三崎綾+☆ 綾 姫 ☆の不定期日記
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☆ 綾 姫 ☆
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短編小説 日本刀と拳銃 part3
2011年02月07日(月)
「社長!!」
「頼むぞ」 社長が事務所に電話をして、元レーサーの運転手を呼んだ。 「百合子のマンションまで急いでや」 「解りました。姉さんこれ組長からです」油紙に包まれた拳銃だった。 「ありがとう」 「わし姉さんの生き方好きですねん。絶対姉さんの事は守ります」 「すまんなぁ」 組長からのプレゼントを、そっと鞄にしまった。 たばこを吸って携帯から百合子の部屋に電話をした。 呼び出し音は鳴るが誰も出ない。 「もう逃げられたのか?!」 百合子のマンションについた。入り口では管理人と不動産屋が待って居た。 運転手の男は、胸元に拳銃をしのばせて、私の後ろにピタッと引っ付いて居た。 「ママ、引っ越し屋ではありませんでした」 「何?!」 「何でも屋ですは。何でも屋に荷物の処分を依頼したそうですは。すでに本人は飛んだ後です」 部屋に行くと、何でも屋が荷物の整理をして居た。運転手の男が何でも屋の胸元を掴んで聞いた。 「おいっ!!依頼主の連絡先は?」 「それが解らないんです。2週間前に店に来て頼まれたんです。2週間後、此処の荷物を処分してくれと。お金は店の取り分を引いた残りをこの店に持って行ってくれと頼まれたんです」と1枚のメモを差し出した。 私の店の住所と電話番号が書かれて居た。 「処分していくらになるんや」 「店の取り分を引いたら3万ほどです。金目の物はほとんど無かったですし」 怒りに手が震えた。私が絶対に見つけだしてやる!! 「帰ったか。で百合子は?」 「逃げられました」 「そうか。どうするんや?警察はあかんぞ」 「解ってます。私が探します。少し時間下さい」 「解った。頼むぞ」 「銀行は?」 「口座には金が残ってた。700万そのままや。すぐに口座の凍結をしたから大丈夫や」 自宅に戻って「名刺入れ」を取りだした。何時もは封印されて居る名刺入れ。 これを使う時は、最後の最後だと思って居た。 ある事務所に電話をした。 「綾姫です」 「姉さんお久しぶりです。少々お待ち下さい。今、組長に代わります」 「お〜久しぶりやなぁ。元気やったか?」 「組長に頼みがあります」 「何や?取りあえず食事でもしようや。話はその時に」 「はい。では6時間後に何時もの料亭で宜しいでしょうか?」 「解った」 社長に電話をした。 「運転手1人来させてくれる?」 「遠出か?」 「うん。本部行って来るわ」 「さっきの奴に行って貰うわ。まだ外で待機してるから」 「解った。じゃあ1時間後に」 1時間後、運転手が来でチャイムを鳴らした。 私の姿を見て一言。 「姉さん、横浜ですか?」 「すまんなぁ、遠いけど頼むわ」 「何処までも姉さんについて行きます。絶対に姉さんを守ると言いました」 「ありがとう」 プレジデントの後部座席に座った。 「此処から3時間はかかります。少し休まれたら良いですよ」 「時間指定やから、4時間で何時もの料亭についてな」 「4時間もあれば十分です」 「頼むで。私は少し寝させて貰うわ」 到着10分前まで、熟睡していた私を運転手が起こした。 「姉さん、後10分で到着します」 「わかった」 化粧を軽く直して、身支度を調えた。 料亭の前についた時には、すでに10人ほどの護衛が来ていた。 「姉さんお久しぶりです。決まりですから失礼します」と言った。 そして若い衆の女が出て来た。 「姉さん初めてお目にかかります。以後お見知り置きを」 「初めまして。私は気質の人間です。こちらこそ宜しくお願いします」と頭を下げた。 そして私のボディチェックをした。 料亭は何時もの如く貸し切りになって居た。 この料亭は大手財界人御用達の店となって居て、セキュリティーも万全だった。 何より従業員は口が堅いので有名。 「姉さんタバコ以外はすべて預からせて頂きます。菓子折は中身をチェックして後でお部屋に届けます」 「解った。ありがとう。長旅で疲れているので運転手に部屋を用意してやって」 「解っております」 運転手が言った。 「姉さん、わしは側に置いてくれへんのですか?」 「気持ちだけ貰って置くわ。そやけど此処から先はあんたも知らない方が良いし。マッサージの女の子が来てるはずやから適当に気分転換でもしとき」 「解りました」 料亭のおかみが出て来た。 「まぁお久しぶりです。綾姉さん」 「おかみさんも元気そうで何よりです」 「綾姉さんも、ますます貫禄がつきまして」 「おかみさんも、ますます良い女になって」 「おおきに」 「姉さんこちらで組長がお待ちです」 そして店の一番奥、VIP専用隠し部屋に通された。 