覆面感想、続けてまいります。
全部感想書き終わったら「夏祭り」の感想を書いて、そしてまた推理に戻ってこようかという予定。
でも、このぶんだと推理は実質一週間位になりそう。
解けるのか? 探偵できるのか? と疑問に思いつつ、個人的に書きやすかったGブロックの感想です。
そこそこ短め。相変わらず個人的主観です。
(※注は読後感に注意の略)
G01 柵の向こう側へ
起承転結がしっかりしていて、流暢な文章。村の風景やレクスの表現、旅芸人たちの描写が「上手いなぁ」とひたすら感心。脳内ワールド全開です。最後までエヴァがどうなってしまうのか、ハラハラドキドキでした。
その後エヴァは笛吹きの少年と旅に出たのでしょうか? 続きがすごく気になる……
私的にはすっごい好みの文章でした。作者さんが誰なのか気になります。
G02 ノストラダムスによろしく
淡々としているのに、言葉の端に柔らかさを感じる文章。「ノストラダムスの大予言」というからSF? と探りつつ、実際はほのぼのラブなお話でした。主人公が等身大で可愛いです。好きなのになかなか伝えられない、いじらしさがいい。やっぱり世界の終わりは大切な人が側にいてくれるのが最高ですね。
それにしても「恐怖の大王」とは何だったのでしょう。二十世紀最大の謎です。
G03 ――み・ち―― ※注
背景に「神田川」そして「南こうせつ」と連想したのは私だけじゃないはず(笑)注意書きの通り、すごく生々しい。小学生視点から見れば、窓から見えるお姉さんの姿はかなりの衝撃ではないでしょうか。どっきどきでした。
人間の奥深い部分というか、人間としての本能と欲を淡々と語りつつも、寂しい。孤独ゆえの淋しさがびしびし伝わってきます。
ここまでつっこんで書けるひとは早々いないと思う。作者にただただ敬服です。
G04 道端の石 ※注
「あなたは道端の石じゃないんだから」
ここでうっかり泣きそうになった。ずるいよこの台詞。注意表示全開だったのに、これ出しちゃったら彼ら暗殺者を全否定できなくなってしまうではないかっ。最後のオチも抜かりないというか。これもある意味ハッピーエンドと取っていいのかもしれない。
殺しに鈍感になってくる主人公や少女が怖いなぁ、と思いつつ。それでも憎めなかったのは現代社会のひずみと重なってしまったからでしょうか。このあと二人がどうなったか、すごく気になります。
G05 素晴らしきベタな日
ベタ研王道すぎるよ。べったベタだよ。部活動の内容聞いて吹き出しました。前二作のダークさが一気に吹き飛んだ! 「部長、死亡フラグ立ててる場合じゃないし。つうか、うしろうしろ〜!」 とまぁ、ツッコミ満載の楽しいお話でした。
私もベタな展開書いてしまう時があって、「やっちまったか」な思いがあったりですが王道は普通・普遍性なんですね。恥じることはないんですね(笑)部長、貴方を師匠と呼ばせて下さい、とはいきませんが。すっごい面白かったです。
G06 深紅の森
欲のないもの、見返りを求めないものに対して真実の道は開けるということでしょうか? さらっと読んだにも関わらず、そのへんが重く突き刺さりました。欲のある自分はきっと迷ってのたれ死にしそうだ……この森。
そして等価交換というのも印象深いです。そうだよね。何かの犠牲なしには成功は得られない。昔どこで聞いたのかは忘れましたが「自分の幸せだけを願う人より万人の幸せを願う人の方が欲が深い」という言葉をふと思い出してしまいました。それを考えると、主人公はとてもまっすぐで、正直なのかもしれませんね。
G07 父へ
やばい。最後でじんわりきてしまった。まさかこのブロックで二回もやられるとは……
登場人物それぞれが優しくて温かいです。物語の中盤、手紙の返事を書けないけどホームページこっそりのぞいてるお父さんのすがたを想像して微笑ましくなってしまいました。それにしても主人公はなぜお父さんの姿を思い出せないのだろうか? 住んでいた家のウッドデッキや庭は繊細に覚えているのに……そこにじれじれしつつ。ピンポンダッシュに笑い。でもって最後そうくるかぁ。
この直後はきっと、お互いが呆けた顔をしてるんでしょうね。とても素敵な話でした。
G08 かつて歩いた道
田舎出身の自分としては、物語の風景がすっと入ってきて心満たされました。「あれ? こんなだったっけ」という疑問に「そうそう」と頷いてしまったりして。そして作者さんは感傷的な描写を書くのがとても上手いひとなのかな、と思ってみたりしました。
娘さんいい子だなぁ。きっとお母さんのことがとても好きなんでしょうね。主人公が昔、母と歩いた道をたどりながら、母の人生を顧みながらの文章は穏やかでありながら切ないものを感じました。お母さん、ちゃんと生きてますよね? その後会えたんですよね?
読後というか、その先がとても気になる作品でした。
G09 畦道の少年
コンビニの近くに田んぼ――田舎連投かしら? と思いつつ。
最初の描写にカブトエビだと気づくのが遅かった自分です。今じゃ貴重ですよ。田んぼの青青とした風景や、それに戯れる少年たちの姿が無邪気というか、爽やかな印象でした。ちょっとした生物マメ知識にもなって、読んでいる人は得をした気分になりますね。少年たちの思い出は友情とともにこれからも色あせないんだろうな。
とても清々しい作品でした。
G10 草いきれの道
冒頭少し読んで戦争の色を感じ、いったん時間を置いてから読むことに。私も戦争の話を書いたことがあったので、その系統に関してはじっくり腰をすえて読みたい人だったりします。
この話は戦地に向かった人の体験談を聞いているような錯覚を覚えました。正直身につまされます。当時、戦争に敗れた人たちの選択肢は「留まるか、行くか」あるいは「逝くか」なんだったと思います。実際、放送のあとで米軍に特攻した方もいたわけですし。それを思うと主人公の持病を気遣い進言した中隊長さんは漢気あって素晴らしい。その優しさが心にしみて仕方ないです。
なので消息が主人公以上に私気になってます。長生きしてるといいな。
G11 旅は道連れ世はソーダ味
アイスを求めて三千里、とまではいきませんが海までの一人旅、子供にとっては冒険です。スリルでしょう。
嘘をつくことに罪悪感を感じつつ、いそいそ電車に乗っていく姿が微笑ましい。周りの人たちにもすごく恵まれてるのがいいですね。金髪のお姉ちゃんも優しいしスーツのお兄さんもいい人だし。おじいちゃんは和ませというより(本気で)ボケてましたね。わずかに残っていた昔の記憶はちょっと切なかったです。主人公はきっと今度の休みにお母さんとソーダ味を楽しむんだろうな。
夏休みの日記に書きたくなるような、ほのぼのとした気持ちになる作品でした。
G12 エバーグリーン
途中まで読んで、これはファンタジーなのか? それともホラーなのか? と自問自答。森の中にある木に埋もれた祠のシーンで「ニセモノの神を本物の神は許さなかったの」という言葉がとても印象的。石段を一歩づつ登り(物語の論理としては下ってるのか?)見える神秘の世界は独特で「うわぁ」とただため息ばかりでした。
この世界の構造を描く作者さんの頭の中が見てみたい。ウタさんの哲学的な台詞がまたいい刺激になっているというか。独特の語り口が確立しております。
読了してもなお、足元がまだ浮ついているというか。とても不思議なお話でした。