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やすみ日記
梅子
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2020年04月22日(水)
谷垣健治さん(アクション監督)トーク

2014年に書いた、ヒストリカ映画祭トークレポです。
谷垣健治さん(「るろうに剣心」アクション監督)のトーク2本。
「酔拳2」「座頭市 血煙り街道」
今は映画祭HPには載っていないので、自分のブログに掲載しました。

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2014年12月13日、「酔拳2」上映後、「るろうに剣心」アクション監督の谷垣健治さんによるミニトークが行われました。
聞き手は、東映の高橋剣さんです。

谷垣:この前に上映した「座頭市 血煙街道」と、「SPL/狼よ静かに死ね」は、何もない中でのアクションで、この「酔拳2」は、逆に色んなものを詰め込んだアクションです。炎あり小道具あり武器ありで。

いま発売中の雑誌「BRUTUS」で、歴代の映画トップ3というテーマで、「るろうに 剣心」のスタンド・コーディネーターの大内貴仁と対談したんです。
僕と大内は意見が一致して、ナンバー1に「酔拳2」を推してます。ナンバー2も一致しました。「SPL」です。

ジャッキーは、「酔拳2」に色々盛り込まざるを得なかったんだと思います。
自分の代表作で、15年ぶりに撮る続編ということもあって。

撮影中に色々ありました。ラウ・カーリョン監督が途中で降りて、ジャッキーが自分で監督しました。

僕は93年から香港に居るんですけど、「酔拳2」にエキストラで出てます。

ちょっと残念だったのは、今日見た日本版は、香港版よりもちょっと短いんです。それと、シネスコじゃなくてビスタのサイズだから、両端が切れてます。

「るろうに剣心」の撮影に入る前に、4日間、大友監督にプレゼンしました。
うちのアクションチームはこういうことができます、ということを。
その時に、大友監督は色んな可能性を感じてくれたと思うんです。

3日目に大友監督から「午後用事あるんで、抜けます」と言われました。
行き先を尋ねると「NHKに行って、辞めてくるわ」と。
僕はそれまで、NHKの職員と映画監督を兼任すると思っていたので、ビックリしました。

大友監督が言ってたのは、「『酔拳2』の、技を覚えてやってるのではない感じ、剣心でできないか?」ということで す。

「酔拳2」を見てもらったら分かるとおり、酒飲み出してからは技を覚えてやってる感じじゃないですよね?映画の全部がアクションとも言えるし、全部が芝居とも言えるんです。

こういう映画がなぜ日本でできにくいかというと、「脚本をどこまで尊重するか?」というのが問題です。日本だと脚本って、ト書きは少なくセリフは正確に書いて、演出部が1ページ1分とかで時間を計算します。

「酔拳2」は脚本にすると、ペラペラだと思います。これを日本の演出部に渡すと、「セリフ少ないんで、アクションはこれだけ」と言われ、アクションがスカスカになると思います。

香港は脚本があるにはあるんですが、そこまで尊重されない。アメリカもそういう部分がありますね。

「クリフハンガー」は、15分くらいセリフが無くて、山を登っているだけ。
セリフなくても間を持たせられるくらい、スタントコーディネーターに権限が与えられてるんです。

日本には、映画はセリフで成立してるという考え方があって、どうしてもアクションが短くなってしまう。

「酔拳2」は、最後の製鉄所のシーンだけで、撮影に2ヶ月かかってます。
香港の映画は、最後のシーンは最後に撮るんです。最初に撮ってしまうと、変更が効かないので。
僕がいた、宝石を盗まれるシーンではペラペラの台本があるんですが、製鉄所のシーンになるとも う台本はないと思います。

この映画の前に、監督協会の募金のために作られた映画が「ツインドラゴン」で。香港のほとんどの映画監督がいろんな役で出てるんです。その後、スタントマン協会の募金のために「酔拳2」が作られました。

「酔拳2」の頃は、ワイヤーが消されてないんです。色んな方法で見えないようにしてます。照明をベタで当てたりとか、ワセリンで消したりとか、滑車に手ぬぐい巻いて隠すとか。

見る人が見れば、ジャッキーがどこを撮って、ラウ・カーリョン監督がどこを撮ったか分かると思います。
1番最初に撮影したシーンが、二人がお茶飲んでて斧で襲われるシーンなんです。この辺、ラウ・カーリョン監督っぽいですよね。

宝石泥棒のあたりは、途中でロケ地変わってます。このあたりからジャッキーが撮ってます。最後あたりは、「酔拳2」って言うより、「ヤングマスター 師弟出馬」っぽい。

「るろ剣」を撮る時、青木崇高に、参考に見せたんですよ。
熱くなりすぎて、敵が居る方向に向かっていくんじゃなくて、手近にあるものを壊してしまうっていう風に、演じて欲しくて。
本人には言わないんですが、「お皿割ってくれたら嬉しいな」と思い、近くに皿を積みました。