「組長、姉さんが来られました」 「入れ」 「失礼します」 30畳ほどの部屋に、高価なテーブルと椅子があり、 掛け軸だけでも、数千万と言われる部屋。 「組長、お久しぶりです」 「遠い所、良く来たなぁ。まあ入りなさい」 「有り難う御座います」 「みんな出て行け。後はわしと綾ちゃんの2人にしてくれ」 「解りました」 たばこに火をつけたり、灰皿を代えたりする身の回りのお世話は、 料亭の女将さんがしてくれる。 みんなが出て行くと、顔をほころばせて 「綾ちゃん〜元気やったんかぁ」何時もの親父顔になって居た。 「おっちゃん元気やったん?」 「お〜わしは元気やったぞ」 この組長さん。とてつもなく偉い人で、私みたいな子供が話を出来る相手では無いのだが、実は私がクラブに勤めて居た頃の指名客で私の歌のファンだった。 何時も私の歌を聴いて、綾ちゃんの歌には悲しみがいっぱい詰まってると言っては、おいしい物を食べに連れて行ってくれて居た。 「なんか綾ちゃんには何でも話しが出来てしまうなぁ。不思議な人や」と言って。 愚痴も聞いた。涙も見た。そんな間柄だった。 「まぁ食べようや。お腹空いたやろ?」 「うん」 「おかみが、綾ちゃんの好きなお刺身とすしをいっぱい準備してくれてるからな」 「おかあちゃんありがとう」 「綾ちゃん、いっぱい食べてね」 実はこのおかみさん。組長さんの愛人なのだ。 これは本妻さんには内緒。 私は「おかあちゃん」と呼んで居た。 おかあちゃんが言った。 「綾ちゃん、パジャマに着替える?」 「うん」 そういうと、パジャマを出して来てくれた。 「綾ちゃんの好きなブランドのパジャマよ〜新しいのを買って置いたから」 「ありがとう」 と言って、おかあちゃんと組長の前で裸になって着替えた。 「こんな姿、子分達には見せられないよねぇ」 「そうだなぁ」 組長と言う名の「おっちゃん」と「おかあちゃん」笑って言った。 お腹いっぱいになって、一息ついた頃おっちゃんが言った。 「で、何を頼みに来たんや」 「うん。人捜し」 「で、生きて捕まえるんか?死んでても良いんか?」 「生きて捕まえて」 「解った。後は組の者と話してくれ」 「うん」 「わしはおかあちゃんの部屋に行って来るから、若い衆の女がおったろ?そいつとパチンコでも行って来たら良いわ」 と言って、お財布から100万円の束を出した。 「要らないってば」 「もって行け。服も買って来い」 「服はいっぱいあるってば。おっちゃんたら何時までも私は子供じゃ無いねんで」 「あはは、じゃあな」 そう言うと2人は別室に消えて行った。 入れ違いに、さっきの若い衆の女が入って来た。 「姉さん、遊びに行きましょう。お供します」 「その姉さんと言うの、やめてくれないかなぁ。私は綾ちゃんだってば」 「しかし。。。」 「良いねんって。綾ちゃんで。それで何処に連れてってくれる?」 「ブティックが10件、宝石屋が5件、パチンコ屋が1件、店の裏口を開けて待ってますが、何処が良いでしょう?」 「そやなぁ。散歩に行こうか?」 「散歩ですか?」 「うん。久しぶりにネオンの横浜を歩いて見たいもん」 「解りました。では護衛を1人だけつけましょうか?」 「護衛はいらんわ」 「しかし。。。」 「1人になりたい時もあるやん。肩書き捨てたい時もあるやん」 「そうですね」 裏口からそっとでて、護衛無しで夜の横浜を歩いた。 もっとも護衛が居ないと思って居たのは私だけで、 実際は、3人が後ろからついて来て居たのを全く気がつかなかったのだが。 深夜の横浜は、相変わらずの街だった。 若い衆の女の子は、私の斜め後ろを黙ってついて来ていた。 突然、 「姉さん、お聞きしても良いですか?」女の子が私に聞いて来た。 「なに?」 「旦那を出世させて組を持たせるのが私の夢です。どうしたら良いんでしょうか。私に何が出来るのでしょうか。教えて下さい」 「仕事は何をしてるん?」 「組が持っているクラブに勤めてます」 「給料は?」 「月200万です。一応NO1やってます」 「そうか。。。組には毎月、いくら★★してるねん?」 「50万です」 「わたしが現役の頃には、月200は★★してたなぁ」 「。。。」 「あんたの旦那には、若い衆が何人ついてるのや?」 「5人です」 「その5人に何かがあった時、あんたはその家族を支えて行くだけの収入を稼がないとあかんのやで。でないと若い衆も安心して命預けられないよなぁ。それだけの覚悟があるんかいな?」 「・・・有り難う御座いました。踏ん切りがつきました」 「そうか。。。私に言える事はこれくらいの事しか無いんだけど頑張るんやで。何時か報われる時が来ると思うから」 「はい」 1時間ほど繁華街を散歩をして料亭に戻った。 「姉さん、頭が姉さんの部屋でお待ちです」 「解りました。ありがとう」 おかみさんが用意してくれて居た寝室へ行くと、寝室前の待合室に頭と若い衆3人が座って待って居た。 