「近代日本のセクシュアリティ 第30巻 同性愛のルポルタージュ」 「エロ・グロ男娼日記」昭和6年の小説。 「男娼の森」昭和24年の小説。 「ゲイ」昭和33年エッセイ。 を収録。
「男娼の森」昭和24年の小説。東京・上野の女装男娼たち。 男娼には元復員兵が多い。警察に捕まった時に「軍で上官に男色を強要されたせいでこうなったんだ」と逆ギレしてる。
新人が「痔の薬買いたいからお金貸して」って言ったら、先輩は「うしろを使っていたの? それは恋人のためにとっとくものよ。商売ではテクニックを使わなくちゃ」と助言。
一度客として来た学生さんが、男娼を忘れられず「結婚してください」って申し込みに来て「私、男なんだけど」と言ったら、仰天。 「僕は童貞なんでしょうか、それとも…」と訊くので「立派に童貞です」と返事。
吉田→およし、など、苗字から、今の商売名つけてる人が多い。
主人公は、お照さんという元役者。 新人娼婦が「お客さんが私を脅して、お金を払おうとしない」って泣きついて来た時に、 客の腕をガッと掴んで「古着屋呼んできて!」と言い、身ぐるみはがして代金を回収する。 女性や子どもに優しくて、強くて素敵です。 お照さんたちが集う、鐘山亭という腰掛茶屋、今も実在するらしい。
あとがきで「3年の地下街での浮浪者生活を経て、本が出た時『きっと評判になってるはず! 褒められたい!』と上野に行ったけど、皆、明日の飯が食えるか否かの生活なので、誰も小説を読んでなかった」とありました。
先輩の「役割がハッキリ決まってる子は、彼氏と長続きするけど、ドンデン(リバ)の子はすぐにダメになるわ! 関係が安定しないのよ!」って助言も出てきて、そうなのか…と思いました。
絵描きが「エロ絵を描く事になった」ということで、同居人の男と一緒に、裸で絡んでポーズ考えたり。
お照さんとかは、銭湯に入るとき、胸までタオルで隠して女湯に入ってたんだけど 元復員兵の女装集団は、顔は女のまんま、堂々と集団で男湯に入っちゃったということでした。
お照さんは、輪タク運転手の脚本家と知り合い、劇団の立ち上げを援助するのですが、その劇の内容が男娼を馬鹿にしている! と言って、別れてしまいます。
しかし、およしさん達、元復員兵は「これは私たちの気持ちを代弁してるわ」と上映に賛成。
****** 「ゲイ」(昭和33年 エッセイ) 男娼が行為後も男ってバレないのは何で? と思っていたら、 「男である証拠を、晒木綿の腹帯の下へきつく巻き上げ、胸のブラジャーにパッドを入れ、一指も触れさせないために、ベッドの中で、相手の首に手をやってきつく抱きしめている」とありますね。
あと「めおとの仲になった男娼と情夫には掘る習慣があるが、客へのサービスではやらない。客へのサービスはshakuhachiでありsumataであり指先の○スターベーション術である」とあります。
********* 「エロ・グロ男娼日記」昭和6年の小説。 浅草の女装男娼(22歳)愛子ちゃんの日記という設定の小説。 客のイケメンを好きになって「もう半月も会いに来ない」と涙したり、 お客さんと車で京都に行って、旅館に泊まって一緒にお風呂に入ったりもしてる。
女だと思った客に、すね毛見せたら驚かれたり、 うっかり警官に声かけちゃって、10日間留置所に入れられる(女子の独房へ)、 ブサメンに「妾になってくれ」と言われて「わらじを裏返してたわしでこすったみたいな顔して何言ってたんだ!」と思ったり。
若い男に色目使ってもスルーされるけど、おっさんは視線送っただけで、がっつり食いついてくるとか。 最初、女性として商売しようとしたけど上手くゆかず、女装の男と開き直ったら、返って客がついたとか。
友禅モスリン長襦袢、錦紗の羽織、断髪にアイロンでカール、ファッション可愛い。
***** 「近代日本のセクシュアリティ 第30巻 同性愛のルポルタージュ」は大きな図書館なら入ってる可能性ありますので、地元図書館で頼めば、取り寄せしてもらえると思います。
エロ・グロ男娼日記だけなら、国会図書館デジタルコレクションでも読めます。 ネットで一般公開してなくて、最寄りの図書館に行って申し込みすると、読めるそうです。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1137266
|