Seakの日記
日々感じたことを書き留めていこうと思っています。

2003年04月21日(月) 論理と非論理の狭間で

2003.04.21 (Mon) 19:33:59

人間関係において、ともに過ごした時間など、絶対のものではないだろう。ましてや物理的な距離など、取るに足らないもののはずだ。大事なのは心であって、それ以外のことなど、それに付随しているにすぎないはずだ。だが僕は、羨望を押さえきれない。多くの時間をともに過ごせること、その多くの時間を、すぐそばで過ごせること。どんなに望んでも手に入らない人間がいる一方で、何も望みはしないのに、簡単にその場所を手に入れる人間もいる。

僕でない人間にとっては取るに足らない時間が、僕にとってはかけがえのない時間となる。わずかな時間に、僕のわずかな望みが叶えられるのだ。その100倍、1000倍もの時間を共有する人間がいても、きっと僕のこの充実感は得ることができないだろう。これは僕が僕だから得られる記憶であり、他の誰であっても意味のないものなのだ。

人を愛することは、アイデンティティーを確信する最大の手段なのかもしれない。誰かを愛していると気づいたとき、その誰かを愛している自分自身は、他の誰でもない自分なのだと気づく。同じ思いを抱いている人間は、他には存在しないのだと。ただ自分だけの思いであり、何者にも侵すことのできないものなのだと。自分が、他の誰でもない自分で、他の誰とも違うのだと、これほど強く思えることが、他にあるだろうか。どんな技術も、他に持っている人がいてもおかしくない。かけがえのない友人とて、そのような存在がいるという人は少なくない。自分だけのかけがえのないものなんて、そう多くはない。

僕でない誰かが、僕が望む時間を過ごしている。それを知っていることと、実際に分かることは違う。そう、気づかされた。屈辱とも絶望とも思える、妙な気分だった。嫌でも突きつけられる現実。考えたくないと目をそらしていた現実。だが、間接的ではなく、直接感覚に届く距離に近づいたことで、僕は逃げられなくなった。僕を必要としていない空間の中で、なぜそこにいるのかも分からないまま、見たくもない現実をひたすら突きつけられる。

…抽象的な話はともかくとして、今日は研究室の集まりがあった…、はずだった。しかし、連絡が不十分で、学生の方は集まったものの、教官の方が何も準備をしていなかった。仕方がないので、途中だった細かい引っ越しを最後までやった。机の位置を決めるとか、そういうことだ。

そがバイトに遅れそう(と言うか遅刻確定)だったので、僕は彼女と一緒に駅まで走った。彼女はずいぶん遅いと思ったが、なんのことはない。スーツなのだからまともに走れないに決まっている。こんなことにすら気づかなかったのだから、相変わらず頭に血が上っていたようだ。それでも、いつもと比べれば冷静だったように思えるのだが。しばらく会えないと思っていたのに、案外早く会えて安心したのかもしれない。自分でもよく分からない心理だが。

僕には話すことなどそれほどなかったのに比べて、彼女は就職活動でずっと苦労していたらしく、30分ほどの間、ほとんど彼女から話し続けていた。…と、思ってはいるが、実際どうだったのかはよく分からない。僕は不必要にぺらぺらとしゃべるから、実際はかなり、こちらからも話していたのかもしれない。面と向かって話していると気づかないが、チャットなど、ログが残るものを見るとものすごいことになっている。4人で話しているのにログの半分以上が僕の発言だったり、などということが珍しくないのだ。

まず、基本情報技術者の話を少し。彼女は白百合女子大学でこの試験を受けたらしい。思い切りキリスト教系のお嬢様学校だったと言っていたが、実際、Webサイトを見ても、そういう印象を強く受ける。僕が受験した武蔵工業大学とはだいぶ違う。こっちは、要するに思い切り理系の、華やかさのまるでない大学だ。落ち着いていていい雰囲気だとは思うが、そう思う人はおそらく少ないだろう。