「姉さんお帰りなさい。何飲まれますか?」 「日本酒のロック。おつまみは何時ものと厨房に頼んでくれる?」 「解りました」 「ちょっと着替えて来るから待っててなぁ」 「はい」 私はスーツを脱いで、パジャマに着替えた。ラフな服の方が緊張感が無くて良い。 「おまたせ」一瞬みんなの顔が固まった。 「なんちゅー顔してるの?」 「いや。。。わしら此処に居ても良いんですか?」 「良いんやで〜ちょっと疲れたから着替えただけやし。あんたらも上着脱いでネクタイ外してのんびりしたら良いわ」 「はぁ。。。」 「良いねんてば」 「解りました」 頭が「おいっおまえらもお言葉に甘えて服を脱ぐんや」「はい」 と言って自分も上着を脱ぎネクタイを外して、正座して居た足を崩した。 「生きたまま捕まえるのは女ですか?」 「そや」 「で、写真ありますか?」 私は一枚の写真を出した。 「ちょっと預からせて頂きます」 若い衆の1人が写真を持って部屋を出て行った。 「何したのか聞いて良いですか?」 「客から金をだまし取って、姿を消したんや」 「損害は?」 「ざっと4000万」 「見つけたらどないしましょう?」 私は黙って首をはねる仕草をした。 「では、わしらがします」 「いや、あかんねん。わたしが自分でするから、生きたまま捕まえて」 「しかし姉さん」 「いや、これは私と私がやってる店のけじめやから」 「はい。解りました」 「資金は私が出すから。菓子折箱の中に1本(1000万)入れてあるからそれで頼むわ」 「いや、組長から受け取るなと言われてますから」 「ほな、あんたの小遣いにしたら良いわ」 「それやったら、わしがおやっさんにしかられますから、持って帰って下さい」 「解った。別の形でお礼させて貰うわ」 「有り難う御座います」 失礼しますと若い衆が入って来た。 頭に耳打ちして出て行った。 「姉さんカメラマンが来ましたけどどうしましょうか?」 「入れてやって」 「はい。入れ」 「失礼します」 風俗雑誌専門のフリーカメラマンが入って来た。 「お久しぶりです。綾さん」 頭が言った。 「われ、誰に物言うとるんじゃ。場所をわきまえろやっ!!」 「頭ええねん。ありがとう」 「はい」 フリーカメラマンに言った。 「この子を捜して欲しいねん」写真を渡した。 「これは、ママの所で働く百合子ですね」 「そや」 「頭に話しをしてあるから、後は頭の指示に従って動いてくれるかな?」 「解りました。では失礼します」 フリーカメラマンは部屋を出て行った。 「では姉さんわしらも失礼させて頂きます。朝は何時に出発されますか?」 「起きたら適当に帰るから、頭達も帰ったら良いよ。組長は?」 「今日はお泊まりだそうです。わしらは別室で寝かせて頂きます」 「そうか。。。ご苦労様でした。お休みなさい」 「失礼します」 みんなが出て行った。 「はぁ。。。疲れた」 深い溜め息をつき、日本酒を飲み干した。 ふと時計を見ると深夜の2時を過ぎて居た。 疲れた。。。お風呂に入ろう。。。お風呂場に向かった。 ふと見ると、運転手が仲居さんの休憩室でテレビを見て居た。 「あんたっ何してるのよ?部屋は別に取ってあったでしょう?」 「あっ姉さん。わし。。。」 「どないしたん?」 「わし。。。」 「どうしたん?」 「部屋に通されたら、女の子が3人おりまして」 「うん」 「1人選べって言われたんです」 「うん、で?」 「誰も選ばないので帰ってくれと言うたんですけど」 「なんや〜気に入らなかったんかいな?遠慮せんで好きなだけ変えたら良かったのに」 「いや違うんです」 「ん?」 「わし。。。」 「うん」 「わし。。。姉さんの事が好きですねん」 そう言って正座をした。 「すんません。今の言葉忘れて下さい。組長にしかられます。でも言って良かったです。これで気持ちの整理が出来ました。わし組長のすすめてくれた人と一緒になります。その前に一言言いたかったんです。すんません」 解って居た。気がついて居た。。。そして。。。 「お酒でも飲もうか、飲めるでしょ?」 「はい」 「何が良い?」 「姉さんと同じ物で」 「解った」 厨房に電話をして酒の支度をさせた。 「私なぁ誰も好きにならないねん。好きになれないねん。此処だけの話にしてや」 過去のことを話し始めた。 独り言をつぶやくように、お酒を飲みながらぽつりぽつりと。 運転手の男は黙ってお酒を飲みながら聞いて居た。 そして一言。 「わしではあかんのですか?わしが姉さんの事を一生守りますから」 「気持ちだけは貰って置くね。ありがとう。また頑張れそうな気がして来た。明日は私が起きたら電話するから、部屋に帰って寝たら良いわ。女の子には私から帰るように言うとくから。ゆっくり寝てね、お休みなさい。」 「お休みなさい」 そのままお風呂場に向かった。 お風呂場から頭の部屋に電話をして、女の子達を帰らせるように言った。 そして露天風呂に入りながら1人で泣いた。。。 |