「隙 間」

2011年02月03日(木) 「シアター! 2」とひとかわ

有川浩著「シアター! 2」

弟の巧が宰相・脚本を務める劇団シアター・フラッグの、三百万の借金を肩代わりしたかわりに、裏の鉄血宰相となった兄の司。

プロの声優・千歳の加入で集客力、そして脚本、演者自体の力が発揮されはじめ、わずかながら利益がひねり出せるようになってきたのであった。

演技派美人看板女優、中途半端な二枚目俳優、熱血俳優、どじっ子、ネガティブ男。

それぞれが、まさに役が立っている。

自分たちの舞台を侮辱されることは、舞台を楽しみに観に来てくれているお客さんたちをも侮辱されていることと同じ。

しかもそれは、単なる個人的な趣味の憂さ晴らし。
閉じた世界で、あぐらをかいた自己満足。

「自分の名前で稼ぐってことは、常に矢面にさらされてるってことだ」

具体的に個人が特定できるなか、その名前で世間の向こうを張ってたつ。

ごまかせない。
逃げられない。

会社や組織の名前なら、それが個人を守りもしてくれる。
しかし、個人は、直接石を投げつけられもする。

「それを、名前を出していないものが一方的に羨ましがって、妬んだりするんじゃない」

名前という商品価値に対する対価と代償。

有川浩作品といえば、ツンデレ人間劇場である。

ツンは、恋愛要素だけてはなく、シビアな社会風刺にもある。

前作のあとがきにも書かれているが、演劇界は独特な表現に難しい閉ざされた社会でもある。

商業的収益を出せる団体組織はほんのひと握り。
だから、

儲からないのは当たり前
自腹で持ち出し当たり前

そんなデレが蔓延している。

鉄血宰相・司の影響がメンバーに浸食しはじめ、泣き虫宰相・巧も意識が変わりはじめる。

借金返済期限も残り一年。
一年後にシアター・フラッグは全額を司に返済し、存続できるのか。

司が劇団から手を引いたあと、そのまま運営を続けてゆける体制になれるのか。

次巻が最終巻、らしい。


王道だが、展開の緩急の巧さ、人物の役回り、さすが「ラノベ界の女王・有川浩」である。



さて。

手の指先の皮が、ひと通り向け替わりました。

人間としても、ひと皮むけたでしょうか?

負荷がもはや、ピークを更に越えてやろうと背伸びをし続けています。

ていっ、小外刈り。
技あっ……有効!

一月の残業時間が、およそ百時間になってしまいました。

「二月はこんなに働かなくて済むようにしようね」

管理者の、そして大学の先輩にあたる小道さんに、慰め顔で判子を捺してもらったのである。

指の皮同様、ボロボロである。

「休みたいですねぇ」
「うん、だからなんとかしてこう」

小道さんも我々の三次元のみに限らず、プロジェクト全体のひずみはわかっている。

設計業務をまずきちっとまとめたい設計部と、三次元設計の結果を求めたいBIM推進部と。

わかっていても、出来ることとそうでないことが、あるのである。

出来る限り捌いてもらえるよう祈るだけなのである。

先行している他企業は、このような行って来を、すでにあらかた乗り越えているのだろうけれど。

仕方がない。

二次元チームの二佐木さんが、わたしの後ろを通るたびに、ちょっかいを出すようになってきたのである。

不意に、肩こう骨のあたりを、

チョイチョイ
チョチョイ、チョイっ

と連突きしてくるのである。

「なにふたりで、じゃれ合ってるの」

目ざとくはまぐりさんが、そう冷やかす。

ブンッ、ブンッ。

わたしはこれ以上ないほどに強く、首を振る。

「ご、ご、誤解せんでくださいっ」

二佐木さんは四十半ばの男性である。

しかも、ちょくちょく、舌戦を重ねている相手でもある。

ぜんたい、二佐木さんは我がしっかりした、詳細が詰められていないことが嫌いな方で、正反対に近いわたしとは、どこかで必ずつばぜり合いから火花が散りかけたりするのである。

「あれ。いつの間にふたりはそんな仲に?」

古墳氏が、油を注ぐ。

「……にやり」

大分県が訳知り顔で、無言でうなずく。

「ちょ、そんな、いつの間に」

わたしがあわあわへきえきしているのを余所に、

チョイチョイ
チョチョイ、チョイっ
ダダダダダっ

「えい。いい大人が、やめてください」

後ろ手でその突き指をむんずとつかむ。

「ちぇっ、つまんねぇの。で、はまぐりさん」

なに俺に用だったの、とはまぐりさんの方へさっさといってしまう。

散々、突っつかれ。
あらぬ誤解を招くような振る舞いに晒され。

ポイと捨て去られたわたしに、

「さてと」

と同情も見せずに古墳氏は前に向き直る。

皆、もうとっくに限界を超え、壊れだしているのである。

とりあえず二十日過ぎまで。

まだまださらに酷な日々が続くのである。


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