2005年08月11日(木) |
【オンライン掌編】そして俺も、死ぬ |
本日の感想は、ネジ子さんの【そして俺も、死ぬ】です。 終戦記念の夏にぴったりの9ページ掌編です。
戦場で家族のことを思いつつ戦う主人公、そして戦友たち。 やがて戦争が終わり、主人公が行き着いた先は……。
まえにもたしか、ネジ子さんの作品で、戦争の虚しさを感じさせるような作品がありましたが、今度の作品は、少し現実の世界に近い設定だけに、余計に強く感じます。
多くの人が平和を願うときに、これ以上犠牲者を出さないように……と思うはず。 親兄弟、子供を殺された悲しみは、何年経っても消えないものかもしれません。 戦争をテーマにした作品には、被害者の悲劇を描かれるもの多いですが、この作品は加害者の悲劇を描いた物と言えます。 (いや、どこにも加害者とはかいていないんだけど……戦勝国ということで)
つまり、戦争に勝者はないんですよ。 この作品には、友人の肉体的な死と自分の人間としての死が描かれています。 タイトルにセンスが光りますね。 ラストの落ちも見事で、ああ、なるほどね……と、納得でき、薄ら寒さまで感じました。
私は、ちょこっと【ランボー】を思い出しました。(一番最初のです) 戦士としては一流のランボーなのに、戦争が終わってしまうと自分の居場所をなくしてしまい、いつの間にか追い立てられて街を相手に戦うはめに追いやられてしまう。 戦争、つまり人殺しは、いつの間にか人間をおとしめてゆくような気がします。 本当に怖いのは、戦争で負けて国がなくなることよりも、勝っても負けても人間としての安らぎを得られなくなることかも知れません。
無駄なくきれいにまとまった、しかも考えさせるいい短編だと思います。 特に、何かあるんだろうな? なにか【俺が死ぬようなことが】と思わせながら戦勝国の華やかさと安堵を味あわせておいて、わーそうきたか! 本当にやられました。(笑)
皆様にもお勧めいたします。(^ー^)
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