六本木ミニだより
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試写状を見たときから、「におう、におうぞ〜、この映画は私を呼んでいる!」と思った映画です。最近ちょー忙しいのに、どうしても書かずにはいられないぐらい、私にとっては問題作です。
作品終了後、宣伝会社の方に、「どうでしたか?」といわれて、「ケイティ、おいしくないですかあ〜?」と叫んでしまったんです。(担当者さん(女性)も、「たしかにそうですね〜」といって笑ってましたが)。ケイティというのはこの映画の主人公の名前で、この映画はいわゆる「ラブ・サスペンス」で、詳しく書くとネタばれするのでそれ以上はかけませんが、ケイティはあまり幸せな女の子ではありません。でも! やっぱり! ケイティはおいしい! 「わたしは鬱依存症の女」の映画評で週刊金曜日にも書きましたが、ときどき、映画には、私の嫉妬をかきたてる女が登場します。ケイティは、そういうタイプの女の子(女子大生)です。 「私の嫉妬を呼ぶタイプの女」の条件、その1、その女は必ず正反対のタイプの男をふたりボーイフレンドにしている。その1っていうかそれがすべてだな(恥)。「私は鬱依存症の女」で主人公のリジーは、「ハンサムでちょっと危険なにおいのする男(ジョナサン・リース・マイヤーズ)」と、「ハンサムだけどちょっと朴訥とした感じで確実に守ってくれそうな男(ジェイソン・ビッグス)」のふたりと付き合ってました。しかし、くだらない指摘ですが、この二人はどちらもブルネットでした。今回は、かたっぽがブロンドでかたっぽが黒髪です。これ、例えば007シリーズでボンド・ガールが二人出てくるときに使われるキャラ分けです(最新シリーズでもハル・ベリーは黒髪でロザムンド・パイクは金髪でしょ)。ルックスにも正反対をもってくる心憎さです。「片方は危険な男、片方は安全な男」っていう図式は変わらないんだけども。(これ、男の「妻は聖母マリア型、愛人はマグダラのマリア型」っていうのと変わらないかもしれない) 危険な方はケイティの大学の同級生で、1年前に失踪した天才、エンブリー。これを、イギリスのティーンに大人気の新人、チャーリー・ハナムが演じ、安全な方は、エンブリーの失踪を探るうち、しだいにケイティにひかれていってしまう刑事、ウェイド。こちらは「デンジャラス・ビューティ」でもサンドラ・ブロックに対して「見守る王子様」(こちらも刑事だったね)をやっていた、黒髪のベンジャミン・ブラッド(苦みばしってますねー)が演じる。ふたりは年齢差もかなりある。ますますおいしいぞ、ケイティ。
さて、この映画でとってもキモなのは、ケイティが、すごく苦労人だってことです。彼女は大学4年生なんだけど、80年代のキャリア・ウーマンが乗り越えてきたような、「他人からの差別も自分の実力で何とかしてきた」みたいな優秀な学生である。名門大学でも合格率は数十倍といわれる、経営コンサルティング会社への内定を、実力で手に入れようとしている。でも、頑張りすぎのケイティの精神は、すでにボロボロになりかかっている。「才はあるのに色はない(映画中では You have no grace オマエはダサい、と訳されている)」というセリフは、自分がその通りだと思っているケイティをいたく傷つける。きっとケイティは、こんなにハンサムな男ふたりを手玉にとった自分は、ちゃんと「grace」もあるってことに、気づいていないのだ。彼女は幸せを認知する力が弱すぎるんです。それが映画の中で悲劇を招いていきます。
……バレバレでしょ、この映画のオチ。私も宣伝会社さんに「オチは見えるような宣伝でいいから、彼女の心の闇に共感したい女性が見に来たくなるような宣伝の方が良かったのでは?」といってしまった。(彼女も納得げであった)。私は、単に謎解きを楽しむだけの観客がこの映画を見にきて、「ケイティって、嫌な女」と思って帰られるのがイヤなのだ。主役を演じるケイティ・ホルムズ、「フォーン・ブース」にも出てますけど、ちょっと内向的な感じがぴったりなんだよね。
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