新知庵亭日乗
荷風翁に倣い日々の想いを正直に・・・

2003年04月05日(土) 米英対イラク戦争の図式


 ハーバード大学の入江昭教授(歴史学)が25日付の日経新聞にユニークな論稿を寄せられていますので、ポイントを紹介したいと思います。
イラク戦争は「新しい戦争」であり「対テロ戦争」であるとのプロパガンダの下、ブッシュ政権には、世界が二度の大戦の反省から築き上げてきた国際規範を軽視する傾向があるように思われます。
第1次大戦も、1914年、オーストリアの皇太子の暗殺という「テロ」を引き金に、オーストリアがテロリストをかばう小国セルビアに調査団を派遣しようとし、セルビアが拒否したことを口実に、大国側が宣戦布告したのです。


サラェボに入る大公夫妻

 
 イラク戦争は、単なる「新しい戦争」ではなく、第一次世界大戦と類似している、と指摘しています。すなわち、1)覇権を巡る争い=パワーポリティクスの存在、2)軍備の拡張、3)愛国心にアピールする内政上の必要、4)経済活動のグローバル化(に逆行するにも関わらず開戦)、5)帝国主義の存在、6)ナショナリズムの高揚、の6つです。

もう少し具体例を引けば、第1次大戦も、1914年、オーストリアの皇太子の暗殺という「テロ」を引き金に、オーストリアがテロリストをかばう小国セルビアに調査団を派遣しようとし、セルビアが拒否したことを口実に、大国側が宣戦布告したのです。こうした歴史認識から、教授は、「現代の戦争が世界大戦にならないとは限らない」、と警告する一方、第一次世界大戦時代との違いは、組織化され世界規模で連帯する、国際世論の力強さであるとし、「六十億人の形成する国際世論」こそ歴史を創る力であると、一人ひとりの人間への期待を表明されています。

 だから今後考えられるのは、米国一国支配構図なのか、国連主体のイラク戦後構築の選択だと思います。
 石油の利権争いもありますが、太平洋戦争の敗戦国ドイツ・日本を民主国家にしたというアメリカの自負は、例えて言えば過去の亡霊の言葉に従って、そのノスタルジーに酔っている米国支配層の存在です。

 20世紀の反省と核抑止力による第四次世界大戦は避けられるかもしれませんが、それ以上のテロによる、罪のない民衆虐殺の信号は灯ったと思われます。

 21世紀は異なる宗教、イデオロギーを認め、一番大事な相手の痛みが解る価値観の共有だと思います。

アフガニスタンの若いお母さんの悲しい顔
 




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