青木に、他に見せたのが「スパルタンX」。スタイリッシュにアクションをやるんじゃなくて、「これでもか!」っていう熱い感じを出したくて。

今日見た4本の映画は、全部、身体張ってやってる感じがします。
「キートンのセブンチャンス」も、さりげなく見えるけど、あの影でキートンがやってることを想像すると、凄いと思いますし、「百地三太夫」で真田広之さんがあの肉体を作るのに、どれだけ労力をかけたのか考えると、感動します。

ダメな女優の場合、30秒前に言われたポーズを、そのままやってるだけっていうことが凄く多いです。身に付いてないアクションをやっちゃってる。
アクションを間違えずにできたら、それでOKっていう。レベルが低いと思うんです。

セリフを覚えてくるのは当たり前じゃないですか。そこから、どう言うか? というのが大事なわけで。

アクションも、覚えてその通りにやるのは当たり前で、そこからどう表現するかが大事です。

「るろうに剣心」を作る時、佐藤健はそれを理解していました。
佐藤健が実行して、皆がそのレベルについて行くので、全体のクオリティがガンと上がりました。普通なら流して演じるところを、彼らは流さなかったのです。

本来なら、監督とアクション監督、二人監督が居るっていうのは、おかしな事です。
日本でアクション映画を撮る時に、どうしてアクション監督が必要 なのかと
言うと、そうしないと最後まで関われないから。肩書きがスタントコーディネーターだと、「どうして仕上げまで居るの? 編集まで来るの?」って言われちゃう。アクション監督だったら「来る権利ある。最後まで責任持つ」って言えるわけです。

本当だったら、監督一人で良いと思ってるんですけど、アクション監督がいないと、パートのつながりが変になることが多いんです。
いくらアクションだけ良くても、ストーリーがちぐはぐだったりしたら、全然駄目だと思っています。

ドニー・イェンは「かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート」と「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」が教訓になったそうです。
この2作は、アクションシーンだけ見ると、派手で凄く良いんです。でもドラマ部分が、それに追いついてない。

「イップ・マン 葉問」は、アクションシーンは地味なんですが、ドラマ部分が良いから、1本の映画としてはこちらの方が一般的に評価されてる。

山崎貴監督がよく言ってるのが「VFXが良いだけの映画はダメ」ということ。
アクションも同じです。

僕らがいくらアクションを頑張って作っても、いい役者・いい監督に出会わないと、良い作品は作れないですね。

高橋:WOWOWで、特集番組を作られてましたね。「アクションもできるクリエーターだ」という紹介をされていて。

谷垣:僕も制作する側の人間なので、出来上がった番組は見ないんですよ。自分だったらこうする、とか色々気にしてしまいそうで。明日は大変なことになりますね。体力を奪う「るろ剣」一挙上映!

高橋:「いつ、飯を食うんだ?」とお叱りをいただいております。

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2014年12月13日、「座頭市 血煙り街道」上映後、「るろうに剣心」のアクション監督の谷垣健治さんによるミニトークが行われました。聞き手は、東映の高橋剣さんです。

谷垣:87分っていい尺ですよね。質感もいい。
時代を経ても輝きを失わない。今見るから、更に良いですよね。
俺だったら、あの速さで殺陣をやるんだったら、刀の長さ半分にしましょうって言いたくなります。凄いです。

三隅研次監督は、もっと評価されても良いはずです。
ジェフリー・ファルコンが「三隅監督はフジカラーを使うから、俺も使う」って言ってました。
クリストフ・ガンズも同じで、三隅監督ファンでフジカラーなんですよ。

キャストを探す時の話です。勝プロの常務の真田正典さんが、東映に
近衛十四郎さんを訪ねて行ったら、「素浪人 月影兵庫」のセットがベニヤか
っていうくらい粗末で。その時、真田さんは「近衛さんは座頭市のオファーを受けるだろう」と、思ったそうです。東映さんには申し訳ないんですが、大映のセットは、東映よりちゃんとしてるので。

アクションって、縦のラインで撮るか、円を描くラインで撮るか、なんですよね。縦のラインは名作が多い気がします。「ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳 武館激闘」の、どんどん狭い場所へ移動していくとか。

アクションって、制限された空間の方が面白いんです。「座頭市」だと市が転んだりしますよね。

アクションで一番困るのは、何にも無い荒野で撮ることです。
「座頭市」だと斬ってすぐ、背中を壁につけて、敵が180度の範囲にしか居ないという状況を作りますが、荒野だとそれができません。展開を繋げていくのが難しいのです。

