新知庵亭日乗
荷風翁に倣い日々の想いを正直に・・・

2002年10月31日(木) 森永ヒ素ミルク



「Shinchan、二郎ちゃんが遊ボーって言ってるよー」と隣のおばさんが、お庭から声をかけました。
 Shinchanちのお庭は四角形で4軒のお家の共同のお庭でした。ちっちゃな木馬さんが置いてあります。
 二郎ちゃんは何故か何時もウーウー言っています、そしてよだれが垂れています、お手ても両方、曲がっています、Shinchanのように絵筆を持つ事も出来ません、お目めもどこを見ているのか解りません。二郎ちゃんは縁側に赤ちゃんの座る椅子に座ってウーイウーイと言ってます。
 Shinchanは大きな画用紙を二郎ちゃんの縁側に持っていって、白髪先生からもらった絵の具で足で絵を描くことにしました。


「・・・じろたん・・・描く?」
Shinchanはまず縁側に大きな紙を置いて赤青黄色白色を板切れにだします、そして試しに足に塗って紙の上をピチャピチャしました。
・・・ウィーン・・・ウイーン・・・
 Shinchanには二郎ちゃんが何を言っているのか解るのです。
「・・・次ぎ・・・じろたん・・・」
二郎ちゃんの椅子から出てる足に絵の具を塗って、紙をくっ付けてあげました。
「・・・ウー・キャ・キャ・」
 「あーじろちゃん!!笑ってる」二郎ちゃんのお母さんが編物をしながら言いました。
 「Shinchanおおきに、足で描くの?じゃ、じろちゃん椅子から降ろしてあげよ」
でも二郎ちゃんは立てません、ハイハイしながら絵の具手をにも足にもつけて、顔にもつきました。
「じろたん・・・しらが・・・おっちゃん・・より・・じょうじゅ!!」
「ウーン・ウーン」Shinchanにはおもちろい・・おもちろいと聞こえます。
縁側の廊下に絵の具が飛び散って、Shinchanは二郎ちゃんのお母さんに叱られるかなーと思いました。
「Shinchanおおきにね、二郎ちゃんはShinchanと遊ぶと笑うんよ、又遊んだってネ、今度沢山絵の具と紙買ってくるから」
「ウィーン・ウイ―ン」
「もう晩御飯やからShinchanもお家にもどらなあかんやろー、なーじろちゃん」

Shinchanがバイバイすると・・・二郎ちゃんは・・・泣いていました・・・。









 「Shinchan、二郎ちゃんのお母さんがありがとう、って沢山絵の具くれはったよ、よかったなー」
「・・・うん・・・」
「あのな・・・二郎ちゃんはなミルク飲んであーなったんよ、森永砒素ミルク言うねん」「・・・ひしょ?・・・」
「Shinchanはおっぱい飲んで大きなったけど、二郎ちゃんはヒ素の入ったミルクのんであーなりはってん、ほんま可愛そうや、Shinchanと同じ歳なのにな、酷いことするわ」とお母さんは又泣きました。

・・・二郎ちゃんは12歳まで精一杯生きたそうです。
・・・じろたんのあの笑い顔と泣き顔は、今でも夢の中でShinchanと遊んでいます・・・しろたん・・・じろたん・・・Shinchan・・・Shinchan・・・じろたんは今、絵描きさんに・・・生まれてきたよ・・・そのうち会えるよ・・・。


Gaia and Uranus


森永砒素ミルク中毒事件
http://www4.inforyoma.or.jp/~matuken/morinagahisomiruku.htm


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