鶴は千年、生活下手

2011年04月24日(日) 体験に基づいて

もぐちゃんは、生まれたときから階段のない住処だった。
アパートの1階に住んでいるので、日常的に階段に接してはいな
いし、窓から落ちた事はあっても階段から落ちた事はない。
だからだろうか、階段をそれほど怖い場所だと思っていないよう
に見える。
わたしなどからすれば、階段で転んだら一つ間違えば死んでしま
うかもしれないというのに。

木曜日、学校でもぐちゃんは他の子の腰の辺りを押してしまい、
その子は階段を滑るように落ちて行ったのだという。
よく、女性が階段で転んで正座したまま滑り落ちる事があるが、
あんな感じでその子は滑り落ちてしまったらしい。
詳しい事は先生からまだ聞かされていないのだ。
なにしろ、木曜日の給食の準備のときのその事件を耳にしたのは、
金曜日の夕方だったのだから。
押された子のお母さんは、その点に憤っていた。
なぜ当日に連絡がこないのかと。
そのとき、大人は誰もついていなかったのかとか。
押された子のお母さんとは、金曜の夜、土曜の朝と電話で話をし
たが、けがの様子は打撲があるくらいでたいした事はないようだ
ったが、自分で申告しない子どもさんなので、どういうふうに転
んだのかとかどこをぶったのかとか、はっきりしなくてお母さん
は不安がっていた。
そして、自分たちの子は療育を受けていて、それぞれが通常の子
とは異なる学ぶべき事があるんだよねと言ってくれた。
ありがたかった。

わたしも、押した方の親として、相手の子のけがの具合は心配で
たまらない。
そして、なぜそうなったのかを2時間近くもぐちゃんと話したが、
この子達は自分の衝動さえもはっきり把握できる訳ではないし、
こうすればどうなるかという類推する力が未発達なのである。
人を押してしまうのはとても良くない事だが、もぐちゃんは彼を
階段の下に行かせようとしたのだと言った。
早く降りて、という気持ちだったらしい。
なぜ降りてほしかったのかは全くわからない。
ぱっと見、普通の子と変わらないもぐちゃん。
しかし、予測し類推する事は難しい。
他人の気持ちを推し量る事もほとんどしない。

怒った。
激しく怒り、そして懸命に説明した。
階段は駅のホームと同じだよ。
落ちたらけがをするし、死んでしまう事もあるんだよと。

こんな説明の仕方でしか通じないのが、悲しい。


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市屋千鶴 [MAIL]