爪を噛む癖があった。 というよりも、爪切りを使わずに自分の爪で爪を切っていた。 爪の根元もよく剥いた。 よく、血を出していた。
子供が爪を噛むのは欲求不満だからだというが、自分はどうだ ったのだろうか。 会社の事務員さん(年上の女性)も大人になってからも若い頃 は爪を噛む癖があったと言っていた。 わたしは中学生、高校生くらいまでだったろうか。 なにかイライラするものを抱えていたのだろうと話した。
そんな話から、自傷行為の話に発展した。 自傷行為そのものを普通の人はよく知らないらしい。 自分で自分を傷つける行為。 わたしには経験がないから、どういう気持ちだとはっきり言う ことはできなかった。 たぶん、「なぜそうするのか」という問いの答えが出せるとき には、もう自傷することはないのではないだろうか。 なぜなのかわからないから、またやってしまうのではないのか。
わたしの場合、直接的に自分を傷つけたりはしなかったのだが、 自分の体を大事にしなかった。 いつもいつも、選ばれなかった自分が好きではなかった。 自分の体に女としての価値を見出せないでいたから、女として 自分を欲してくれる人には、とてつもなく弱かった。 こんなわたしでもいいなら、どうぞあげますよ、ってな具合。 今だから、なぜそうしていたのかがわかる。 人間として絶対に自分を必要としてくれる確かな存在を見つけ ることができたから。 女としての価値ではなく、一つの個性としての価値を確信させ てくれる人達にたくさん出会えたから。 (何年もかかったのだけれども。)
思いやりだけでは傷は癒えぬから能動的に愛をください (市屋千鶴)
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