あれは2月の寒ーい寒ーい京都だった、能の鐵輪(かなわ)の謡曲とその囃子を仲間と練習していた・・・ときでした。 「なんか後ろから誰か見てるような気がせえへん?」と大鼓(おおつづみ)のO君が言う、 「うん、僕もさっきから気になっててん」と謡いのK氏 「さっきナー、息吹いてへんのにかってに鳴るねん」 と能管のI君 Shinchan「おいおい、今はもう陰陽師の安倍晴明先生はおれへんねど、鉄輪やっているからかなー、恐い事言わんといて」
ところで鉄輪って何?という話になりました。 「あれは頭に蝋燭つけて、藁人形を五寸釘で打ちつける時にかぶるやつちゃうの?」 K氏「しゃーないな、専門家が解っとらんでとないすんねん!」という説法が始まった。
・・・・都の女が嫉妬の心抑え難く、丑の刻参りに貴船神社に赴く。貴船の社人が女に近づき、「火を灯した鉄輪を頭にかぶり、顔に丹を塗り赤い着物を着て、怒りの心を持つならば願いが叶う」と告げる。女は半信半疑ながらも、帰宅の後、試そうと口にしたや否や、鬼の形相に変化しながら消えていく。<中入> そのころ女の夫は、毎晩の夢見が悪いので、陰陽師の安倍晴明に占いを乞う。すると晴明は、夫が本妻を離別して新しい妻を迎えたことによると見立て、本妻の祈りが今晩満願するため命が危ういので、呪いを人形に転ずる呪法を行うことにする。 夫婦に見立てて侍烏帽子と鬘を置いた高棚の前で、晴明が祝詞を唱えていると本妻の生霊が現れる。生霊は、夫を表す人形に近寄り恨み言を述べた後、新妻を表す鬘を打ち据え、更に夫へも手をかけようとした時、晴明が喚んだ神々に気付き、呪いの言葉を残して消え失せる。・・・
「恐いですねー恐ろしいですねー、そんな訳で、さよなら・・・さよなら・・さよ・・」 「ええかげんにしなはれ!」 O君「皆、身に覚えあるやろ、明日貴船神社にお参りに行こうや」 雪積もってるしー帰えろ、なー」 「ここまで来て帰れるかいな、宮司さんに電話したんやで」
通ひ馴れたる道の末 通ひ馴れたる道の末 夜も糺 の変わらぬは 思ひに沈む みぞろ池 生けるかひなき 憂き身の 消えん程とや草深き 市原野辺の露分けて 月遅き夜の鞍馬川 橋を過ぐれば程もなく 貴船 の宮に 着きにけり ヒィャー・ヒー!イャー、ハーチョン、ヤ!ポン なんて稽古謡いとお囃子をやってたら宮司さんが表れました。
「まー御熱心なことで、時々シテ方の方が一人でそーとお参りにこられるんですよ」 「誰やろな?」「知ってても言うーたらあかん」「んー先輩方も来られるんか、これマジやで」 で立ち入り禁止区域を解放してもらいました。 「これが五寸釘を打った後で、直しても直しても藁人形に怨念を込めた呪詛の手紙といっしょに置いて行く方がへりしまへん」 「こ、これ、なんやねん!?」 とO君の叫びで一同それを見ました。
それは、藁人形に名前が書いてあり、[二度と出来ないようにしてやる]藁人形にはかなりリアルな男の一物が途中から切られ、切られた先がブランと下に垂れているんです。
雪夜の鬼女定め 一同、稽古場に戻り、酒を飲みつつ冷え冷えした心持で過去や今の女性の話をしました。
つづく
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