本日の感想文。

2003年07月30日(水) 人魚姫のお話

最近、昔読んだもののお話とか、挿絵とかの話をしているせいか、人魚姫のお話を思い出してしまいました。
……っていうのも、小さな頃、本当に本当に嫌いで嫌いでしょうがなかった話だからです。

【フランダースの犬】ならば、ネロが死んだあと、誤解が解けたり絵が認められたりして、評価されるじゃないですか。そして、みんな悲しむじゃないですか。
ところが【人魚姫】ときたら、王子様はお姫様と幸せになって、彼女のことなんか、気持ちすら理解していない。デリカシーもなければ、真実を見抜く力もない。
ひたすら情けない王子です。(−−;
ここで真実さえわかっていたら……と思うと、悲しいよりも悔しくて、読んだとたんに封印したような気がします。
同じ悲劇でも、気持ちのいい話じゃなかった……。
子供心に不条理を感じたものです。

ところが……。
大人になってからの【人魚姫】の評価は、ぐーーんとアップ! 
世の中にこのようなきれいな話があるなんて! (;;)
我ながらすごい心境の変化だ……。
なぜだかよくわかりません。よくわからないので、時々思い出しては考えてみるのです。

で、私が思ったことは。
大人の恋を知ったから……(きゃー! いっちゃった!)

想像してみてください。
想い人の心臓を突き刺せば、元の何もしらなかった人魚姫に戻れるのです。
彼女は短剣を握りしめ、眠っている王子の元へと行く。
でも……よく考えれば、それって新婚さんの初夜のベッドではないですか。。。
愛し合い、満ち足りた寝顔で寄り添って、別の女と寝ている彼。
想像したら、逆上して一刺しどころかメッタ刺しして海に帰りたいところです。
でも、彼女はその様子を見て、自分にはそんなことができないと悟り、海に散って泡となる。

なぜ、そんなことができたんだろう?
子供の頃は、そこで刺し殺せばいいじゃないか! と、真面目に思ったものです。
でも、今は彼女の悲しい失恋に、涙するばかりです。
――人魚姫は、初めから恋の勝負に負けていた。
そして、二人の姿を見て、初めてそれに気がついたのではないか? と思うからです。

王子を助けた時、岩場の影で人魚姫は呟きます。
「あなたを助けたのは、私なのに……」
王子は、自分を助けてくれた娘を探して四苦八苦します。救ってくれた娘に恋をしたから。
「あなたを助けた私は、ここにいるのに……」
言葉さえ話せれば……と人魚姫は思います。
それでも何となく王子の心も人魚姫に向きかけた時に、隣国の姫が現われてしまう。
人魚姫の恋は、あえなく失恋。
「助けたのは私なのに、その誤解さえ解ければ……」

でも、それは違いました。
王子は波間で溺れた自分を助けた人魚ではなく、打ち上げられた時に介抱してくれた娘に恋をし、彼女を探していたのですから。
そして、人魚姫は彼女の身代わりにしか過ぎなかったのですから。
たとえ、本当の命の恩人が人魚姫であっても、恋と感謝は別物です。
本当の恩人は人魚姫でも、本当に愛する人は隣国の姫。
すべてを犠牲にして、王子に愛されることだけを望んでいた人魚姫にとって、この事実はとても酷です。

小学生くらいの時期に考える恋愛は。
相手に尽くせば相手に返してもらえるのが当然の恋。
その上、真実の自分さえ知ってもらえば、きっと愛されると思っている。
昔の少女漫画によくあるパターンが、がさつな女の子がスカートをはいたら、もてもてとか、めがねを外したら美少女だったとか。
いわば、努力しなくても、変身さえすれば恋は叶ったものなのです。
大人になれば、それは妄想だとわかります。
スカートをはいただけや、めがねを外しただけでは、恋は叶いっこありません。
ふりむいてもらいたい! という、不断の努力が時々実を結ぶこともあるだけ。
頑張ってもダメな時はダメなんです。

もしも人魚姫が言葉を話せて、王子に告白できたところで……。
一途な王子は何と返事をするのでしょうか?
「あぁ、私を救った人はあなたですか? では、私はあなたを愛します」
というでしょうか?
もしかしたら
「命の恩人を救うためなら、私はあなたと結婚しましょう」
というかもしれません。

必死に捜し求めていた人と巡り会い、幸せの絶頂にいる想い人を、人魚姫は殺すことができませんでした。
彼女は見事なまでに、恋に完敗したのです。
最後に彼女ができることは、彼の幸せを壊すことでも復讐でもなく、消えてゆくこと。
あの結末は、そう考えるとあまりにも必然で、あまりにもかわいそう……。

そんなこんなで、今の私には【人魚姫】のお話は美しい物語になっています。
……でも、このうんちくは、なぜ美しいと感じたのだろう? との疑問から理由を考えたので、明日には違う考えになっているかもしれません。
(^−^; 人間、日々変わってゆくものです。
子供の頃の私の考えも、捨てたものじゃない立派な感想であると同じく……。




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