新知庵亭日乗
荷風翁に倣い日々の想いを正直に・・・

2003年02月26日(水) 想いでは美しすぎるもう二度とは・・・

「森へいきましょうソーニャさんアッハーハ・・・」ワルシャワから自転車で20分も行けばそこは湖とウッソウ-とした森に出会います、音楽院で自転車を借りて、初夏の街を走りやがてお城の見える森に入っていきました。

「ここによく小学生の時家族や友達とピクニックに来たの、そしてサンドウィチにチーズとミルクをいただくの・・・はいワインとパン・・・ルルルルール・・・」
「あ!その歌も知ってるよ、なんだったっけ、ひばりのこ すずめのこ・・・」
「これ皆で踊るのよ・・・こーやって」
「・・・・」

 熱い吐息が迫り、ソーニャの唇は濡れていた、唇から首筋へと愛撫は激しく滑っていく、ふと見ると濃紺の湖面にお城が写り、湖面に垂れた森の木の枝が、移った城の窓を貫いていた。
「お会いして未だ二日目よ・・・私、あなたの事何も知らない」
「僕は日本人で音楽家の卵だよ、こうしてめぐり合ったのは・・・ほら(英語の単語がでてこない!)昔から決まってたんだ、それにしても美しい森と湖だね」
「第二次世界大戦で何故ドイツは、ポーランドを襲ったか知ってる?理由はいろいろあるけど、その一つにドイツの冬のためだったとかポーランドの森をヒトラーは狙っていたんです、暖炉の薪のために・・・・・・」
「あっその話ね、酷いね、僕、アウシュビッツに行ったんだ・・・」
「そう・・・」
「ドイツにも良い友人がいるし、音楽も大好きだし、何であんな・・・」
「ねーあの歌、もう一度日本語で歌って・・・」

「春が呼んでるよ」
をクリック!
ひばりのこ すずめのこ
飛びながら 何を見た
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
小林幹治作詞





↑メッセージがあるよ、クリック

やがて太陽が赤く染まり、初夏とは言えどもかなり寒くなってきました。ソーニャは押し黙ったまま、自転車を押して歩きだしました。
 「私、以前から日本の国の人に興味があったの、ミスヒロコ・ナカムラの演奏を聞いて驚いたわ、だってポーランドの古い民謡を素材にしたショパンの曲を見事に歌っているんだもの・・・」
「ねー、日本にお出でよ、一緒に行こう、そしてミスヒロコ・ナカムラにレッスンを受ければいいじゃない、行こうよ、そして結婚するんだ!」
「・・・」
 
 もう二度とは戻らない青春の刹那、あれは軽く出た言葉ではなく、未だ光輝く未来を疑うことを知らなかったからだ、ポーランド、アウシュビッツ、ショパン・・
・ソーニャ・・・あの愛らしい目・・・夢の中で僕は暖炉のそばでソーニャと同じ目をした幼子を抱いてソーニャの弾くノクターン嬰ハ短調20番を聞いている・・



 < 過去  INDEX  未来 >


Shinchandazo [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加