それからあとは、ひたすら彼女の就職活動の話だった。一般職で内定が出たとか言っていた。彼女の能力で一般職なんて、もったいないというのを通り越してばかばかしい。それ以前に、この人減らしの時世に、一般職なんて募集しているあたりが信じられない。と言うか、もし彼女が一般職にしかなれないのなら、僕は就職することなどできやしないだろう。流通の専門的知識は言うに及ばず、僕がもっとも得意としているソフトウェア分野ですら、彼女は僕と同等か、僕の上を行くのだ。少なくとも僕は、大学のテストの成績は、最も優れているということになっている。この得点分布の表の、一番右にいるのが僕だ。2位以下を引き離しているのが分かると思う。と言ってもこれは、自分の説明にもっとも都合のいい教科を持ってきただけであって、他の科目ではこれほどの差は付いていない。それらも公開されていたのだが、担当教授(現在の僕がいる研究室の教授)がアメリカに行ってしまった関係で、削除されてしまったらしい。とりあえず、僕に能力がないということはないはずだ。そんなことになったら、僕は生きていく上ですがるべきものをなくしてしまう。まあ、んなことはいいとして、僕はひたすらこの分野だけに取り組んできて、結果としてこの程度の成績を取れるようになった。が、彼女はハイブリッドでこなしているにもかかわらず、その情報分野だけとっても、僕より劣るとはとても言えないレベルなのだ。

まあ、とにかく、彼女はマシンガンのように話し続けた。この短い時間ではあまりよく分からなかったが、ストレスがたまっているのは確かだ。前も、疲れてきたときにかなりトゲのあることを言っていたが、今日もオブラートをつけ忘れたかのような言葉が少し飛び出していた。彼女に限ったことではないが、どうも努力しない人をバカにしているような気がした。自分が努力するのは大いに結構だが、それをしていないからと言って他人を嘲るような態度は、どうも好きになれない。別に自分が努力していないからではなく、僕は嘲笑というのが嫌いなのだ。正直言って、彼女がそういう態度を示したのは不満だったが、彼女は僕の理想を形取った偶像ではないのだから、そのくらいのことはあって当然と言うべきかもしれない。むしろ、今までが完璧すぎたのだ。もともと非現実的な理想を抱いていたわけではなかったが、それにしたって、そのものズバリ、理想そのままの人がいるというのは…。経歴まで理想そのものだ。強い自信を持っており、その裏付けとなる知識を持っている。その知識を生かせるだけの、明晰な頭脳も持っている。僕自身は論理的な思考がかなり好きだが、理想の人には、どこか非論理的な部分を持っていて欲しい。夢を見ていて欲しいと言うか、ちょっと悪く言えば、ちょっと妄想しているような、と言うか…。こんな意味不明な部分まで、なんとなく備えているような気がする。

顔に傷のようなものがあったのが気になった。顔色を見るのは得意ではないが、あまり良いようには見えなかったし。僕に感情をぶちまけることで、少しは気が楽になったのならいいのだが…。ただ、なんだろうな。自分から積極的に話しているにもかかわらず、僕の干渉を拒否する雰囲気を感じた。怒濤のように話していたのは、僕に対するバリアだったのかもしれない。そう考えてみると、大学の友達に話しているだけのはずなのに、なんだか必死のような印象も受けた。なにをやるにも一生懸命なだけなのかもしれないが…。自分の話を説明するためだけに、わざわざ自分の手の甲にボールペンで図を描いたりするものなのだろうか。…きれいな手に、もったいない。などとは言えなかった。ずっと話し続けていたのに、こちらを見なかったのも気になる…。なんだったのだろう…。

気にしていても仕方がない。僕にできることなど限られているのだ。万が一、彼女を救えるような機会があれば、そのときは全力をもって立ち向かうとしよう。でなければ、その覚悟は朽ちて消えるのみだ。話を聞いて欲しいと願っているのか、非干渉を望んでいるのか。僕には、何も分からない。

2003.04.22 (Tue) 5:49:08


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