ソーニャの艶のある美しい栗色の長い髪を手で愛撫する・・・思考が駆け巡る・・・今僕達を阻止するものは何もないと思っていた、東西に分かれた政治形態だって問題じゃない、とりあえずパリに共に行こう、ショパンを支えた男装の麗人ジョルジュ・サンドのようにパリでソーニャのためになることを何でもしよう・・・ 豊かな乳房から森の茂み沸き出ずる湖へと進む、愛らしい声とともに僕はポーランドの大地と一体となった、やがて豊かな大地はヌーベルバーグとも言える芸術という生命を育むだろうという事を信じていた。 パリに戻る時が迫ってきていたが、それもたいした問題ではない。 「ソーニャ、あと1週間で夏期休暇がはじまるよ、ねー一緒にパリに行こうよ」 「行きたい、でも音楽院から許可が下りるかしら・・・」 「んー郵便局から電話して夏期ピアノ講習会のこと聞いてみようか」 若さはどこまでも突き進む、朝焼けか夕焼けか解らなくなるまで、ソーニャと一糸纏わぬ姿で過ごした、なんの違和感もない一緒にショパンのピアノコンチェルト第二番のニ楽章を連弾したとき、僕も感動のあまり泣いてしまった。
「ねーソーニャ英雄ポロネーズを弾いてくれない?」 残念な事には英語で通じなかったので僕は冒頭の部分を少し弾いた、ソーニャはポーランド語でなんとかポロネーズと言ったけど今でも思い出せない単語だ。 「この曲はジョルジュ・サンドとの恋によって生まれたの」 「じゃ僕はピアノと打楽器のための英雄ソナタを作曲しよう、決めた!」 ソーニャはショパンとジョルジュ・サンドの話をしてくれた、ショパンとドラクロワは互いの芸術を尊敬し合うようになったというのは、初めて聞いた、そして英雄ポロネーズはポーランドの舞踊のリズムから成り立っていることを、自然の姿のまま踊って説明してくれた。ソーニャのお母さんはバレーの振付士で今はソ連のレニングラードで教えているということも・・・。 目を閉じるとその舞姿かうかぶ、ターンした刹那の姿、美しいなにもかにも美しい、想いではあまりにも美しすぎる・・・
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