ちょっと迷ったのですが、感想レス数が比較的少ないFブロックに挑戦。
そこそこ短め。相変わらず個人的主観です。
(※注は読後感に注意の略)
F01 より道
うわああっ。どっちも可愛いよ。じれじれだよ。ワンコな後輩くんがすごくいい。読み進めるうちに高村くんが男の顔になってくのが素敵です。最後は宣戦布告だよね。やけに自信ないけど、相手をくらっとさせるには十分すぎるくらい。
主人公の必死に抑えてる気持ちがもうたまらないです。カップルになったその後も見てみたい〜
F02 ばみゅーだ☆とらいあんぐる
何だろう。主人公たちの言動が小学生にしか……と思ったら中学一年生だったんですね。青春への入口手前って雰囲気が会話の端々に表れてます。まだ恋とかについてカッコつけちゃうような、そんなお年頃というか。中盤のスーツの人たちとか、魔法少女への展開がぶっとんでてびっくりです。すごおく昔にやってた実写版魔法少女がふっと浮かびました。
奇抜な展開でしたが、まぁ、最後はラブラブそうだから大丈夫でしょう。なかなか濃い〜作品でした。
F03 魂に著作権はない ※注
怖っ! クローンが怖いと初めて思いました。そりゃ感情は分裂するのか全くの別個になるのかは気になっているけど……著作権つけたら価値もへったくれもありませんね。
クローンについての法律やバディの存在が物語の中に上手く説明されています。でも、双子ならともかく、自分の知らない所で同じ姿作られてたら怖いなぁ。オチも深く考えれば非常に怖いです。というか怖いとしか言いようがない。
これはもう作者さんの設定勝ちです。SFなのにすごくホラーな作品でした。
F04 境界線上の魔王
おとぎ話っぽさを残す重厚な文章だなぁ、なんて思ってたら例の「おっちゃん」にべらぼう吹きました。やられたーっ!
人から人へと伝わる話には尾ひれがつくとはこういうこと。詩人さんいい商売してますねえ。というか、帰ってこなかった人ってそういうことだったのか。前半の語り口を鵜呑みにしていた私はてっきり黄泉の世界へと連れていかれたのかと思ってしまいました。
でもま、街が豊かになるのは悪くない。あとはおっちゃんが健康であることを祈るばかりです(笑)
F05 宙の道しるべ
うわ。ちょっとうるっとしそうになった。これはロイディの想いが報われたってことでいいんですよね?
場面ごとに視点がくるくると変わるものの、冷凍睡眠に入ることで七年の差が出てしまうことに不安を感じるロイディ少年はいじらしいし、それをなだめるヒルディアはお姉さんって感じを出しつつも、やっぱり女のこというか……お別れのシーンにぐっときてしまいましたよ。
やるせない思いを残しつつも、ヒルディアの優しさが心にじんじんときてしまう。SFであるんだけどとても切ない、優しい物語でした。
F06 落とし物
無類の猫好きにはもうたまらない。チャロと博士、一度でいいからモフらせて〜(笑)そしてこれを書く人も猫飼いか猫好きな人なんだと思います。したたかに人間の行動を観察しながらも、さりげなくツッコミを入れるチャロがいい味出してますね。博士とはそういうことなのかっ、とオチにはっとしつつ。彼の記憶を拾いに行こうとするチャロの姿が思い浮かんでしまいました。
可愛いよ〜猫。「やっぱり猫が好きだぁ」と自覚した一作でした。
F07 偽りだらけの道筋 ※注
まるで西部劇か海外ドラマを見ているような展開。台詞も心情もアメリカンで、読んでいくうちにテンションが上がってきました。マディは本当強い女性だなと思います。こういった修羅場は女性の方が逞しいというか。ジョニーとマディの背後に暗い影はあるものの、それを吹き飛ばすような掛け合いが面白い。そして決闘の結果は読めませんでした。
それぞれの思いに決着をつけつつも、結局看板はそのままなんだな、ということで。
F08 からたちの歌
中盤から何か来るなぁとは思ったのですが……これはホラーと取っていいんでしょうね。誰かが「逝っちゃって」いるんだろうかな、という想像はすぐに立ったんですが、いったい誰だ? で頭ぐるぐる。有力はコウスケだけど主人公も捨てがたい。いやいや、もうひとりの「彼女」なのか? そのへんがものすごく気になります。
そして輪唱とカノンの違いについて、私はてっきり同じものだと思っていたので目から鱗。やっぱり結末は無限ループってことですよね?
読み終えて、ちょっと背筋が寒くなりました。
F09 シーキング☆ザ・プリンセス
のっけから「設定省いてどうする〜!」と言いたくなった昔話。投げやりな口ぶりの語り手にツッコミ満載です。姫への辛口コメントが筋が通っているというか、清々しいくらいですね。途中から語り部の腰が低くなったのはやっぱりそういうわけか〜、と思ったら更なるどんでん返し。え? そうなの? でも顔はどんどん緩んでしまうという。
終始笑いに全力投球、にまにまできる話でした。
F10 ひとつの道からはじまる
「私」は少女と出会えたことで沈みかけていた道を、光を失わずにすんだ、ということでしょうか? 読んでいる最中はそれぞれが親を失った背景をやたら深読みしていた私。少女の方はお母さんが殺されちゃったというのは分かったのですが、では「私」は? 本当に熊さんの仕業かな、と変に疑ってしまいました。
でも、子供って大人の表情をしっかり読んでいるというか、気づいていますよね。無垢な眼差しが私にはまぶしすぎます。未来を感じさせるお話でした。
F11 あわい物語
内容はあわいどころか真っ黒では?(笑)容赦なく事実を突きつける様子が心にずきずききます。読んだあとは死神さん御苦労さまです、と言いたくなりました。悪事に大小はあっても罪は罪ということですね。
忘れていても何らかの形をもって返ってくるのかと、こっそり思ってしまった私です。
それでも義希くん生還してよかったですね。とても考えさせられる作品でした。
F12 誰そ彼は
タイトルの語源になるほど、と思いました。赤い空を背景に首をかしげている主人公の姿がぼおっと浮かんできます。
冒頭の回想について先生に批難しつつ、でもそれが主人公にとってはより空を赤く彩るきっかけになってちょっと安心……って、え? そうくるんですか? 最後にまたしてやられました。前回でホラーはもう終わったと思ったのに。
感傷をもちつつも情緒が残るお話でした。