カタルシス
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2004年10月12日(火) |
目隠し鬼さん 手の鳴る方へ |
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一昨日社長から 「12日は新宿の物件を見に行くので8:50に小田急線参宮橋駅の改札に来てください」 というメールがあったので いつもよりちょっとばかり早く出発 直行で参宮橋を目指す
実は今 我が社は事務所移転の為 物件探しの真っ最中なのである
事の起こりは先月の初め 今いる事務所のビル管理をしている会社からお達しがあり「来春から当社でこのビルを自社使用したいので3月までに移転をお願いします」という結構唐突且つ強行な内容だった
もちろん費用の面ではある程度の補償はしてくれるとのことで 家賃3ヶ月分に相当する額を負担してくれるとのことだったのだが 自転車操業の我が事務所 実は2ヶ月程家賃を滞納していたらしい が その事実を知っていたのは社長だけで 社員である我々はそんなこととは思ってないから年末までかけてじっくり物件を吟味するつもりでいた
しかし 社長一人で妙に引っ越しの時期を早めようとしているので 不審に思った我々が問い詰めた結果 補償額から滞納分を減額されてしまう事実を知るに至った訳だ そういう話なら悠長に構えてはいられないと にわかに物件探しが必要業務の中で重要度を上げてきたのである
そして何件かを内覧に出かけていた社長と社員さん達は 候補をしぼり込んで最終決定直前の段階までこぎつけた
作業スペースと立地 それから家賃(←これ重要)を考慮して候補に残ったのは ●後楽園から徒歩10分のマンション ●千石から徒歩1分の1戸建て そして今日これから見に行く 参宮橋から徒歩5分のマンション だった
前者2件はスペース・家賃は手頃だったが 足便が微妙といえば微妙 どちらも閑静な住宅街の真ん中にあるので いまひとつ「事務所」という雰囲気でないのは確かで コンサルという業種上 多少のネームバリューが必要な立場としては 即契約!という程には納得ができない物件だった
そしてこれから内覧する物件は 既に私以外の人達が一度下見をしているもので 社長を除く全員が「あそこはありえない!」と口を揃えて却下を唱える物件だった それらの意見を聞いていたので もうその物件はリストから外れていると思っていたところに 土曜のメールがあったので
「初めて見る物件ですか?新しく来ていた白山の物件ではなくて?」と疑問を投げる返信をしたくらいだ(社長相手に…)
どうやら社長はこの物件が気に入っている様子で 唯一内覧していなかった私に味方になって欲しいという内心があったのかも知れない 取りあえず行かねばならない雰囲気だったので 仕方なくOKして待ち合せの場所に来た訳だが…
もう9時になるんですけど…(黙)
アンタが8:50にというから 早めに出て8:40には改札に着いていたのに なぜ来ない! ヒマを持て余した私は念のため会社に「社長と直行で参宮橋の物件を内覧してから出社します」とメールを送ったら ほどなくして「我々はそこは事務所に向かないと思っているので余り褒めないでください」という返信があった …そんなに嫌なのか(苦笑)
結局9時頃現われた社長と二人で物件のあるビルに向かい 我々の到着を待ちわびていた様子の不動産営業マンに連れられて 問題の物件を内覧することになった
ビルの14階 新宿の街が一望できる大きな窓と 代々木の森に面した南向きのベランダ しかし…
この間取り どうやって使う気だ?(汗)
社長はしきりに 今の事務所が広すぎるから他の物件が狭く見えるんだ 今の所と比べたらどこにも移れない と「広さ」ばかりを引きあいに出していたが この物件を見た限り狭さより間取りが機能的じゃないと思えた
