2003.05.19 (Mon) 2:51:40
いろいろな人が好んで使う専門用語。これの意味はなんだろうか。
なんでそんな話なのかって?そんなのは決まっている。書くことがないからだ。
そもそも専門用語というのは、一般に弊害が指摘されがちだ。細々したことはあるが、平たく言ってしまえば「分からない」のだ。まあ、当然だろう。聞き慣れない言葉をあえて使っているのだから、分からないのが当然と言っていい。ではなぜ、あえてそのような言葉を使うのだろうか。
利点は三つ考えられる。既存のイメージとの混同を避けること。新しいと言うことを明示すること。そして、対象を正確に表現すること。
既存のイメージとの混同を避けるとはどういうことか。一般に専門用語を用いる場合、何か新しい研究に伴う場合が多い。新しい研究には新しい概念を伴うことが多い。今まであるもので、すべて説明できる方が少ないと言っていいだろう。まったく新しいことを、今までの言葉で表現することは難しいだろう。従ってここに、専門用語を用いる意義がある。分からないと言ったって、そもそも今までないんだから分かるわけはないのだ。
二つ目は上の仲間と言ってもいい。あえて分ける必要はなかったかもしれない。ただ、あえて言うなら、上の場合は仕方なく専門用語を使っていたのに対して、こちらは積極的に使おうということだ。既存のものと似たようなものでも、あえて新しい名前を付けることで今までのものとは違うということを表現したい場合に用いられる。この場合が一番多いのかもしれない。分かりにくいのを承知で自分の専門分野を例に取るが、僕は流通情報工学課程に属していて、そこで扱っているのはロジスティクスと呼ばれるものだ。平たく言えば要するに流通なのだが、厳密に言うとまるで違う。ロジスティクスは流通を包含する、より幅の広い概念なのだ。と言っても、誰もが納得するような定義をした人はまだいないのだが。定義すらできないものを学問として扱うのは不思議な気もするが、工学とはそのようなものだ。例え完全に理解できなくても、現実に存在する以上、何とかしたいと思うのが人の常、ということだ。この点で科学という視点から見た場合、工学は邪道だ。イギリスでは1970年代まで工学は科学として認められなかったという歴史的経緯もある。工学がこれほど世の中に浸透しているのは日本くらいかもしれない。
話がそれたが、流通と似たような概念であるにもかかわらず、実は違うロジスティクスという言葉。このように、新しいということを厳密に言う必要がある場合、専門用語を使う意味がある。ちなみにこの言葉は、新しい仕事をしているのだという意味で企業のうたい文句になることもあるようだが、実態がどうなっているかは、その企業により様々のようだ。e-Businessの時代にトータルなソリューションを提供する…と言った言葉と似たような感じだ。ちなみにこのソリューションという言葉も最近は頻繁に使われる。成果だとか実績だとかそんなような意味のようだが、あえて分かりづらい言葉を使う意味があるのかどうか、僕にはよく分からない。あえて違いを示すなら、その成果や実績そのものが売り物だと言うことだが…。要するに、どっかの会社に行って、なんかの仕事を効率化したり、情報の整理をしたりする。この仕事そのものが売り物なのだ。具体的なものではなく、業務の効率化をすることでお金を取るわけだ。こうやって言ってみると、確かに専門用語が必要な気もするが…。
余談ではあるが、このソリューションという代物、現在ではかなりお粗末なものも多いようだ。業務用アプリケーションを提供したりするわけだが、そのアプリケーションがひどく使いづらいとか、バグが多いとか、いろいろな話を聞く。逆に、ソリューションを導入して完璧になったという話はまるで聞かない。時代の流れだと言って必死にやっているが、実際のところ、べらぼうな投資をしてまで導入すべきなのか、疑問符がつくのではないかと思う。と言っても、将来僕は、このようなソリューションを提供する側に立つことになるだろう。お粗末だから使わない方がいい、なんて言っていられなくなるのだろうが…。
これ、考えてみれば分かると思うが、非常に難しい仕事なのだ。他社に乗り込んでいって事業を構築しなければならない。しかも、企業秘密の壁などがいろいろあって、本来完璧に知っていなければならない仕事内容がよく分からない。よく分からない仕事を最適化しなければならないのだ。最適化とはつまり、コストを最小にしたり、より仕事の能率を上げたりすることだが…。できるか?そんなこと…。自社にシステム部門を持って、そいつらにやらせた方がいいと思うのだが…。まあ、それだけの正社員を抱え込む余裕なんて、今の企業にはないんだろうな。人材不足もあるし…。僕も含めて、大卒の人間を普通に連れてきてもなんの役にも立たない。僕はまだ大学である程度の効率化手法を学んでいるが、普通の大学生はそんな金儲けの方法なんて、大学で勉強したりしないのだ。その辺がアメリカあたりと違う。
さて、ぐだぐだ言う前に、やらないとなあ。システム開発のやり方が分からないのなら、現場に出かけていって見てくればいい。難しそうに感じるだろうが、派遣社員なら現場に出かけていって、その現状を見ることができる。やることは分かっているのだが…。
ああ、そうだ。三つ目の対象を正確に表現することというやつ。上でだいたい説明したような気もするが、新しい概念は、他とは違う点が必ずある。そのような場合に、今まである言葉で表現してしまっては、誤解を招きかねない。そのために、今までとは違うということを明示するために、新しい言葉が必要なのだ。似たようなことで表現すると、それと似ているだけ、であるにも関わらず、聞いた人は「同じ」だと思ってしまう可能性があるのだ。ロジスティクスは今までの流通の概念に、その流通に付随する情報を包含したイメージを持っている。しかし、それを「流通」と言ってしまっては、この情報を包含するという部分が伝わらないのだ。かと言って、これを日本語訳してしまうと「兵站」という言葉になってしまう。戦場において、兵士にいかに物資を供給するかという、まるで違った話になってしまうのだ。まあ、こんなことをぐだぐだ言うくらいなら、新しい言葉でズバッと言ってしまった方が早いし正確だということだ。
2003.05.19 (Mon) 3:39:42