新知庵亭日乗
荷風翁に倣い日々の想いを正直に・・・

2003年02月21日(金) 遺作

映画「戦場のピアニスト」で流れる曲です。あまりにも悲しく、ショパンの想いとともに胸に深深と迫ってきます。



ドイツ兵に見つからないよう泣き止まない赤ん坊の口を手で塞いで窒息死させてしまう母親のエピソードが印象的です。まさに記号に堕してしまった人間の悲劇とでも言うべきか、それはこの映画に反復される「音と記号」のモチーフの一つでもあると言えるのですが、ただ、彼女が記号に堕すことなく、泣き止まない赤ん坊をそのまま抛置しておいたところで状況が変わったとはとても思えないわけで、その意味に於いて、音=音楽を得ることによって一時的であれ記号であることを止めたエイドリアン・ブロディの身に起こったことは、しかし、やはり(残念なことに)単なる例外に過ぎなかったと言わざるを得ないのかも知れません。
一心不乱にピアノに向かう彼はもはや一個の記号などではなく、彼が自称した通りの一人のピアニスト、その演奏に耳を傾けたトーマス・クレッチマンも当たり前のように彼に名前を訊ね、「ピアニストらしい名前だ」とさえ、それが記号と記号の対峙でない以上、蛮行の起こり得る余地など何処にもないはずなのですが、それでも、それはやはり「神の意志」に導かれた一個の偶然でしかなかったのです

 「遺作」出版されているもののうち、死後に出版された第20番はノクターンとして知られていますが、正式なタイトルは「Lento con granespressione」というタイトルで、普通はノクターン集には含まれないそうです。
ウイ−ンに到着してまもない青年ショパンの筆から生み出された曲です、手紙にそえられてワルシャワにいる彼の両親のもとに送られました。
 この作品は1830年に作曲されていますが、楽譜は死後1875年になってようやく出版されています。





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 彼はどのような気持ちで作曲し、また誰のために演奏したのでしょうか、Shinchanはワルシャワの街のとある建物から流れてきたこの曲に引きつけやれて・・・とうとうドアをノックしてしまいました・・・セピア色の淡く蝋燭の炎のような恋に・・・



「遺作」
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