社長の趣向と経費の関係で 一般的な事務所スタイルである“仕切りなしフロア”ではなく 大きなスペースで何部屋かに区切られた“外人住宅”に的を絞って物件探しをしている 現在事務所にしている場所も元々は外国人が居住するための場所なので 廊下や納戸や小部屋があり トイレが3つあったりフロが2つついていたりする 確かに広過ぎるし無駄なスペースもあるが 今度の物件は狭いだけじゃなく動線が悪かった
玄関を入ってすぐに唯一のトイレがあり そのまま大きなフロアに出る 右奥にはベランダ 左奥に寝室 寝室にはトイレなしのバスルームと6畳程のウォークインクローゼットがあり 寝室に入る手前にキッチンへの入口があった
「……会議室はどこにするんですか?」 「ここ」 玄関を入ってすぐのフロアを示す社長
「我々はどこに?」 「あっち」 と寝室を指さす おいおい あの寝室何畳あるんだよ(--;) 彼が言うにはクローゼットにコピー機やプリンターの類いを全て押し込めて その上の棚に用紙のストックや すぐに使わない資料の一切をまとめておくという
「さすがに無理のある狭さじゃないですか? それに お客様が来ているときにキッチンやトイレに行きづらいですよ」 「それは ここに壁をつくればいいでしょ」 示された道筋を辿る 天井を見上げて
「空調ありますけど」 「じゃあ上まで行かない仕切りか何かで…」 「せっかく開放的なこのフロアが閉鎖的な空間になっちゃいませんか?」 「そんなことないですよ」 「……(絶対なるって!)」
「ここに会議室のテーブルを置いて あっちに応接セットを置くでしょ それでその向こうに僕のデスクをおけば ベランダにもすぐ出られます ベランダは僕が責任を持ってガーデニングしますから」
ガ ー デ ニ ン グ っ て 何 ?!
持参した5mコンベックスで寸法を測りながら「あれ こんなに大きいんだ…」とボソボソつぶやく背中 察するに 持ち込もうとしているデスクやソファのサイズが想像以上にかさばると気づいたのだろう そりゃ今は何もない空間だから広く見えるだろうが 実際家具を持ち込んだら そんなでもないぞ?ここ(汗)
確かこのビルの下の方の階にも物件があったハズ… と思い当り それを尋ねてみたところ 「ああ あっちはダメです」 とにべもない返事 結局そっちの物件は見せてもらえぬまま 帰社することになった
私は事務所に戻り 社長は社員さんと待ち合わせて 打ち合せ訪問に出かけていく
戻った私に残っていた社員さんが「どう思った?」と尋ねてきたので「狭さ云々よりも動線が悪いです 私もあそこはありえません」と答える 「やっぱそうだよな」と苦笑する社員さん
「下の階はどんなだったんですか?」 「見てないの?」 「言ったんですけど見せてもらえませんでした」 「…社長的には夜景とベランダが決め手なんだよ あそこ」 「何スかそれ(汗)」 「だろ〜?」
薄々は感づいていたものの ハッキリ言われると脱力というか… 別に自分も黙々と仕事したいタイプではないから 多少の遊びは願ったり叶ったりと思う しかし夜景もベランダも正直言って興味がない それだったら広いスペースにホームシアターでもこさえてもらって 会議や打ち合せでスライドを見せるのと同じように 空いた時間で気の利いた映画やサイレント映像でも流しててくれよ と思うし 音質の良いスピーカーでも取り付けて 障りにならぬ程度の環境音楽でも聴かせてくれたら 素敵なのにと考える
つまりは どうにも社長の価値観は理解し難い という結論だ
午後からまた別の物件を内覧するという 仕事が詰まっている社員さんの代わりに私が同行するようにと言われ 今社長と打ち合せに行っている社員さんと3人で見に行くことになった
場所は白山 昼から降り出した雨に歩みを邪魔されて 駅から5〜6分が長く感じられる
到着した物件は小洒落た螺旋階段を上って2階のエントランスから中に入る 見栄えのするビルだった エレベーターで8階まで 到着した小さなホールには背の高いドアが1つきり 1フロアがまるまる1個の物件だった
わおー!
