「隙 間」

2011年02月18日(金) 大森とめがねのみなみ

昨夜、久しぶりの大森である。

久しぶり過ぎて、といっても三週間ぶりという中途半端な間があいただけなのだが、それでも、その三週間の密度がひと月以上に濃く、重たく、まとわりついていたようなのだから、やはり久しぶり過ぎて、という感覚は間違いではないのである。

田丸さんがいつもより身近に感じる。

これは、近くないからこそ近く感じるもので、そのあたりから、内心そわそわしはじめたのである。

そっと、田丸さんがわたしの手を取り、みつめる。

部屋で、秒針だけが動いている。

わたしはなされるがまま、力を抜く。
そして息を吐いて、目を閉じる。

こくん、と唾液を飲み込むと、

「いつもと変わらず、ほとんど同じなんですね」

手を離し、くしゃりと笑う。

脈拍は、揺るがず、高まらず、淡々と脈打っていたらしい。

体は平常、しかし内心は浮き足立っている。

「何か読んだ?」

イ氏の問いに、「七つのなんたら」と「折れないなんたら」と、これは課題図書で飛ばし読みで、それで内容は十分で。

「対照的な「もしドラ」を読んでしまいました」

へえっ、ずっとベストセラーにランキングれてるよねぇ、と少し興味深いイ氏に、わたしは釘をさしてみた。

「映画化、されるんですよ」

へえっ。
AKBの前田敦子さん主演で。
ほうほう。

作者は、AKBのたちあげに、ちょいと関わってたひとらしいんですよ。
ドラッカーのマネジメントをわかりやすく小説に取り込んだ、てことだけで既にヒットさせてたそのあとに。
AKB主演で映画化、ですもの。
ファンだけでなく、ちょいと興味がある普通のひとたちでも、それが女の子の表紙の本でも買いやすいですもの。

わたしは、物語の人物のモデルになったAKBのメンバーがいるらしいことや。
わたしの膝元に放り込まれた白球の存在や。

それらのことはおくびにもださず、ソラニンを排出してみたのである。

テトロドキシンになりきらない。

やはりどこかカラカラと空しく歯車の回る音がする。

揺り返し

のようであることに、はたと気付いたのである。
そうに違いない。

アクセル踏み込んで、クラッチをスコンと切ったようなものである。

といってこの表現自体が現代のエコカー社会に、はたしてわかってもらえるかどうかあやしいものである。

しかし。

とにかく、エベレストは越えた。
あとは、ギアナ高地かわからないが、そこをえいこらと渡ってゆくだけである。

健康診断の結果をイ氏に知らせると、

あらあ、それは高いねえ、とコレステロール値を下げる薬を処方してくれた。

毎度お世話になります。
肝機能とかは平気だった?
胆石の心配がありましたけど、違いました。大丈夫みたいです。
石はうちのせいじゃないからねぇ。気をつけなさいよ。

ええまあ、と胆汁を噛み締めてみる。
いや、それは噛み締められない。

さぞかし苦かろう、という意味の表現である。

空回っているわたしの顔をみたイ氏は、早々に話を切り上げる。

ああ、ありがたい。

やむなくではない、ぼおっとするひとときが、できる。

ようし、ぼおっと、エケビでもみるとするか。

そんなはずは、ないのである。


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