「 外国旅行をするには、その前に自分の国のことも多少は、
知っておかなければならない 」
: ローレンス・スターン ( イギリスの小説家 )
A man should know something of his own country, too, before he goes abroad.
: LAURENCE STEME
お正月休みを利用して、海外旅行に出かけている方も多いだろう。
それぞれの国の歴史や文化を体感することは、視野を広げるのに役立つ。
昔に比べると手軽に海外へ行けるようになり、最近では海外旅行に行ったことのない人のほうが珍しいくらいである。
米ソ冷戦時代には、アメリカへの渡航歴が多い人間がソ連に行くビザを取れなかったり、航空運賃などの経済的要因以外にも不自由が多かった。
日本と国交の無い国などは別として、今は、たいていの国へは行ける。
その大半が、日本よりも治安が悪かったり、言葉が通じ難いなどの不安があるので心配する方も多いが、そんな理由で行かないのも悔いが残る。
せっかく、この世に生を受けたのなら、狭い日本に留まらずに、可能な限り世界中を見て回りたいと思うのも、私だけではないだろう。
日本人に人気の観光地などについては、多数のガイドブックも出ている。
海外で日本人観光客に遭うと、たいていは、その手の本を携帯している。
史跡などで隣り合わせた日本人と話したりするとき、特に若い人の場合に、その土地の情報に詳しくても、意外と日本の知識に疎いことが多い。
たとえば、エリザベス朝時代と聞いて、それが関ヶ原の頃だということがピンとくる人などが少ないのである。
外国へ出かけるときにも、日本史や日本文化の知識を携えて行って、互いに比較しながら見聞きするほうが、より勉強になるのではないかと思う。
首相が元旦早々に、靖国神社を参拝した。
ただの初詣ではあるが、靖国神社に関しては、特に一部近隣諸国の関心が高いので、首相が参拝したことがニュースになる。
この靖国神社については、あまりに外野がうるさいせいか、日本人の中でも正確な知識を有している人が少ない。
意図的かどうかは別として、日本に反撥する諸外国の宣伝や、悪評を鵜呑みに盲信している人も多く、かなり長い間、誤った知識が横行している。
あるいは、隙有れば政府の批難でもしたいというヒネクレ者が、事実を湾曲して騒ぎ立てるという 「 非国民的 」 な言論も目立つ。
靖国神社に関して、「 太平洋戦争での戦死者を奉っている 」 という説は、たしかに間違いではないけれども、それだけでは説明が不十分だ。
明治二年に、戊辰戦争の戦死者を奉るために建立されたもので、以来は、国内の戦争というものが無かったので、海外との戦死者を奉ってきた。
だから、諸外国のいう 「 A級戦犯を奉っている 」 との認識も、間違いだとはいえないのだが、かなり部分的に誇張した表現なのである。
他の神社と同様に 「 御祭神 」 というものがあるけれど、靖国神社だけは、たまたまそのような事情から、二百四十六万余の御祭神を有している。
御祭神の数が飛躍的に多いということを除けば、他の神社と変わりない。
だいたいどの国の宗教でも、死者に対する畏敬の念は共通している。
いかなる理由があれど、先祖を供養したり、神仏に参ることを妨げることは、野蛮で下劣で、なにより 「 バチ当たり 」 な行為である。
国家元首だからとか、終戦記念日だからとか、元旦だからというようなことが論点になるのもナンセンスで、内政干渉以前の問題だといえる。
誰が、いつ、どんな理由でお参りしようが、信仰の自由である。
そんなことに敏感に反応する諸国もオカシイが、靖国神社の基礎知識も知らないで是非を云々する日本人の多いことには、毎年、辟易してしまう。
信仰は自由なので、他人に靖国参拝を強要するつもりなどない。
しかし、先祖を敬い、死者を弔う気持ちは大切にすべきと思う。
特に日本には古くから 「 祖霊信仰 」 という習慣があり、先祖を大切に敬うことで、子々孫々が繁栄するのだという意識が根強い。
科学的な根拠を求められると根も葉もない話なのだが、それが美徳として浸透していることも事実で、情緒的な習慣は認めざるを得ないのである。
だから、わざわざ原宿まで参拝に行かなくてもよいが、他人の参拝を邪魔するようなことは、けしてしないほうがよいように思う。
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