玄関を入るとすぐ左手にトイレが1つ 突き当たりが壁になっていて左右に通路が延びている 左へ進むと突き当たりにウォークインクローゼットとバス&トイレのついた部屋(寝室) その手前にもう1つバス&トイレがあり 通路の向かいには8畳〜10畳の部屋が二つ 右へ進むと運動でもできるような広さのホールがあり 奥にも6畳程のスペースがつづいていた ホールに入らず手前のドアへ進めばこれまた広いキッチンがあり ホールの奥のスペースへ抜けられるようにつながっていた 各部屋に山のような収納 天井は高く 明かりを取り入れる窓も大きい
こ これはこれで… 広すぎる(汗)
新宿(参宮橋)の物件に比べて少々築年数が経っているものの リフォームも済んでいて奇麗だったし 立地に劣るので家賃もこちらの方がお安いという そしてこの歴然とした広さの違いだ 一日中閉じこもって作業する立場の自分にしてみたら 広過ぎの感があるものの条件は明らかにこちらが良い
ひとしきり内覧を済ませた社員さんと私は 社長の反応を伺った
…ろくろく見もしないで座り込んじゃってるよ(黙)
「…社長 全然見る気なさそうですね」 「意外に良い物件だったのが気に入らないって感じだね」 「どうしてもあっち(参宮橋)に行きたいんでしょうか」 「あの態度はね〜…」
結局 古いとか汚いとか 表の道路の音がうるさいとか 交通の便が悪いとか コンサルとしての品位が下がるとか 揚げ句の果てにはセンスが悪いだの何だのと 我々にしてみたらいちゃもんつけてるだけに聞こえる納得できない理由を並べ立てて 最終的には「ここはありえません」と言い切った
思わず絶句というか あまりの難癖に呆れてしまった私がポカンとしていると 取締役でもある社員さんの方はカチンときたらしく「私にしてみたら新宿の物件の方がありえません」と即座に言い返していた
「どうして?理由は?」 「これこれこういう理由です」 「でもどこかで決めないと切りがないでしょ」 「では逆になんでこの物件ではいけないんですか?」 「ですからここはありえないと言ったでしょう」
〜フリダシニ戻ル
…エンドレスですよ〜 気づいてますか?お二人さん(苦笑) 平社員の私に口を挟む隙がある訳もなく 2人の押し問答をぬるい笑顔で見守るより他なかった
そして帰社
半ばふてくされた様子の社長は自室に引っ込んでしまい 社員さんの方は残っていた社員さんにことの顛末を逐一ご報告 朝も午後も唐突に呼び出されて自分の作業が全然進められていない私は 押しまくりの仕事に慌てて手をつけるのだった
「ちょっと打ち合せいいですか」
そう社長から声がかかったのが夕方の5時頃 5時半が定時なので「30分くらいで終わりますから」と付け加えて 全員に招集をかけた まだ仕事が終わり切っていない私(他の社員さん達とて同様)は嫌な予感を抱きつつも 従わない訳には行かないので渋々会議室へと移動を始めた
初めの議題は今月25日までに立ち上げたいと作業を急いているHPの話 10/25に出版される社長著のビジネス本に そのURLを載せるらしく 発売日の朝にはサイトをOPさせたいらしい
会社案内のサイトと 顧客学習のための非営利サイトは以前から運営しているのだが それとは別に営利目的のいわゆる“商売のサイト”を立ち上げたい と言い出したのが先月のこと デザイン製作を外注に出すので既にもうスケジュールはツメツメだ なのにあーでもないこーでもない 決まったと思ったら翻し 業者に発注をしたあとに平気で変更を言い出してくる ウェブに関した全ての窓口になっている私は 業者に謝っては頼み込み なじられては「そこを何とか!」となだめすかすことの繰り返しで いい加減いやになってきた
金はない 時間はない 納得いかない では何も決まりはしない 何かを諦めて帳尻を合わせなくてはいけないのだと 解っているハズなのに 何でこうも意見が二転三転するのか… ぶっちゃけもう疲れたヨ・。
今回の打ち合せでもまた変更ヶ所が発生して しかも そこを変えたら根本から組み直しじゃねぇ?って所を指定してきたので さすがに私も 「そこを変えるとなると デザイン構成からイジるようになって また費用がかかりますよ?」 と意見した が 聞きやしねぇ(黙) この期に及んで金も時間も融通しない気だろうか… 私は先方に何と言ってお願いしたらいいのさ 誰か代わって頂戴よ(涙)
