新知庵亭日乗
荷風翁に倣い日々の想いを正直に・・・

2002年10月26日(土) 月光ソナタ



 
Shinchanは幼稚園に行かなくなって、しばらく経ちました、お母さんは困ってしまって、担任の先生に相談しました。
 「すみません、Shinchanが幼稚園のピアノを叩いて凄い音を出すので、ちょっとしかったのです、そしたら泣いてしまって・・・。」
 「あの子この前はピアノ教室でも同じ事をして、もう来ないで下さいと言われたのです」
「ある時私、ピアノの発表会のため、幼稚園のピアノで月光ソナタを練習していたのです、そしたらShinchan・・・残る・・・と言ってずーと聞いていたのですよ、あーこの子興味があるんだと思って楽譜を見せてあげたのです、そしたら、#の印を指さすので、ソの音の隣の黒い所といってあげたら、ギシュと言うのです、又この子何を言っているのかと思ってソのシャープて言ったら、チャウって言うて楽譜を投げたのですよ。」
 「本当に申し訳ありません、あの子、少し病気なので小学校の普通科に入れるか心配で心配で・・・」
「でもお母さん、私のピアノの先生がドイツ語の音符の言い方を教えてくれたので解ったのですが、ソの♯はギィスて言うんです、私、驚きました、Shinchanはお父さんにでもドイツ語で楽譜の読み方習っているのですか?」
「いやー、主人は忙しくてあの子と遊んでもくれませんのよ」

 お母さんはやはり小学校の特殊学級に入れないといけないと思って、お家に帰ってきました。

「Shinchan!それ月光やないの!どこで覚えたん?」
「・・・・・」










石川賢治 月光写真

http://fullmoonlight.net/exhibision/exhibision.html


「Shinchanな、お月さんに雲がかかって見えたり見えなかったりするやろ」
「・・・んん・・・」
「それを見てドイツのベートーベンいう人がこの曲作ったんや、そしてナー、これが楽譜ちゅうねん」
「じいちゃん・・・ヴァイリン・・ドイチュのんひくよ」
「そうかおじいちゃんにいきなりドイツ読みを教わったんや、凄いなー、おじさんなーShinchanの歳の頃はそんなん全然知らんかったよ」

 ピアノのレッスンに通って来てくれているお兄さんは、そのまんまドイツ語読みでShinchanに楽譜の読み方を教えていました。そこにお買い物から帰ってきたお母さんは初めてShinchanが楽譜を見てピアノを弾いている姿を見ました。
「あのー吉さん、ひょっとしてあなたドイツ語で教えているの?」
「あのねー、Shinchanは耳で聞いただけでベート―ベンの月光弾けるんですよ、勿論手が小さいから、所々の音を飛ばして弾いているんですが、それは専門的に言うと、理に合っているのです、だからひよっとして凄い才能を秘めているかもしれませんよ」
「だから、Shinchanには子供のためのピアノの教え方はしない事にしました、例えば、ルノアールの絵を見てShinchanが思った事をそのまま弾くのです、そして僕発見したんです、友達の白髪さんの絵、Shinchan好きでしょう?そしたらShinchanピアノに乗って足で弾くんです、やー吃驚しました、それが又良いんですわ」
「あんまり変な事教えんといてねー」
「ハハハ―、まー見ててください」

でもお母さんは嬉しくって、嬉しくって又泣いてしまいました。

■白髪一雄画伯

お母さんは幼稚園の先生と相談しました、「Shinchan、月光の音楽なー幼稚園の先生が一緒に弾こう言うてはるよ」

 Shinchanは幼稚園に行くのが楽しくなりました。
「・・・ゲッキョウ・・・ゲッキョウ」




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