「るろうに剣心」でも、勝新太郎さんの作品は凄く参考にしました。
この映画に限らず、立ち回りの完璧さとか綺麗さを求めなくて、本当に戦ってる感じがするんです。

ジャッキー・チェンやジェット・リーは、 完全に息の合った伝統芸です。
「座頭市」が香港でウケたというのは、そういう伝統芸とは違った、「間」のある殺陣が新鮮だったのだろうと思います。
ブルース・リーも、「座頭市」の影響を受けていると思います。
「座頭市」のキャストに勝村淳さんがいますが、勝村さんは「ドラゴン怒りの鉄拳」に出ています。

ブルース・リーが何で香港でウケたかというと、立ち回りが短かかったからです。京劇みたいな長い立ち回りじゃなく、「ホァ!」と一瞬で片がつく。

「SPL/狼よ静かに死ね」という映画で、路地でスティックとナイフで戦うシーンを撮った時も、参考にしました。立ち回りに見えない立ち回りをつくると
いう意味で。

自然に撮りたいとは言っても、俳優に「好きに戦って」と指示しても絵にならないんです。動きは決めるけど、「決められた動きを
なぞってる」という風には見せない。「座頭市」はそういうところが凄い。

ラスト、勝負がつくまで3カットくらいですよね。市と交差して、その後、近衛さんが奥から来て、おっかけてきてまた交差して。
名勝負なんだけど、1、2分で片がつく。
僕がやったら、300カットくらい撮ると思う。3カットで撮るっていうのは、自信があるんですよ。

刀の斬り合いって、至近距離ですれ違ったら、刀持ってない方の手の掴み合いに変わるんです。
それを避けようとすると、近衛さん の刀が長いから、逆手の勝さんより遅い。だからスっと避ける。感覚的には「背中で避けてカッコイイね」
という風に見えるんだけど、ああ動くのは理由があるんです。

「るろうに剣心」の外印は、逆手だから、剣心の中に中に入ろうとする。
剣心は両手で刀を持ってるから、どんどん遠ざけようとするんだけど、外印はまとわりついてくる。
剣心も怒って、途中で逆手に持ち変える。逆手と順手の使い方って、面白いんですよ。

福山雅治さん演じる比古清十郎が、剣心の腕を絡めて、戦うんです。
その後、剣心が比古がやった技を、宗次郎にやるんですよ。
技を受け継いでる感じが、出るといいかなと。やっぱり刀だけだと 飽きるんです。

刀をパンと合わせて、すれ違った後、どうするんだということを、考えてます。
刀を合わせたとき、足はガラ空きですから、崩しようがあるなとか。

近衛さんは「座頭市」の撮影中、朝「今日も勝のやつをいじめてくる」と
言ってから家を出たそうです。
現場では殺陣師もいましたが、二人で打合せして動きを決める部分もあったようです。

勝さんは「本当に斬りに行ってる感じ」が上手いんです。
スマートにスっとやるんじゃなくて、全身を使ってぶつかるように斬るイメージで。
ビートたけしさんが「逆手はフォークボールを投げる感じ」って言ってましたけど、まさにそんな感じ。

お客さんは頭がいいので、本当に死んでない、斬られてないというのは分かるわけです。
それで、僕らがどこで頑張るかと言えば、一瞬でも「痛そう」と思わせること。

ビートたけしさんが言うところの「バサっと斬るんじゃなくて、うっ…ぐ! って溜めて、肉の挟まるような感じを出す」ということです。

「座頭市千両首」も映画祭の上映候補に挙げてました。壮大な兄弟喧嘩で面白いんですよ。DVDも出てるんですよね。

「子連れ狼」も今見ると良いですよね。時代劇のセオリーにはまってなくて。
忍者がスキーで出てきたり。側宙も、JACの人がやるような綺麗なのじゃなく
て、運動神経だけで強引にやってる感じで。そういうのが心に響くんです。

「龍の忍者」のオープニングは、浜辺から忍者が大勢飛び出してきて、駆けていくというものなんですが、「子連れ狼 三途の川の乳母車」でも同じ
シーンがあります。こっちが元ネタなんですね。

僕は、キートンより先にジャッキーを観て、「三途の川の乳母車」よりも先に「龍の忍者」を観てます。影響を受けた作品→元ネタの順ですね。
それで今、日本に来てへんてこな時代劇を作ってるわけです(笑)

山崎貴監督と話した時に、監督は「鬼武者」のオープニングムービーを作ってるんですが、「刀って思ってたより、キャラを表現できるんだね」って言ってました。

残酷に見せようと思ったら、足の筋を斬ったりすれば、そう見えます。
逆手か順手かで、距離感が変わりますから。
「座頭市」は逆手だから動きが速い。回転が小さいから。