他の社員さんにも口添えしてもらって ひとまず本の発売に合わせたUPでは簡易的な修正で我慢してもらって その後時間を使って本修正したものを差し替えUPするという方法で納得してもらうことにした この案件はこれにて終了 早速業者に連絡だ!と思っていたら 2件目の案件に突入してしまう
「次に事務所移転の件ですが」 お!来たね 本当はこの話がしたかったんでしょ どうするか決めたのかな? 「僕は新宿の物件がいいと思います 理由は…」 駅から近くて銀行等の金融施設も周辺に揃っている 築が新しく見栄えが良いし 新宿から2駅という交通便の良さを殊更に強調する そして客を招いたときのステイタスも充分だと とにかくもう そればかり
「という訳なので皆さんそれで良いですか」 「良くありません」 社員さん達の間髪空けない返事に 私の方が面食らった まぁ私も「良いですか」と言われたら「良くはないです」と言うだろうけど
「どうしてです」 「ですから----」 はい またエンドレス ですね
様相はまるっきり社長VS社員の図 民主的に話し合いで決めようという姿勢できた社内が 社長の独断か多数決か の二者択一になってきて 双方譲る気配は全くなし
「一体社長はどうしたいんですか?ワンマンで決めるのか 多数決で決めるのか…」 「なんで多数決になるんですか!社長は僕ですよ」 「じゃあ社長の独断で決めるってことですね?」 「なんでそうなるんですか」 「我々が意見を言っても聞いて頂けないんじゃ議論しても無駄じゃないですか」 「意見を聞かないなんてよくそんなことが言えますね!あなた方散々言いたいこと言ってるじゃないですか!」
あ キレた?
「普通だったら話し合いなんてしないで社長がこう!って決めちゃうもんでしょう?それをこうして議論の場を設けているのに 意見を聞かないなんてよく言いますね!」 「…言い方が悪かったですね“意見を聞かない”は撤回します ただ僕が言いたいのはお互い歩み寄りをしなければ永遠に終わらない話だと…」 「歩み寄りってなんですか」 「や ですから…」
“意見を聞く”って言っても 社長の場合は物理的な“音”として聞いてるだけじゃん?(苦笑)我々の言ってる意味を理解しようとはしてないよね? 言ってる言葉を聞いてやれば あとは自分の発言を押し通しても良いって 思ってるでしょ まぁ別にそれでも良いんだけどさ私は
結局 社長の会社だし 社長が「こう決まりました」と言ってきたら「そうですか」と言いますよ 所詮は社員ですからね でも「これで良いですか」と聞かれたら「良くはないです」と答えるよ だって“意見”はそうだもの 通る通らないは別の話で 自分の意見がこうであると主張できるんだったら そう言うよな
今 社員さんは そういうこと 言ってるんじゃないの?
この押し問答が この後3時間つづくとは 誰も予想していなかったのだろうか…(汗) 仕事残ってるんだってばーッ! 向こうの部屋で自分の携帯が鳴っているのが解った 着メロからして妹だろうなと思い当たったが この雰囲気の中携帯など取りに出られる訳もなく 間を空けて3度程鳴った携帯を 気にかけてくれた社員さんが「これちゃん大丈夫?」と小声で耳打ちしてくれてても だ
結局20時過ぎまでかかって この押し問答はなんの結論にも達せぬまま 社長の「じゃあこの話は全部ご破算です!また新しい物件を1から探し直しましょう 以上!」
ぎゃー! ここまで粘っておいて ぶっちゃかしか!
いい加減付きあうのが嫌になってきた私は 「じゃあサイトの件はこれから先方に連絡しますね!時間ないですから」 と席を立った 一応話は終わったことになっていたので 社員さんたちもトイレに行ったり お茶を淹れに行ったり 一度は解散したのだが 数分後再び会議室に呼び戻されていた が 私には声がかからなかったので 敢えてこちらからは無視を決め込み 黙々と業者宛のメールを打ちつづける
再び同じ議題で話し合っているのか それとも別の仕事の話をしているのか 私には解らないが 移転先のことはもう好きに決めてもらって構わないと思っていた どのみち従うしかない立場だし それでも嫌なら会社を辞めたら済むことだ
以前から薄々考えていた 会社を辞めて何かを学びに学校でも という漠然とした選択肢が にわかに輪郭を強くする 残るべきか 去るべきか 丁度良いから来春までにちゃんと考えよう
『ちいさい秋みつけた』童謡
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