きみだけいれば。


逢いに行ってきちゃった。
どうしても居てもたってもいられなくて。
今この瞬間、伝えなくちゃいけない言葉があるから。
あの人に言っておきたかった。

「大丈夫。あたしはきみの言葉しか信じない。
 心ない人の言うことなんて信じたりしないよ。」

もしかしたら傷ついてるんじゃないかと思った。
あの時あたしに言ったことが本心なら、
彼はどんなにひどく傷ついているだろうって。

あたし、ひとりで心臓が弾けちゃいそうだったの。
手先が冷たくなって唇がカタカタ震えた。
おかしいよね。中学生の初恋でもないくせに。
でもあたしが彼に逢うことはそんなにも神聖なこと。
なにものにも染まらない、ただひとつのことだったんだ。


愛しいなぁ、きみが。


真顔も、照れたように笑う顔も、頭のてっぺんからつま先まで
彼の吐く息が絡まる、そのまわりの空気でさえも愛しかった。

自分じゃない人間を、
どうしてこんなにも愛しいと思えるのかな。不思議。


逢った後はそそくさと逃げるようにその場を離れて。
ひとりでいたくなくて、幼馴染の家に押しかけちゃった。
彼の名前も、あたしの中の彼の存在も知らない友達。
なにも話さないで崩れずにいられるのが心地良かった。

そう。それでさっきお家に帰ってきたんだけれど。
彼がねほんのひとことだけくれたんだ。

「ありがとう」

もう、これだけでいいや。
彼にとってはたったひとりのための言葉じゃなくても
それでも今のあたしには十分だよ。
きっと、あたしの言葉の意味を解ってくれたんだと思うから。

強くなったんだね。きっと。

自身に満ち溢れた彼を見て、良かったなぁと思う。
強い彼があたしを必要とする可能性なんて微塵もないけれど、
それでも、あたしは彼が幸せでいてくれたらいいなぁと思うんだ。
2004年11月27日(土)

魔法がとけるまで。 / ちぃ。

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