最近、昔読んだもののお話とか、挿絵とかの話をしているせいか、人魚姫のお話を思い出してしまいました。 ……っていうのも、小さな頃、本当に本当に嫌いで嫌いでしょうがなかった話だからです。
【フランダースの犬】ならば、ネロが死んだあと、誤解が解けたり絵が認められたりして、評価されるじゃないですか。そして、みんな悲しむじゃないですか。 ところが【人魚姫】ときたら、王子様はお姫様と幸せになって、彼女のことなんか、気持ちすら理解していない。デリカシーもなければ、真実を見抜く力もない。 ひたすら情けない王子です。(−−; ここで真実さえわかっていたら……と思うと、悲しいよりも悔しくて、読んだとたんに封印したような気がします。 同じ悲劇でも、気持ちのいい話じゃなかった……。 子供心に不条理を感じたものです。
ところが……。 大人になってからの【人魚姫】の評価は、ぐーーんとアップ! 世の中にこのようなきれいな話があるなんて! (;;) 我ながらすごい心境の変化だ……。 なぜだかよくわかりません。よくわからないので、時々思い出しては考えてみるのです。
で、私が思ったことは。 大人の恋を知ったから……(きゃー! いっちゃった!)
想像してみてください。 想い人の心臓を突き刺せば、元の何もしらなかった人魚姫に戻れるのです。 彼女は短剣を握りしめ、眠っている王子の元へと行く。 でも……よく考えれば、それって新婚さんの初夜のベッドではないですか。。。 愛し合い、満ち足りた寝顔で寄り添って、別の女と寝ている彼。 想像したら、逆上して一刺しどころかメッタ刺しして海に帰りたいところです。 でも、彼女はその様子を見て、自分にはそんなことができないと悟り、海に散って泡となる。
なぜ、そんなことができたんだろう? 子供の頃は、そこで刺し殺せばいいじゃないか! と、真面目に思ったものです。 でも、今は彼女の悲しい失恋に、涙するばかりです。 ――人魚姫は、初めから恋の勝負に負けていた。 そして、二人の姿を見て、初めてそれに気がついたのではないか? と思うからです。
王子を助けた時、岩場の影で人魚姫は呟きます。 「あなたを助けたのは、私なのに……」 王子は、自分を助けてくれた娘を探して四苦八苦します。救ってくれた娘に恋をしたから。 「あなたを助けた私は、ここにいるのに……」 言葉さえ話せれば……と人魚姫は思います。 それでも何となく王子の心も人魚姫に向きかけた時に、隣国の姫が現われてしまう。 人魚姫の恋は、あえなく失恋。 「助けたのは私なのに、その誤解さえ解ければ……」
でも、それは違いました。 王子は波間で溺れた自分を助けた人魚ではなく、打ち上げられた時に介抱してくれた娘に恋をし、彼女を探していたのですから。 そして、人魚姫は彼女の身代わりにしか過ぎなかったのですから。 たとえ、本当の命の恩人が人魚姫であっても、恋と感謝は別物です。 本当の恩人は人魚姫でも、本当に愛する人は隣国の姫。 すべてを犠牲にして、王子に愛されることだけを望んでいた人魚姫にとって、この事実はとても酷です。
小学生くらいの時期に考える恋愛は。 相手に尽くせば相手に返してもらえるのが当然の恋。 その上、真実の自分さえ知ってもらえば、きっと愛されると思っている。 昔の少女漫画によくあるパターンが、がさつな女の子がスカートをはいたら、もてもてとか、めがねを外したら美少女だったとか。 いわば、努力しなくても、変身さえすれば恋は叶ったものなのです。 大人になれば、それは妄想だとわかります。 スカートをはいただけや、めがねを外しただけでは、恋は叶いっこありません。 ふりむいてもらいたい! という、不断の努力が時々実を結ぶこともあるだけ。 頑張ってもダメな時はダメなんです。
もしも人魚姫が言葉を話せて、王子に告白できたところで……。 一途な王子は何と返事をするのでしょうか? 「あぁ、私を救った人はあなたですか? では、私はあなたを愛します」 というでしょうか? もしかしたら 「命の恩人を救うためなら、私はあなたと結婚しましょう」 というかもしれません。
必死に捜し求めていた人と巡り会い、幸せの絶頂にいる想い人を、人魚姫は殺すことができませんでした。 彼女は見事なまでに、恋に完敗したのです。 最後に彼女ができることは、彼の幸せを壊すことでも復讐でもなく、消えてゆくこと。 あの結末は、そう考えるとあまりにも必然で、あまりにもかわいそう……。
そんなこんなで、今の私には【人魚姫】のお話は美しい物語になっています。 ……でも、このうんちくは、なぜ美しいと感じたのだろう? との疑問から理由を考えたので、明日には違う考えになっているかもしれません。 (^−^; 人間、日々変わってゆくものです。 子供の頃の私の考えも、捨てたものじゃない立派な感想であると同じく……。
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