは感じているのだけれど、それを被害なんて言葉で憂いてみても、あまり得をする話ではない。

やせ我慢と言う人もいるだろうが、家族や見舞い客が心配しすぎないように、気骨をもって配慮する余裕がある人は、なかなか恰好良いものだ。

不幸をひけらかして同情を買うような人より、たとえ悪い結果であっても真正面から受け止め、「 だったらどうするか 」 を考える人のほうが頼もしい。


そういう 「 ポジティブな人 」 とは対極に、たとえば社会の混乱を、野次馬的に期待している連中がいる。

個人のサイトを見回しても、日本人でありながら、「 日本なんぞ滅びろ 」 とか、「 日本人は馬鹿だ 」 などと罵ることを 「 芸風 」 にする者も多い。

こういう連中は、たとえば自衛隊のイラク派遣などについても、熱っぽく反対意見を語りつつ、実は人的被害が出ることを期待しているように見える。

アクシデントに見舞われた途端、嬉々として 「 それみたことか 」 とまくしたてる様子には、同意見でも良識ある人から見れば、不快の極みであろう。

逆境にあってこそ、他人を叱責したり、批難することよりも、よりよい未来への可能性について、前向きに考える姿勢が望ましい。


このところ、成人式で騒動を起こす連中がいる。

彼らの中には、目立ちたいとか、かまって欲しいといった子供じみた心理が多く含まれているように思うが、さほど大それた悪意はない。

むしろ、トピックスを報道しようと待ち構えているマスコミや、ひそかに期待して見守っている周囲の輩に、なんともいえない嫌悪を感じる。

厳粛で、思い出深い成人式を構築したいと望んでいるのは、一部の真面目な実行委員と、新成人を子に持つ親御さんぐらいではないだろうか。

愚かな大人、賢ぶった 「 狂人 」 が多い世の中が、若者の歩を誤らせており、その背後には良識を失いつつあるマスコミの影響が大きいと思う。


一口に騒動を起こすといっても、いろいろなパターンがある。

酒を飲んで暴れたり、街中で暴走行為を繰り広げるばかりではなく、十分に意図が察せられる 「 反逆 」 も、今回の式典にはあったようだ。

とある会場の成人式では、国会議員、県議、市議、市幹部などが順繰りに挨拶し、それだけで約50分の時間が費やされたという。

そのあとで登場した新成人の代表は、予め用意していた挨拶をとりやめ、「 これでは、成人式の主旨が伝わってこない 」 と、反旗を翻した。

本来なら、新成人が社会で生きるために自立し、励ます会にしようということなのに、議員らによる 「 選挙目当ての集まり 」 に抗議したかったそうだ。


彼は式典の実施主体である企画実施委員会の委員で、関係者によると 「 熱心に活動していた 」 らしく、普段は真面目な好青年だという。

騒動を起こした責任は避けられないし、その後、当然のごとく長々と説教を受けたそうだが、彼の気持ちはわからないでもない。

たしかに、町内主催の運動会やら、友達の披露宴などに、議員が現れては 「 式典にかこつけた選挙運動 」 を展開するのは、よくある話だ。

その度に大半の聴衆は、「 うざいなぁ、早く終れよ 」 と内心は思っているのだけれど、式典に 「 ハクがつく 」 し、そこは我慢のしどころなのだ。

主張の方法が悪くて騒動になった点には非があるが、本来の主旨から逸れても 「 長いものに巻かれるのが大人 」 という認識も、けして正しくはない。


また、別の式場では、携帯電話を使ったイベントが行われたという。

これは、さんざん注意しても携帯電話の使用を止めない新成人に対して、それならば、逆に携帯を使ったプレゼント企画をしようという趣旨である。

予め聞いておいた電話番号を抽選し、いろいろな景品がもらえる。

なかなか面白いアイディアで、抽選会の前後は、たしかに携帯電話でメールをする者や、会話をする者は激減したのだという。

電話を 「 かけさせない 」 のではなく、自発的に 「 かけないようにする 」 という点には知恵が感じられる企画で、ちょっと唸る話だ。


せいぜい二時間かそこらの式典を、大人しく座っていられないということに問題は感じるが、不要なトラブルなら、事前に避けるほうが望ましい。

無理に新成人へ 「 大人のルール 」 なんぞ押し付けなくても、彼らが社会へ出て、たとえば企業に就職したりすれば、いづれは体験もするだろう。

やみくもに、「 こうしなさい 」、「 こうあるべき 」 などと教訓めいた話をするよりも、真に彼らのことを思えば、別の方策もあるような気がする。

どうも、何十人、何百人に一人は 「 騒動を起こすだろう 」 という前提において、議員は演説し、マスコミは煽っているように感じる。

騒動を云々するよりも、前途ある若者にとって有益で、満足度の高い式典を実施することを考えるほうが、「 大人の務め 」 ではないだろうか。






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